■まつき・たろう 2011年京都府立大学福祉社会学部福祉社会学科卒。2013年神戸大学大学院人間発達環境学研究科心身発達専攻博士課程前期課程修了。2017年同人間発達専攻博士課程後期課程修了。芦屋市教育委員会適応教室指導員、名古屋市立大学大学院医学研究科環境労働衛生学特任助教などを経て、2022年から現職。公認心理師。博士(学術)。大阪府出身。アナログが主流で専業主婦世帯も多かった1990年代。少年による重大犯罪が目立った時代でもあります。そこから約30年で主流はデジタルに取って代わり、メタバースが世界のトレンドに。働く女性が増え食に対するニーズも多様化しています。少年犯罪の件数は減少傾向にあるものの質に変化が生じています。 今回の「JOSHO FRONTIER 研究最前線」は、メタバース・働く女性と食・少年の犯罪心理をテーマに、研究に取り組む学園3大学の若手研究者を紹介します。12August, 2022|No.99|FLOW広島国際大学 健康科学部 心理学科■なかやま・たかゆき 1994年慶應義塾大学理工学部物理学科卒。1996年東京大学大学院工学系研究科計数工学専攻修士課程修了。2000年同博士課程単位取得退学。理工学研究所バイオミメティックコントロール研究センター研究員、名古屋工業大学特任教授などを経て、2016年大阪工業大学工学部ロボット工学科(現:ロボティクス&デザイン工学部)特任准教授。2022年から現職。博士(工学)。東京都出身。 犯罪白書によると、2020年の少年刑法犯(14〜19歳)の検挙は2万2552人で前年より約3500人少なく、04年以降は減少が続いています。一方、21年末の警視庁の統計では、オレオレ詐欺など特殊詐欺による少年の検挙・補導は前年から微増しました。「少年犯罪がこれまでメインだった窃盗や暴力行為などから、質的に変化していることが考えられます」と子どもや青年の発達精神病理学を専門とする松木講師は指摘します。 更に質的な変化が起きている理由を「インターネット、SNS利用の低年齢化により、若者の衝動性や攻撃性が発露する場がネット上にシフトしている可能性が考えられます」と分析しています。さまざまな人との交流の幅を広げるツールと認めながらも「ネットは深海のような世界。どんなところにアクセスし、やりとりしているかは本人以外に分かりません」。6月にはネット上の誹謗中傷を念頭に刑法の侮辱罪が厳罰化され、これまで表に出なかった事案がカウントされるようになれば、量的にも増える可能性があります。 こうした傾向を抑えるためには、子どもだけでなく大人にもインターネットに関する知識や功罪の教育が不可欠ですが、松木講師は、加えて思春期特有の脳の発達過程への理解も必要と言います。 「脳科学の観点では、思春期になると感情・行動の表出をコントロールする機能より先に、促進する機能が発達します。いわばアクセルがブレーキより先に発達するため、感情・行動がコントロールできずに攻撃行動や衝動的行動として表れる、と考えられています。一方で、脳を『再構築』しているこの時期では、周囲からの温かいサポートによっ「社会実験プラットフォーム」にする計画です。 「例えば、実際の町は車道のため歩道が狭いですよね。本来は人のための車なのに人の方が窮屈になっています。そんな要素を取っ払った社会を形にして、いろいろな人に中で暮らしてもらう。それを現実にフィードバックさせ、本当に住みやすい町として展開できればいい」。より自然な空間とするため、AI(人工知能)で中の住人の表情や動きを制御する研究を進めています。 これとは別に、仮想通貨にも利用され、全ての取引履歴が残り改ざんされにくい特性を持つブロックチェーン(分散型台帳)技術を生かし「価格設定に透明性が保て、生産者へ正しい価値の分配ができる通貨システム」も構想しています。「GAFAなど巨大企業に対し、地域社会を大事にしようという世界的な流れが出ている中、原価割れなどで苦しむ漁業者や農業者、流通ドライバーらを助けられないか」との考えからです。目指すのは価格監視ができるシステムの構築です。 ゴーグルを着けて別の世界でアバター(分身)を動かす――。メタバースのそんなイメージとは少し趣が異なりますが、中山教授の研究は「人間の生活を真ん中に」の視点で貫かれています。て感情や行動をコントロールする機能も着実に育っていくことが数々の研究から明らかにされています。そのため周囲の大人が彼らの発達を理解し支えていくことが大切といえます」。 松木講師は大学院生の時、適応指導教室で約5年間、不登校の児童生徒らを支援した経験があり、「問題行動はなぜ思春期に増えるのか。彼らの可能性を伸ばすために、何ができるのか」との問題意識を持ちました。それが今の研究につながっています。学生への希望として「人は絶えず変化する『環境』とのダイナミックな相互作用を通して発達していきます。人の発達を広く、深く理解していくために、さまざまな学問に触れ、多角的な観点を身につけてほしいです」と話します。松木 太郎講師少年犯罪に質的な変化 ネット利用の低年齢化も影響か 思春期の脳発達へ理解が必要
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