兵庫県 淡路警察署淡路市兵庫県 洲本警察署南あわじ市誌上対談03FLOW|No.99|August, 2022 瀬戸内海東部に浮かぶのどかな淡路島。温暖な気候で農業や酪農が盛んですが、年間100万人もの観光客が訪れ、最近では大手人材派遣会社が東京から本社機能を移転するなど人や物の動きが活発な地域です。この島の治安を守るのが洲本・淡路・南あわじの3つの警察署ですが、今春、洲本警察署・淡路警察署の署長に摂南大の卒業生が就任しました。岡田智博さんと山本達也さんです。ともに剣道部の先輩後輩で、旧知の仲である2人。同時期に同じ島内での署長就任には、特別な縁を感じていると言います。洲本警察署署長淡路島神戸市明石市和歌山市おかだ・ともひろ 1986年摂南大学国際言語文化学部国際言語文化学科(現:国際学部国際学科)卒。在学時は剣道部員として稽古にまい進。同年兵庫県警に入り、薬物銃器対策課で暴力団対策に長く携わる一方、警察学校の教官を務め警察庁への出向も。灘署副署長などを経て2022年から現職。警視。兵庫県出身。巻頭特集2淡路島の治安は剣道部で守る― 奇しくも同じ時期に同じ淡路島内の警察署の署長に就任しました。岡田:驚きましたが、かつての同志が隣の管轄にいると思うと心強かったですね。実は、南あわじ署にも剣道部OBがいて、山本署長とは電話で「摂南大剣道部で淡路島の治安を守っていこう」と言いました。山本:淡路警察署の署長はここ数年暴力団対策の経験者が続いていたこともあって、将来的には就任の可能性もあるのかなと思っていました。しかし、岡田署長も同時期に淡路島へ異動とは予想もしていませんでした。特別な縁を感じます。岡田:淡路島は平穏でのどかな街ですが、暴力団の本部がある神戸に近く、油断はできません。署長になったというよりも、この街の安全を任されたという責任感を重く感じています。山本:最近はさまざまな開発が進んでいるため、利権を巡るトラブルやそこに暴力団が暗躍しないかと目を光らせています。活躍する卒業生部活動での経験が警察官としての礎に 全国初の逮捕と奇跡の生還― 約30年の警察官歴の中で印象に残っているエピソードを聞かせてください。山本:某球団の私設応援団が、応援歌を自分たちで作詞・作曲したと偽り日本音楽著作権協会(JASRAC)に著作権者として登録していた事件です。権利収入が暴力団の資金源になっている疑いがあり、慎重に内偵捜査を進めました。この事件では「犯罪の事実をどうするのか」が肝要でした。そのため、適用する法律を作った省庁に赴き知識を得るなど地道な作業を続け、全国で初めて、暴力団の資金源を著作権法違反で絶つことができました。岡田:24歳の時、暴力団組員に銃撃されたことが最も印象に残っています。「山一抗争」で暴力団会長宅前をパトカーで警戒していましたが、開いていた窓の隙間から組員に銃を撃ち込まれ、一発が頭部に命中。右目の下、右手の人差し指と中指を弾がかすめました。救急搬送され集中治療室で生死の境をさまよっていた時、脳裏をよぎったのは、大学の剣道部で厳しい稽古をした日々です。「ここで死んだらあかん!」と奮起しました。― 摂南大剣道部での日々が糧になっているのですね。岡田:瀕死の状態でもあきらめない心を保てたのは、剣道部での経験があったからです。厳しい稽古を続けた4年間が、奇跡的な生還につながったのだと思います。一方で、組員を逮捕できなかったこと、摂南大剣道部OBの2人が淡路島の署長に就任 強い連携で治安と市民の安全を守る岡田 智博 さん
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