常翔学園FLOW100号
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まで積み上げてきた知識や経験に加えて、継続的な研究と新しい発見が融合し、新たな地球環境に順応した持続的な人間社会が実現されていると思います。課題や未知の現象・影響も多くありますが、官民学が一体となって努力することで十分実現することができる未来であると考えますし、次世代・次々世代と永遠に続く人類のため実現させなければいけない未来であると考えています。1 自然災害に強い防災未来都市の構築と  本学卒業生の活躍 100年後、地球の平均気温は2.6〜4.8℃上昇し、海面は約1.1m上昇するという予測がある。世界の巨大都市の多くは水没に向かい、都市機能はマヒする。日本の大都市の多くは、低平地に発展しているため、海面上昇等により都市機能がマヒし混乱する恐れがある。また、太平洋側に位置している大都市の多くは、巨大地震や巨大台風による災害リスクも高い。これから100年の間に、自然災害により壊滅的な被害を受け、首都を移転する必要性が生じるかもしれない。それには土木技術者の活躍が必要不可欠であり、本学の卒業生には、その中心的役割を果たしてもらいたい。日本で今後発展していくであろう自然災害の予測・監視技術や防災・減災技術は世界を牽引できるものと信じている。■ 井上晋・大阪工大都市デザイン工学科教授(学長)  分野=コンクリート工学1 3Dプリンティング技術で   コンクリート構造物建設実現可能性 ほぼ100%3Dプリンティング技術はさまざまな分野に用いられ、既に実用化されているものも数多くある。一方、コンクリートに関して言えば、作業性(柔らかさ)が要求される一方、自立性(極早期強度)も必要になり、構造設計が必要となる構造物に適用された事例はほとんどない。この技術に関しては、近年研究が始められたばかりであり、材料の開発(特に特殊な混和剤)と施工方法に関する技術開発がその実現に向けて必要となる。これが実現すれば、コンクリート工事の生産性が大きく向上する。2 超高強度軽量コンクリート UFC(超高強度繊維補強コンクリート)が既に開発・実用化されているが、価格の面や長期耐久性の確認がされていないことなどから、施工実績はまだまだ少ない。この材料をさらに軽量化することで鋼橋に匹敵するようなコンクリート長大橋の建設が可能となる。■ 池内淳子・摂南大建築学科教授  分野=建築防災工学1 外力に対して変容する建物実現可能性 70% 建物構造体としては、地震荷重に対してエネルギー吸収せず、変容することで構造体をキープ。津波や洪水時の低層階は“なすがまま”とし、高層階で避難できる仕組み。津波や洪水が落ち着いた後は、低層階の非構造体の工事のみで構造体をそのまま継続使用できるようにする。免震層をゴムから超電導にして、地震時に一瞬浮かせる仕組みはすでに着想されているので(実用前)、そんなに夢の話でもないように思います。2 究極にフレキシブルで安価な建築構造体の  開発と法整備実現可能性 100% プレハブ建物や3Dプリンター住宅などはすでに実現しているので、それらを応用した、「すぐに折りたため、別の場所に移動できる建物」。フレキシブルで安価な建物群を許容することで、今後100年以上続く大災害リスクに対して、日本の都市の安全性を高めたい。3 女性差別の無い社会■ 佐藤大作・摂南大都市環境工学科准教授  分野=工学1 気候変動の影響を乗り越えた社会の実現止めることができない気候変動の影響に対して、これOctober, 2022|No.100|FLOWロボット、システム工学、電気      環境、防災、土木   実現可能性 75%実現可能性 10〜80%(レベルによる)実現可能性 80%実現可能性 ?%実現可能性 50%実現可能性 100%実現可能性 100%12■ 平博順・大阪工大情報メディア学科教授  分野=人工知能1 介助される人を分析できる介助ロボット実現可能性 75% 介助される人がどのような状態にあるのか、画像処理、発話の正しい意味解釈が正確にできる必要がある。2 最先端の技術を理解度に応じて説明してくれる技術実現可能性 95% 現時点でも、文章を自動要約する技術は一定程度進んでいる。しかし、ユーザーの理解度を把握することや、「分かりやすい説明」というのを、モデル化するのが、やや難しい点である。3 脳波を読み取り、頭で想像する文章や図を  作成するシステム■ 井上剛・大阪工大システムデザイン工学科教授  分野=ヒューマンマシンインタフェース(ヒューマンセンシング・人間拡張)1 自動遠近両用メガネ実現可能性 70% 視力を矯正する方法は現在ではさまざまであるが、一定値の変更を行うものであり、変化する視力にはもちろん、近眼と老眼の2パターンでもその対応は難しい。そこで、例えば近眼と老眼の場合は注視点距離に応じてアナログ的に屈折率を変化させるメガネから、より高度にはその時の見え方に応じて対応可能なメガネやコンタクトレンズなどが出現することを望む。2 さりげないブレインアシストの実現高齢に伴い、脳機能は低下していく。その脳機能の低下をある程度フォローしてくれるシステムが実現してほしいと考える。「アレをアノ人にアレしといて」と言えば通じるシステムや、人や物の名称が出てこない時にサポートするシステムだ。3 アシストスーツの実現■ 眞銅雅子・大阪工大電気電子システム工学科准教授  分野=プラズマ工学1 プラズマ農業の普及実現可能性 95% プラズマ工学技術を農業に用い、例えばプラズマを植物種子に照射して刺激を与えることで、発芽率・生育速度の向上が見られることが分かってきました。その他にも、乾燥や光刺激のストレスに強い農作物が育つようになる可能性も見えてきました。これが実現できれば、狭い農地でも農作物の収穫が増え、また今後の地球環境の変化にも対応した農業が可能となるでしょう。また、プラズマを用いて植物種子や水、土壌に殺菌を施すことで、生育中の病気を防ぎ安定した収穫につながったり、宇宙ステーション等の過酷な環境でも種々の農作物の収穫が実現したりすることを願っています。2 プラズマ核融合発電実現可能性 90% 現在、フランスにITER(イーター)という大きな核融合炉が、日本・欧州・米国・ロシア・韓国・中国・インドの国際協力で建設されつつあり、2025年のプラズマ点火を目指しています。ITERの定常運転が軌道にのれば、エネルギー増倍率(炉のエネルギー出力を外部からのエネルギー入力で割った値)が10程度になることが予想され、商業炉の原型になることが期待されます。■ 日置和昭・大阪工大都市デザイン工学科教授  分野=土木工学(研究分野:地盤工学、地盤防災工学、地盤環境工学)言葉の壁が消え AIキャラクタと同居

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