常翔学園FLOW106号
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近年、ユニバーサルデザインに注目が集まっています。障がいの有無だけでなく年齢や性別、国籍にかかわらず誰もが最初から利用しやすい環境をデザインしていくという考え方で、新紙幣にも取り入れられています。自身の研究を通してユニバーサルデザインに取り組んでいるのが赤井准教授です。特に、視覚障がい者と晴眼者(※)の区別なく使えるモノやコトのデザインに注力しており、子どもを対象にした体験型教材「深海 羅講師の専門「国際金融論」は、世界の国々でやり取りするお金の動きや、それに伴う経済や社会への影響について研究する分野です。例えば、米国の金利上昇に伴う世界市場や経済の変化、円高時の企業の対応、国際的な経済危機での対処法などを考える上で役立ちます。羅講師が中国の大学で学んでいた2008年、米投資銀行のリーマン・ブラザーズが経営破綻し、世界的な金融危機「リーマン・ショック」を引き起こしました。一国の経済政策が別の国に与える影響やグローバルな金融危機の要因などに興味を持ち、世界経済の結びつきや日常生活への影響を研究するようになりました。国際金融論の面白さを「経済だけでなく政治や文化、歴史が深くかかわり、異なる国々が協力したり競争したりするなどして、生き物のように複雑に変化すること」と語ります。 具体的な研究手法は、為替レートや金利、国の経済成長率、輸出入のデータなど世界中のさまざまな経済時系列データを分析して、経済現象と傾向を読み解きます。統計学を用いてデータからパターンを見つけ出して将来の傾向を予測したり、過去の金融危機や政策の変化が現在の経済にどのように影響しているかを分析します。更には、異なる国の金融政策や経済状況を比較して政策による違いを見いだすなど、さまざまな経済データを組み合わせることから世界経済の複雑な動きエレベーター」を制作しました。 深海エレベーターとは、深海にいる感覚を音と光を用いて体感できるブースです。アルミフレームで一辺1.2m×高さ2.1mの八角柱の骨組みを作り、暗幕で覆って真っ暗な空間にします。内側の前面にスクリーンを置き、周囲には平板スピーカー16台を設置して、モニターに映し出された光に合わせてスピーカーから音を出していきます。平板スピーカーは周囲の音と混ざりにくく、音が出ている場所が分かりやすいという特徴があるので、出す場所を変えることでまるで生物が動いているような感覚を味わうことができます。 音と光を頼りに、深海を目指して潜水していく中でさまざまな生き物を洞察しています。 現在の主な研究テーマは新型コロナウイルス禍後のアジア諸国の金融資本市場です。日本、中国、韓国、香港及び東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国を対象に、コロナによる金融市場への影響を分析し、望ましい政策対応や支援などを検討しています。経済産業研究所や日本証券経済研究所、日本経済研究所などの研究員も務め、他大学の研究者と考察した成果を共著にまとめています。昨年3月に『コロナ後のアジア金融資本市場』、同年8月には『ポストコロナの世界経済』を出版しました。「自らの研究が政策決定に生かされ、投資家の判断にも役立っていると実感でき、大変やりがいがあります」と話します。 羅ゼミでは毎年、専門演習の一環で大阪市北造幣局本局を訪れてお金の歴史を学んだ羅ゼミ生=2023年5月区にある造幣局本局の工場や博物館を見学しています。生活に欠かせないお金の歴史を知ることから、理論を通して経済を学ぶ意義を見つめ直す機会にしているのです。講義やゼミでは常にタイムリーな世界経済の動きを考察しており、今春からは制度が変更されたばかりの少額投資非課税制度(NISA)を取り上げる予定です。「学生が成長する教育に情熱を持って取り組んでいます」と笑顔を見せました。大阪工業大学 ロボティクス&デザイン工学部 空間デザイン学科摂南大学 経済学部 経済学科■ラ・ホウヒ 2009年中国・山東財経大学金融学部金融学科卒。2013年一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。2018年同商学研究科(現・経営管理研究科)博士後期課程修了。同経営管理研究科特任講師などを経て、2020年から現職。博士(商学)。中国山東省出身。深海エレベーターの仕様深海エレベーターを動画で紹介(https://www.research.oit.ac.jp/oitid/archive/2021/seeds/seeds/seeds-12450/)09FLOW|No.106|February, 2024研究最前線赤井 愛准教授羅 鵬飛講師障がいの有無にかかわらず深海を体感できる教材制作データ駆使して国際金融の変化を洞察コロナ後のアジア経済への影響も分析JOSHOJOSHO

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