常翔学園FLOW99号
4/32

Q&A蜂谷さん田中さん角谷さん反田さんのMBSラジオ「反田恭平Growing Sonority」(毎週月曜18時〜18時半)は、スマートフォンアプリ「radiko」やYouTubeの番組公式チャンネルでも視聴できます。中原さん木村さん左から山口さん、池島さん※学生・生徒の学年は取材時のものいでしょうか。●横山晴夏(常翔学園高1年):クラシック音楽には少し難しいというイメージがありますが、何か面白いエピソードのある曲を教えてください。●反田:ベートーヴェンのピアノソナタ23番「熱情」は曲の冒頭、同じ音の13回の連打があります。13はヨーロッパでは不吉な数字で、ベートーヴェンはこの連打で曲の中で不吉なことが起きると示しています。そのことを意識すると曲の聴き方が変わってきます。多くの曲にこんな豆知識的なエピソードがあり、それをどう捉えるか演奏家の感性が問われます。●木村結月(常翔啓光学園高1年):クラシック音楽の一番の魅力は何ですか?●反田:言語を問わず相手の心に訴えられるということです。ピアノの技術があれば世界のどこに行っても演奏で人を笑顔にできます。クラシック音楽の最大の魅力です。秘曲と愛の歌の生演奏に大きな拍手 後半の最後はいよいよピアノの生演奏2曲です。ショパンコンクールでも弾いたショパンの「ラルゴ 変ホ長調」と反田さんが「大好きだ」というシューマン作曲/リスト編曲の「献呈」です。「ラルゴ」はショパンの死後約1世紀を経て楽譜が発見された遺作で、ポーランドの古い聖歌の旋律をもとに作られ、あまり一般的には知られていません。反田さんが「ポーランド人の心を揺さぶる子守歌のような作品」というように、心が洗われるような“秘曲”によってホール全体に静謐な時間が流れました。「献呈」はシューマンが愛妻クララにささげた歌曲をリストがピアノ独奏に華麗な装飾を加えて編曲したもので、反田さんはその美しい愛の歌を慈しむようにピアノで歌い上げました。演奏が終わると大きな拍手が贈られ、玉巻アナの「心が温泉に浸かったようにホカホカしました」という感想が聴衆の気持ちを代弁していました。反田さんは「素晴らしく心地のいい音響のホールと絶妙なピアノのお陰です」と再び常翔ホールとそのピアノを高く評価しました。ピアノ曲もオーケストラをイメージ独自の演奏以前に知るべきルール 後半は普段はリスナーから寄せられる質問に答える「音楽質問箱」のコーナーの特別版から始まりました。前半に続いて学園の学生・生徒からの音楽についての質問に反田さんが丁寧に答えました。●角谷心之介(大阪工大1年):再現することを良しとするクラシック音楽では、独自の表現や解釈で演奏すると怒られると聞いたことがあります。演奏が良ければいいのではと思うのですが、なぜですか?●反田:哲学的な深い質問ですね。クラシックの音楽家がいつも直面する問題です。絵画に例えるなら額縁がクラシック音楽のルールです。キャンバスに絵を描いてそこからギリギリにはみ出た部分が演奏家の才能だと思います。またブラー横山さんムスならドイツ語、ショパンならポーランド語という作曲家が話していた言語を理解してこそ演奏できるということもあります。再現する演奏家には作曲家、作品へのリスペクトがなければいけません。クラシック音楽は決められたルールの中で演奏すべきで、作品があってこそのアーティストなんです。●中原満紀(常翔学園中2年):クラシック音楽を聴くと心が落ち着くのはなぜですか?●反田:子供の頃に聴いた子守歌が歌曲やオペラにつながりますし、オーケストラにはビオラ、チェロ、クラリネットのように人の声に近い楽器があり、そうしたクラシック音楽が人の琴線に触れるからではな02August, 2022|No.99|FLOW前半の最後は会場からの質問に答えるコーナーQ&ALiveせい ひつ生徒たちの感想山口ひかり(常翔学園高3年):反田さんのピアノの音量の大きさと高音の美しさに感動しました。春から音楽大学に進学してピアノを勉強しますが、大きな刺激になりました。池島加寿人(常翔学園高1年):演奏に圧倒されましたし、子供の頃のお父さんとの大げんかの話などトークも面白かったです。反田:音楽の学校を作ることです。世界の音楽学校を見てきて、日本でももうちょっとできるのではと思うことがあります。昨年、奈良で同じ志を持つ友達を集めて「Japan National Orchestra」を株式会社として立ち上げました。これも学校作りの事前準備の1つです。●蜂谷凛花(常翔啓光学園高1年):自分が他のピアニストと違うと思うところは何ですか?●反田:僕は指揮者の勉強もしているので、ピアノの曲もオーケストラの各楽器の音色をイメージして立体的に考えることが他のピアニストと違うところだと思います。●田中陽菜(常翔啓光学園高1年):スランプになって弾けなくなったことはありますか? ●反田:スランプになったことはありませんが、自分が下手だなと思うことはあります。僕はそれを「今はうまく弾けない曲でも、5年後、10年後にその作曲家を理解できるようになる」とポジティブに捉えようとしています。

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る