司法面接とは、虐待や事件、事故の被害を受けた疑いのある子どもから、事後の対応に生かすために、体験した出来事をできるだけ多く正確に話してもらい、聴き取りにおける負担を最小限にすることを目指す面接方法です。名称は英語の「forensic interview」の翻訳で、「司法的な証拠に足りうる面接」という意味になります。 司法面接は英国や米国で始まりました。それらの国々では1980年代、不適切な聴き取りをしたことによる子どもの誤った証言えんざいから、保護者や幼稚園・保育所職員らが虐待したと疑われる冤罪事件が起きました。子どもは大人の発言に影響されやすく、認知発達も途上にあることから、誘導や暗示の影響を受けやすいのです。そのため、子どもを守ることと冤罪防止の観点から、大人とは違う特別な面接方法が必要だと考えられるようになり、心理学の知見を取り入れたガイドラインやプロトコル(面接の構造・手順)が作られました。日本には2000年代から翻訳書などを通して伝わりました。 私自身は学生時代、米国の認知心理学者で虚偽記憶について研究しているエリザベス・ロフタス氏の著書「目撃者の証言」に出合い、関心のあった法学と心理学の融合領域を見いだし、「子どもの目撃証言」をテーマに卒業論文を執筆しました。 大学院に進み、研究会などに参加する中で司法面接を研究している北海道大の仲真紀子教授(現在は同大名誉教授/理化学研究所理事/立命館大OIC総合研究機構招聘研究教授)らと出会いました。仲教授の研究プロジェクトに参加して、実務の課題に心理学の研究知見が活用されていく過程に面白みを感じたことから、深く取り組むようになりました。 司法面接は児童相談所(児相)と警察、検察が連携して実施し、専門のトレーニングを受けた代表者1人が原則1回、子どもに面接をします。 聴き取りを原則1回とする理由は、つらい体験を何度も話すことによって傷付く二次被害を防ぐことや、「記憶の汚染」といって、繰り返し話すうちに別の出来事の記憶と混同したり、正確なことが分からなくなったりすることを防ぐためです。対象となるのは3、4歳頃からで、面接時間は年齢×5分程度が目安です。過去の出来事を自分自身の体験として思い出すことができる能力や、子どもが集中できる時間を考慮しています。また、正確な記録を残すため、面接は録音・録画をします。 司法的な証拠に足りうる面接 聴き取りは代表者1人で原則1回しょうへい06February, 2024|No.106|FLOW
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