原爆の惨禍をくぐり抜けたピアノを前に 平和と非核化について考える17FLOW|No.97|March, 2022■ 新採用者紹介YouTubeで動画配信中!「カズコのピアノ」。側面の傷は被爆当時のまま展示パネルに足を止めて見入る来場者カズコのピアノに感謝の拍手を送る演奏者ミニコンサート前には、矢川氏(右)と禅定佳隆館長(常翔学園中高教諭)によるトークセッションも学園は1月29日、大阪工大梅田キャンパスの常翔ホールで映画「おかあさんの被爆ピアノ」の上映会並びに「被爆ピアノとふれあう会」を開催しました。本イベントは、学園創立100周年記念イベントの1つで、映画に登場する人物のモデルとなったピアノ調律師・矢川光則氏も登壇しました。同氏は広島県出身の被爆2世で、ピアノ調律の仕事の傍ら修繕作業も行っていた中で被爆ピアノに出会いました。「このピアノの音色を多くの人に聞いてもらうことで、平和や非核化について考えてもらうきっかけづくりをしたい」と2005年から全国各地で被爆ピアノの演奏会を行っており、昨年の夏には私財を投じて被爆ピアノ資料館を創設・オープンさせました。 イベント当日、同ホールで紹介されたのは現存する被爆ピアノ全10台のうちの2台で、所有者の名前を取って「ミサコのピアノ」「カズコのピアノ」と呼ばれています。いずれも1945年8月6日、広島市の爆心地から3km圏内の民家で所有者とともに被爆しています。矢川氏の元へ修復のため持ち込まれた当時は音のずれや弦が切れている鍵盤などがあり、演奏できる状態にするまでに1カ月の時間を要しました。爆風やガラス片などによる傷は被爆当時のままで、あえて完全修復はしていません。「傷あとが残るからこそ被爆資料としての価値がある」と矢川氏は言います。 ミサコのピアノの展示フロアには、当時の惨禍を物語るパネルもカズコのピアノを演奏する中村さん展示。原爆投下直後の焼け野原と化した町の様子や、衰弱した幼い弟を背負う少年の姿、熱線により皮膚が焼けただれた市民の顔などの写真が並びました。その生々しさに最初は驚きを隠せなかった来場者も次第に見入るようになり、原爆によって苦しんだ人々に鎮魂の思いを寄せました。展示について矢川氏は「目を覆いたくなるけれどこれが現実で、目を背けてはいけないことを、多くの人に知ってもらいたい」と語ります。 学園は事務系3人の職員を迎えました。 ミニコンサートでは学園設置各学校の学生・生徒たちがカズコのピアノを演奏し、平和を訴える音色をホールに響かせました。演奏者の1人である中村真悠さん(常翔啓光学園高2年)は、原爆について、授業で習ったことしか知らずピンとこなかったと言います。しかしピアノを演奏することで現実に起きた出来事として実感を持って理解することができ「戦争を知らないからこそきちんと学び、将来は幼稚園教諭として子供たちに戦争の歴史を伝えたい」と語りました。 音楽は言語や宗教の壁がない世界共通のコミュニケーションツールと語る矢川氏は、今後も被爆ピアノとともに全国各地を行脚する予定で「被爆ピアノとの出会いをきっかけに、平和や非核化について何か感じてもらえることがあればピアノもきっと喜びます」と語りました。■事務系職員[12月1日付]嘱託職員(事務職員)照屋 明子 てるや・あきこ所属:施設部施設課[1月1日付]嘱託職員(事務職員)平野 祐子 ひらの・ゆうこ所属:摂南大枚方事務室[2月1日付]嘱託職員(事務職員)小林 徹 こばやし・とおる所属:常翔学園中高入試部GAKUEN NEWS
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