11FLOW|No.99|August, 2022大阪工業大学 ロボティクス & デザイン工学部 システムデザイン工学科摂南大学 農学部 食農ビジネス学科現在制作中のバーチャル茶屋町の空間■そえじま・くみ 2001年鹿児島大学水産学部水産学科卒。2003年広島大学大学院生物圏科学研究科生物生産学専攻博士前期課程修了。2006年同生物圏共存科学専攻博士後期課程修了。水産大学校水産流通経営学科講師などを経て、2020年から現職。博士(農学)。大阪府出身。 最近、よく見聞きする言葉に「メタバース」があります。インターネット上に作られた仮想空間を意味し、VRゴーグルを装着するなどしてゲーム、コンサートなどのイベントや会議に参加することができます。スマートフォンを使う金融サービスなども含み、今後大きな成長が期待されています。中山教授はこの最先端技術を「人間の生活を中心にした働く女性の増加とともに、食に対するニーズも多様化しています。手間をかけずに食べられる商品が市場にあふれ、デリバリーサービスの利用も一般的になりました。一方、農漁業に携わる女性を中心に、安全な加工食品を販売するビジネスも広がっています。副島准教授は、こうした女性グループと連携し、よりよい起業や地域振興のあり方を研究しています。 研究のきっかけは、学生時代に漁村の女性から聞いた話でした。タイなどの高級魚でも、規格外のサイズというだけでスーパーは取り扱わず、捨てられてしまう――。女性たちは「もったいない」と、水産物を加工して販売する活動を始めていました。 そして今、働く女性が帰宅してすぐに使えるものを、との視点で加工や販売に取り組む女性起業家が増えていると実感しています。 「私も働く母親で日々忙しく、夕食を作る時間はあまり取れませんが、レンジでチンだけだと寂しい。まともなものを子供たちに食べさせたい気持ちがあります」。働く女性らをターゲットに、焼くだけなど簡単でおいしいとアピールする食品は多くあります。しかし「添加物を多く含み、食材の鮮度を濃い味付けでごまかしている商品もあります」。安くて人気があっても「それを求める消費者ばかりではないはず」。その裏付けを取るため、彼女らの手掛けた商品を東京のセレクトショップと協力して、販売動向を調べる計画を進めているところです。 また、各地の農山漁村の起業家たちをつなごうと2003年、研究者仲間とともに「うみ・ひと・くらしネットワーク」を作り、2020年秋に社会」に役立てたい、と研究を続けています。2021年秋、大阪市北区茶屋町で開催された「チャリウッド」で、大阪工大梅田キャンパスの3学科が合同で製作した「VR茶屋町」が公開されました。茶屋町を3Dモデルで再現した仮想空間です。中山教授はこれを舞台に、企業と協力して新たな研究を進めています。「今、社会が変わろうとしており、『いのち輝く』未来社会のデザインをうたう2025年大阪・関西万博は契機になると思います」。各国が多様なメタバースの技術を披露すれば、実社会でも活用の幅が広がると想定。社会の大きな変化に向けてVR茶屋町をは一般社団法人化しました。会員は全国に63人。新商品の試食や魅力的な写真の撮り方など多様なテーマを設けて毎月オンラインで勉強会をしています。シンポジウムも毎年実施しており、2021年度は対面とオンラインのハイブリット型で開催しました。起業した女性が「自分だけ儲けたいのか」「仕事など辞めろ」と周囲から非難されることもあるといいます。「彼女たちは地域の資源を無駄にしたくない気持ちが一番にあります。起業で地域の農漁業が豊かになり、自分の収入にもつながれば、という人がほとんどです」。地域のための取り組みを、持続的で豊かな食生活につなげる試みが続きます。「うみ・ひと・くらしネットワーク」の広報誌。現在はHPでの情報公開に移行中研究内容を動画で紹介https://youtu.be/caPD3HeVop4研究最前線中山 学之教授副島 久実准教授茶屋町モデルのメタバース 実証実験の舞台を準備「人」中心のシステム構築目指す多様化する食生活の中 「安全」求める消費者と 農山漁村の起業女性をつなぐJOSHOJOSHO
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