常翔学園FLOW106号
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①②③④⑤⑥⑦⑧⑨問い、最初から最後まで話すよう促します。一通り聞き終えたら、子どもの語った人物や出来事について「〇〇というのは誰ですか?」「〇〇についてもっと詳しく教えてください」など、WH質問(いつ、どこで、誰が、何を、どうした──など)も用いて、より詳細に聴きたいところを尋ねていきます。 このような聴き方をする理由は、誘導や暗示の影響を避けるためです。子どもは大人に比べて誘導や暗示に影響されやすいため、最初から「それは〇〇さんにされたの?」や「たたかれたのかな?」「黒だった?青だった?」といった、「はい/いいえ」で答えたり、提示された選択肢から選ぶような「クローズド質問」で尋ねると、よく理解しないまま「はい」と答えたり、とりあえずどちらかの選択肢を選んだり、「そうだったかもしれない」と考えて事実でないことを報告したりすることがあるからです。そして、それらのやり取りによって元の体験の記憶が変わってしまうこともあります。 子どもの虐待への対応にかかわる司法機関と福祉機関では専門性や役割、目的が異なり、準拠する法律も異なります。そのため、多機関での連携には難しさがありますが、違いがあるからこそ子どもへの包括的な支援が可能になると考えています。より良く連携するためには、研修などを通じて普段からお互いの顔が見える関係を築いておくことが大切で、司法面接の研修プログラムは多機関の専門家が共に参加することを重視しています。 司法面接の手法を用いた子どもへの面接(協同面接、代表者聴取)は現在、国内で年間約2000件実施されています。「司法的な証拠に足りうる」ことを目指していますが、実際に刑事裁判で証拠として採用された件数は限られています。2018年4月1日オープン質問を積極的に使用連携の重要性と面接記録の証拠化連携の重要要性と面接記録の証拠化面接中、別室にはスタッフ(バックスタッフ)がいて、面接をモニターしています。子どもには、複数の人が同時に話を聴いていることや、録音・録画していることも説明します。子どもにうそをつかないことが大切で、多くの人が力を合わせて支援していくことを伝え、理解してもらいます。 私の参加する研究プロジェクトで用いている司法面接(NICHDプロトコル)では、次のような流れで面接を実施します。 ①導入・自己紹介②グラウンドルールの説明③ラポールの形成④エピソード記憶の練習⑤自由報告(本題への移行/オープン質問)⑥ブレイク⑦クローズド質問⑧暗示・誘導・開示質問⑨クロージング■ 司法面接の流れ(NICHDプロトコル標準版より) グラウンドルールの説明では「本当のことを話す」「分からないことは分からないと言う」「面接者が間違ったことを言ったら、間違っていると伝える」などの約束事を伝えます。これらは、大人からすれば当たり前のことのように感じますが、子どもは「分からないと言ったら怒られるかもしれない」「大人は間違えたりしない(いつも正解を知っている)」と思っていることがあるため、きちんと説明し理解してもらうことが重要です。 面接では、「オープン質問」という思い出したことを自由に話せるような質問を積極的に使います。具体的には、対象となる出来事について「何があったのか本当の事を話してください」というように問いかけます。オープン質問では、子どもに自由に話してもらうため、要領を得ない報告になることもありますが、まずは子ども自身が思い出せるところを子ども自身の言葉で話してもらうのが重要です。「それから?」や「そして、どうなりましたか?」などと導入・自己紹介面接の目的等を告げるグラウンドルールの説明面接における約束事を説明するラポールの形成面接者と子どもの間に話しやすい関係を築くエピソード記憶の練習「今日、起きてからここに来るまでの出来事を教えてください」など体験したことを思い出して語る練習をする「何があったのかを話してください」といった教示により、子どもに自由に自発的に出来事を語ってもらう。答えの限定されない質問を使用する自由報告(本題への移行/オープン質問)ブレイク休憩(面接者はバックスタッフと打ち合わせ)必要に応じて「はい/いいえ」質問や選択肢質問なども使用するクローズド質問暗示・誘導・開示質問必要に応じて暗示や誘導となりうる質問も使用するクロージング面接への協力に感謝を伝え、中立的な話題で終了し、子どもの事後ケアにつながるようにする07FLOW|No.106|February, 2024

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