常翔学園FLOW100号
12/28

 FLOW100号の特別企画として学園設置3大学の研究者らに「100年後の未来図」アンケートを実施しました。常翔学園創立100周年の年に未来に目を転じ、これからの100年で世界がどうなるのかを問うもので、過去のFLOWに登場した研究者を中心に実施。自分の専門分野で実現しそうな未来や実現してほしい夢(3つまで)を挙げてもらいました。3大学の計52人の研究者から回答がありました。その思いの詰まった未来予測の一覧を掲載します。(イラスト:よこた しぎ)                 回答の中で複数あったのが「核融合発電」(大阪工大・鳥居教授、眞銅准教授、摂南大・郭教授)、「地球外生命の確認」(大阪工大・鳥居教授、摂南大・高松教授)、「病気の自動診断装置」(広島国際大・焼廣教授、山本講師)、「動物との会話」(大阪工大・真貝教授、摂南大・池田助教)、「宇宙旅行」(大阪工大・神田教授、摂南大・持永教授)、「光合成でエネルギー自給の街」(摂南大・松尾教授、川上教授)、「VRを活用した教育の普及」(摂南大・西之坊准教授、広島国際大・焼廣教授)でした。このほかでは人工知能(AI)やコンピューターの進化にかかわるものがあらゆる分野に及びました。「言語の壁がなくなる」(大阪工大・坂平准教授)は言語習得の苦労をなくすだけでなく、世界平和にも貢献するかもしれません。「建築関連法規のビッグデータ化」(大阪工大・吉村教授)は国会や役所の仕事を変えそうです。「AIや仮想空間で画期的に学習方法や働き方が変化」(摂南大・西之坊准教授)や「働くことが遊びの一つになる」(摂南大・久保准教授)は既に一部で始まっていますが、「学校」や「職場」という考え方そのものが一新され、勉強や仕事が楽しみになるかもという予測です。また、AIによる人間の脳の完全コピーや、バイオテクノロジーによる人工生命体出現などは、「人間」や「生命」についての根本的な概念を変える100年になるかもしれないという予想で、単なる夢に終わらない哲学的な問いを提起しています。■ 小林裕之・大阪工大システムデザイン工学科教授  分野=工学1 IoM(Internet of Minds:ココロのインターネット)実現可能性 75% 21世紀初頭、IoT (Internet of Things; モノのインターネット) という技術で身の回りのあらゆるモノがコンピュータネットワークの中に取り込まれました。それから100年、IoM (Internet of Minds; ココロのインターネット) すなわち「ヒトの精神そのものの計算機ネットワークへの移動」が可能になりました。これは今から100年ほど前にはやった「仮想(あるいは人工)」としてのVRやメタバースとは根本的に異なり、実際に人間の精神・心が肉体を離れて計算機ネットワークの中に「移動」する技術です。22世紀初頭に脳活動を完全にカバーできるほどの容量を持つ、量子通信技術の大規模並列化が可能になり、脳内での精神活動の直接的な移動が一瞬にして行えるようになりました。こうして人類はついに事実上の不死を手にすることになったのです。2 人間エミュレータ21世紀後半、細胞レベルでの生物の完全なエミュレーション(模倣・代替)が計算機内で可能になり、その後倫理的な批判は受けつつも人間のエミュレータ(模倣装置)が作られました。そして2122年現在、太陽系内では300億人のリアルな「肉体人間」よりも、インターネット上の「エミュレータ人間」の人口の方が多くなっています。ネットの世界が「リアル」である彼らは、ときどき「アバター」であるロボットに自身をダウンロードしてリアルな世界に観光に来ます。■ 福澤寧子・大阪工大ネットワークデザイン学科教授  分野=情報セキュリティ1 量子暗号が普及 進む選択の自由実現可能性 80% 秘匿性の高い情報を扱う分野では量子暗号の利用が進む。現在主流となっているRSAなどの暗号技術は、量子計算機の発達により安全性が確保できなくなるが、格子暗号などの耐量子計算機暗号が進化する。また、データ分析分野では、暗号化したままのデータで分析処理ができる秘匿情報処理技術が進化することで、個人情報などの漏洩リスクがなくなる。しかし、人間の記憶に残った情報の漏洩は防ぐことはできず、ルールと理性が安寧社会の秩序の拠り所になる。また、情報の真偽判定技術が高度化し、偽物が世界から排除され、結果として人に与えられる選択の自由も広がる。*誌面の制約もあり、編集者による回答の圧縮や一部書き換えがあります。11FLOW|No.100|October, 2022情報、コンピューター、AI       ■ 坂平文博・大阪工大データサイエンス学科准教授  分野=情報1 言語の壁が完全になくなる実現可能性 80%自動翻訳が今後改善され続け、普通に話している時と変わらない感じとなれば、異なる言語間も同言語間と同程度のコミュニケーションとなる。これまでかかっていた言語習得にかかるコスト(時間、費用、労力)を他に回せるようになることによって、全世界的にも、既存分野の伸長、新規分野の創出、新しい才能の出現などが期待できる。わが国は言語が成長の障害となってきたが、それらがなくなることは大きなブレイクスルーとなる。             ■ 神田智子・大阪工大情報メディア学科教授  分野=情報科学1 バーチャル宇宙旅行実現可能性 100%脳波で自分のアバターを操作してバーチャル宇宙旅行をする。身体的移動は伴わなくても五感で感覚を体験できる。また、その体験を複数人で共有できる。映画「アバター」のような技術。同じく脳波で自分のアンドロイド(実体あり)を操作して、同時並行的に複数の場所で仕事や生活をし、通常の人間の複数倍の体験ができる。2 AIキャラクタとの生活実現可能性 100% 自分の理想のキャラクタ複数(外見および性格)をもとにAIに学習させた理想のキャラクタと実際に恋愛し同居し生活を共に送る。パートナー同士が好む外見や性格をもつ仮想的な子孫をもつこともできる。(夢ではなく、そうなっていくのではないかと思います)■ 上野未貴・大阪工大電子情報システム工学科講師  分野= 工学(人工知能・システム)1 人と協調しながら自動筆記するペン実現可能性 99% 既にプロッターという技術はあるが、ペンを握るという動作は無くならず、好きなペンを握って好きな紙面にスタンプを押すように自在に任意の書体で美しく筆記できればというのは人が夢みる技術の一つではないかと思う。2 折り畳んで自在に持ち運べる電子ペーパー タブレットよりも電子ペーパーの方が待たれる技術であるが、今は書き換え速度や可搬性、価格に未だ問題を残している。実現可能性 99%実現可能性 90%実現可能性 90%3 人と対話的にアイデアを考えてくれるロボット常翔学園3大学アンケート「人間とは」「生命とは」を問い続ける100年に

元のページ  ../index.html#12

このブックを見る