NO.Could you please teach me? 大阪工業大学 工学部 総合人間学系教室川田 進教授11FLOW|No.104|August, 2023チベット高原に向かう長距離バス。屋根に大きな荷物を載せている=1998年12月ユーラシア大陸のほぼ中央に位置するチベット高原。大部分が中国の領土になっている約2万人の僧と尼僧が学ぶ巨大な仏教の学校「ラルン五明仏学院」。僧たちの暮らす小さな小屋が山肌をびっしり覆っていた=2007年8月ちょうそう東シナ海かわた・すすむ 1988年大阪外国語大学大学院(現:大阪大学大学院)修了。摂南大学非常勤講師を経て、1996年大阪工業大学着任。2015年から現職。専門はアジア地域研究、宗教社会学。著書に『東チベットの宗教空間』、『天空の聖域ラルンガル』などがある。博士(文学)。岡山県出身。 3大学2中高を設置する本学園のスケールメリットを生かして、高校生が日ごろふと抱く疑問を大学の先生に答えてもらう「教えて先生」。初回の今回は、常翔学園高1年の新垣楓子さんと藤井遥花さんが、大阪工大総合人間学系教室の川田進教授に尋ねました。大学4年で香港と中国へ飛行機の低空飛行にびっくり新垣、藤井 「若いうちに外国を見た方がいい」とよく聞きます。川田先生は外国を訪ねて研究されています。どうしてだと思いますか?川田 海外に行くと、異なる視点でものごとを見たり、気づいたりするようになるからです。 私の体験からお話ししましょう。1981年に大学に入学して、アジアの宗教問題や民族紛争に興味を持ちました。自分の目で外国を見てみたいと思うようになり、英語と中国語を一生懸命勉強しました。 私が初めて海外を訪れたのは大学4年の時で、行き先は香港と中国でした。当時若者の間で絶大な人気を誇ったガイド本「地球の歩き方」を片手に訪ねると、飛行機がビルにぶつかりそうな低さで飛び、巨大な違法ビル群には怪しそうな商売をする店がひしめいていました。でも、よく見ると大多数は庶民の普通の暮らしの場でした。香港は土地が狭いので、家賃がとても高く、住む場所の環境を選べないからです。アジア各地でフィールドワーク1週間や10日間を70回川田 大学教員になってからはアジア各地でフィールドワークをするようになりました。中国や台湾、タイ、ベトナム、インド、ネパール、ミャンマー、ラオス……。大学の休暇を利用して、1週間や10日間の滞在を70回ほどしたでしょうか。 現地では足を棒にして資料を収集し、人々にインタビューします。現地が抱える課題を発見して、どうすれば解決できるかを考えます。そして、論文やレポートにまとめます。 標高4000〜5000mのチベット高原では宗教状況を調査しました。町や村は富士山(3776m)より高い場所にあるのに、人々が酸素吸入などしないで普通に生活しています。夏でも雪が降ることがあり、人々は布団のように分厚い服を着ています。 ラルン五明仏学院という約2万人の僧と尼僧が学ぶ巨大な仏教の学校に深く興味を抱いて、2001年から2012年までに計6回訪問しました。日本では人が亡くなると火葬するのが一般的ですね。チベットは標高が高すぎて木が育ちません。さまざまな命をもらって生きてきたから、死んだら自分の肉体を鳥に与えて天に返します。鳥葬です。体と魂はつながっているのか、生きるとは何か、死ぬとは何かといったことを考えさせられました。 中国チベット高原インドベンガル湾01教えて先生Q.どうして若いうちに外国を見た方がいいの?
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