常翔学園FLOW100号
16/28

の応用研究につながることができれば、脳障害患者に用いることのできる神経細胞を保護する薬や内因性神経新生を促進する薬の開発が可能となる。これらの研究の発展で、脳卒中による脳障害や認知症を克服できることに期待したい。■ 山本めぐみ・広島国際大診療放射線学科講師  分野=医療・工学1 装置の前にいるだけで病気がわかる 色々な検査をせずに装置の前に人がいるだけで病気がわかるようになると、患者さんの負担がなくなり、検査への恐怖心も減るので、病気の早期発見・早期治療につながる。■ 中島正光・広島国際大薬学科教授  分野=医療、薬学、医学1 漢方医学による体質の科学の進化実現可能性 90% 漢方は日本の伝統医学で、漢方薬、鍼灸などを使い治療する日本の医学のことです。現在の日本では約90%の医師が漢方薬を使い治療をし、その有効性を常に経験していますが、漢方はより優れた医学になる必要があります。人には体質がありますが、西洋薬ではこの体質に左右されないような薬剤を作ろうとし、漢方は体質に応じて漢方薬を投与して治療をしようとします。例えば、我々のグループが初めて提唱した夜型体質、我々はフクロウ型体質と呼んでいるものがあります。朝が起きれず、ベッドから出れません。起きても椅子に座りぼーっとし動けないのです。昼を過ぎた頃から元気になり、夜は一日の中で最も元気なのです。検査などでは全く異常はありません。この症状が漢方薬で短期間の治療でよくなることは少なくありません。このような新しい体質を科学していく必要があります。今後は他の体質も発見し、治療を行い、人の幸せに漢方が貢献するにようになるでしょう。2 薬剤師業務の拡大・進化実現可能性 80% 薬剤師の業務内容、役割が大きく変化するだろうと思います。現在、爆発的に薬剤の種類や数が増え、薬剤師の薬剤への関りの必要性の度合いが増しています。今後は医師の仕事はより高度で複雑になり、現在の業務を行えなくなるのではないでしょうか。それらを部分的に補完するために薬剤のスペシャリストである薬剤師がより活躍すると考えます。3 基本的な診断はAIで医療維新■ 成清哲也・広島国際大医療経営学科教授  分野=医療経営1 日本の津々浦々に集落、地域通貨が使われる 日本の将来の人口減少に対処するシナリオは大きくは2つ。これまでの利便性を享受するには効率性を優先し人口密度を上げる必要があり、中核都市に人口を集中させることである。もう一つは、津々浦々に集落があり効率を犠牲にして地域コミュニティを高めることである。明治以降、日本は近代化を急ぎ、効率重視から都市部に人口が移動して新しい産業がそれを吸収していった。戦後、だれもが中産階級と思える消費社会が現出する。しかし、モノからコトに移行する中で、大量生産のメカニズムの効果が減じ、正規社員から臨時社員、パートからアルバイト、果ては個人事業主という名の下請けまで現出し労働力を搾取し、私たちの漠然と将来はより良くなるという思いは霧消した。さて、資本金は「円」で表されるが、江戸時代は「石高」であった。つまり、江戸時代のKPI(重要業績評価指標)は、コメの生産量であったわけである。では、100年後のKPIは何であろうか。これまでの、効率重視の人口集約(クラスター)による集中したインフラ整備による現在の延長線上に補助線を引くのか、それとも津々浦々に人々が分散して住み、24時間365日営業のコンビニは無くても、「よろずや」のようなお店がある街にするのか。私は後者を選択したい。それは、地域通貨が使われる世界であり、地域通貨の受け渡しはモノ、サービス、だけでなく想いにも使われる世界である。そして、地域によって特色が異なり、人々は自分らしさが演じられる地域を選ぶ時代になっているのが夢である。     15FLOW|No.100|October, 2022医療、薬学、看護     ■ 軽尾友紀子・摂南大薬学科助教  分野= 薬学・医療1 化学を基盤とした分析技術の発展実現可能性 80% 化学を基盤とした分析技術は生体内の様々な細胞やタンパク質の働きを紐解くうえで重要です。特に最近では、化学と生命科学分野が融合した分野の研究が盛んで、これらの研究は、化学反応を基に薬剤や疾患に関わる新たな標的を見つける手法の開発に繋がっています。研究が進めば、より簡便に疾患を発見でき、治療法がなかった疾患の治療法が見つかる可能性が高まります。2 iPS細胞を利用した移植医療の発展実現可能性 60% iPS細胞は原理的には生体内のあらゆる細胞に変化できます。将来的には、複雑な働きを持つ心臓や腎臓等の臓器を作ることができれば、医療において大きな進歩になります。■ 鎌田佳奈美・摂南大看護学科教授  分野=小児看護学1 子育て家庭を支援する明確な社会システムの実現実現可能性 75% 子どもは社会や国の「宝」「未来」とし、社会全体で子どもを育てるという認識が通念となり、子育て家庭を支援する明確な社会システムができる。費用面のサポートだけでなく、子育て中の家族に伴走し心身共に支えとなる人的サポートの存在が整えられる。そのことにより、子どもを産み育てやすい社会となり、出生数が増加し家族の笑顔や子どもの活動によって国全体が活性化する。また、「愛の鞭」と称するしつけにおける体罰を用いないしつけや子育ての方法が広く世間に認知され、虐待や暴力のない社会になることが夢です。 2 健康寿命が延伸し、高齢者が社会に貢献実現可能性 75% 予防医学や医療の発達に伴い、心身共に健康で、社会・人とのつながりをもちながら最後まで生き生きと過ごせるようになることが夢です。■ 荻田喜代一・摂南大薬学科元教授(学長)  分野=神経・内耳薬理学1 「きこえ」の老化ハンディキャップのない社会実現可能性 90%「きこえ」の悪化は「生活の質」の低下ばかりでなく、認知症リスク因子の一つであることも知られています。荻田らの研究グループでは、工場の騒音や音楽などの大きな音を聴き続けることが老化による「きこえ」の悪化のリスクを高めることを示しました。またその騒音による「きこえ」の悪化を防ぐ物質(ある種のポリフェノール類や特定の薬物)を発見。「きこえ」の悪化を簡単に防ぐには、「きこえ」の悪化の原因を早期に見つけ、原因に即した薬やサプリメントを予防的に飲むことが必要で、いま取り組んでいる研究は、耳の「きこえ」に関連する細胞の保護効果の高い薬やサプリメントの開発と、耳の健康指標となるバイオマーカー(耳の健康が良くない状態のときに増える血液内成分)の探索です。このバイオマーカーの発見は、定期的な血液検査で近い将来の「きこえ」の悪化を予想することを可能にします。このような内耳研究を行っている薬学研究グループ(米山雅紀教授、山口太郎講師)は国内で唯一です。2 認知症や脳卒中による脳障害が治る!実現可能性 80% 荻田らの研究グループでは、脳の海馬(記憶を司る部位)の神経細胞が死んだのちに、新たに神経細胞が誕生する(内因性神経新生)を見出し、その内因性神経新生を促進する薬物も見出している。この基礎研究論文が、将来、人へ実現可能性 100%実現可能性 3%実現可能性 90%実現可能性 ?%3 身体の一部の成分で病気を予測病気を自動診断 地球外生命体を確認

元のページ  ../index.html#16

このブックを見る