常翔学園FLOW104号
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10August, 2023|No.104|FLOW神戸市看護大教授)らと協力しました。 被災者が支援を受ける際、繰り返し同じことを尋ねられて苦痛を感じていると知り、母子手帳を参考に自身や家族の状況を書き込めるようにしました。説明しなければならないときは、そのページを示せばよいのです。 診療記録を記せるページもあります。被災地では医療班による診療や保健師らの健康相談などが受けられますが、記録は医療側にのみ残ります。自身や家族の記録を手元にも残してもらうことで、後々の健康管理に役立ててもらうこともできると考えました。 更に、生活再建に向けて、支援制度や心や体の相談先、弁護士会などの連絡先一覧もつけました。保健医療以外の情報も提供して、生活全体を支援していくことが災害看護には必要な視点です。この手帳は2000部作成し、避難所や地域の見守り活動などで配布しました。 2020年には、新型コロナウイルスに感染して宿泊療養をする人向けに、健康と日常を取り戻し、退所後も自身と周囲の人の健康と生活を守るために役立つ「セルフケアガイド」を作成しました。起床から消灯までの生活リズムの整え方、健康観察のポイント、体調を整えるためのストレッチの他、退所後の生活における注意事項などを紹介しています。 「いまから手帳」や「セルフケアガイド」は、どのように活用されたかの検証も進めています。被災後は、人々の生活や状況が変わり、療養施設を退所した後は行政の管轄も変化するなど、さまざまな理由で研究協力者を確保することが難しくなります。しかし、災害看護の研究ではまず支援があり、そのうえで意義を理解してもらい、この人になら話してもいいという信頼関係を築いたうえで進めていく姿勢を大事にしたいのです。 災害看護の難しさは、現場での学びが欠かせないことです。災害が起きてほしくはありませんが、これまでに経験したことを学生に伝えていくことが使命だと思っています。また、研究から得た新たな知見を現場に還元していくことも、大学に身を置く私だからこそできる役割です。これからも現場と大学の双方をつなぎながら研究を進めていきたいと思っています。文字が読めない人や子供にも理解しやすいよう、説明ボードにはイラストを使っている=2013年11月、フィリピンで ウクライナからの避難者が日本での暮らしに困らないよう、ウクライナ出身の関西看護医療大の花村カテリーナ助教らと作成しました。月ごとのカレンダーには日本の祝祭日とともにウクライナの記念日も記し、日本の気候に応じた体調管理のヒントも添えています。病気やけがをした時に医療者に症状を伝えられるよう、体の部位や状態を説明するイラストを付け、指差しで説明できるようにしています。セルフケア支援について宮本准教授は、「当事者が力をつける手助けも看護の一環です」と話しています。研究は信頼関係を築いた上でウクライナからの避難者向けセルフケアカレンダー

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