常翔学園FLOW94号
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11FLOW | No.94 | August, 2021 「大阪王将」を運営するイートアンドホールディングスの代表取締役会長CEO、文野直樹さんは啓光学園高校在学中から店長として現場を取り仕切り、25歳の若さで父親の後を継いで社長に就任しました。現在も外食産業の最前線で活躍し中国への出店などチャレンジを続けています。経営者として従業員らに説く心掛けには、高校時代に部活の顧問の先生から伝えられた言葉に通じるものがあるそうです。 小学生の頃には父親が創業した大阪王将の店舗で手伝いをしていた文野さん。時は高度経済成長期で人々の生活水準の向上に合わせるように、お客さんも増えました。次々と新規の出店をしていく中で、人手は常に足りません。高校在学中に店長になったのはごく自然なことでした。中学を卒業してすぐに就職した同じ年ごろの人と肩を並べ、餃子を「巻く」スピードや出来上がりの美しさなど、技量を競うように磨きました。「職人の道は楽しかった」と振り返ります。 当時の大阪王将のメニューは餃子のみ。父親に他のメニューも取り入れるべきと提案しましたが受け入れてもらえず、けんかになったそうです。「だったら自分でやってやる」と進学していた大学を中退し父親から借金して独立。愛知県で餃子以外にチャーハンやラーメンなどのメニューもある独自の中華料理チェーンを立ち上げ、わずか3~4年で10店舗を展開します。「二十歳そこらのくせにうまくいった」。その商才を見込んだ父親から関西に呼び戻され、25歳で大阪王将の社長に就任しました。 外食産業は「水物」と言われます。「水は高いところから低いところにしか流れない」。文野さんは世の中には流行があり、時代には逆らえないと考えています。メニューを多様化した大阪王将は順調に売り上げを伸ばし店舗数も増えましたが、「いずれしんどくなる時がある」と考えて始めたのが、冷凍食品の製造・販売でした。製造する「羽根つき餃子」は現在、どこのスーパーでも見かける超人気商品です。 コロナ禍は大阪王将にも大きなダメージをもたらしました。店舗の売り上げは激減し、30店舗以上を閉店。そんな会社を救ったのが冷凍食品を扱う食品事業でした。「コロナで外食はダメだったけど、冷凍食品でセーフだった」と1年を振り返る文野さん。現在は外食と冷凍食品の2本だった柱を更に増やそうと、eコマースや海外進出など、新たな事業に挑戦しています。「こだわることも大事だけれど、本当の強さは変化への対応力」と力説します。 高校時代の思い出を聞くと、軽音楽部の夏合宿のエピソードを披露してくれました。「ソロでないと目立たない」と手を抜いてエレキギターを弾いていると、顧問の先生のカミナリが落ちました。「目立たなくても聞こえている。1人1人が存在感を出せ!姿を消すな!」。そのときは「なぜこんなに怒るのか」と感じましたが、経営者として社員に向き合う中、みんなに伝えていることがその先生の思いと同じだということに気づきました。「とても役に立っている」と話します。 「学校は学校で楽しかった」とはいえ、若くして店を任された高校生活は、「手が回らなくなった。青春はもう無かった」と言います。それでも、現在までずっと仲の良い「ガチの友達2人」が高校時代にできました。「勉強は、できるにこしたことはないけれど、友達づくりも大事です。一生の友達をつくってほしい」。そう後輩に語りかけます。文野 直樹 さんイートアンドホールディングス代表取締役会長CEO25歳の若さで「大阪王将」の社長に「変化への対応力」で続ける挑戦ふみの・なおき 1978年啓光学園高校(現:常翔啓光学園高校)卒。1985年に父の跡を継ぎ大阪王将食品 (現:イートアンドホールディングス )の代表取締役社長に就任。2020年から現職。現社名には「食:EAT」に、食文化に貢献する「+&」を創造する、という思いが込められている。趣味はゴルフや社交ダンス、合気道。大阪府出身。巻頭特集活躍する卒業生 中国は人口世界第1位の約14億人を誇る大国で、面積は日本の約25倍。GDPで世界第2位の経済大国でもある。首都の北京では2008年オリンピック夏季競技大会の開催に続き、2022年にもオリンピック冬季競技大会が開催予定。国内34の一級行政区が存在し、東北部の遼寧省には、漢民族をはじめ、満州族、モンゴル族、回族、朝鮮族、シベ族など43の民族が住んでいる。重工業が盛んで、盤錦の遼河油田は中国で第3位。近年は軽工業、IT産業なども盛んに。王 芸潔 さんYijie WANG王朝文化偲ばせる瀋陽故宮お国自慢介護の専門知識を日本で学び超高齢化が進む中国で老人ホームを立ち上げたい  常翔学園の設置学校で学ぶ留学生を紹介する「GLOBAL VOICE」。第9回は中国から広島国際大に留学中の王芸潔さんです。母国の総合病院で助産師として働いていた王さんは、母親が祖母の介護をする姿を見て、介護の専門知識を学ぶことを決意し、日本へ留学しました。将来は、高齢化の進む中国で老人ホームを立ち上げ、介護環境の改善に貢献したいと、介護福祉士の国家資格取得を目指し勉強している王さんに母国での経験や日本での生活について聞きました。 1992年、中華人民共和国東北部の遼寧省鞍山市で製鉄関係の会社員の父母のもとに生まれる。高校卒業後、青海省の短期大学で学び看護師資格を取得。卒業後、中国の総合病院に就職し助産師の資格も取得。働きながら1年間日本語を学び、2018年、広島国際大医療福祉学科に入学。広島国際大学医療福祉学科4年 遼寧省の省都・瀋陽は人口800万人を超える大都市で、中国東北部の経済・文化の中心地です。その旧市街地の中心にユネスコの世界遺産にも登録された瀋陽故宮があります。かつてあった満州族王朝の皇居で、現在は「瀋陽故宮博物院」として有料で一般公開されています。建物や広場などに王朝文化が偲ばれて、古都の魅力が詰まった場所です。多くの日本人にもぜひ訪れてほしいです。 日本でもよく食べられている「餃子」ですが、中国東北部では、焼き餃子より、「水餃子」が最も好まれています。もっちりとしたコシのある食感で食べやすいだけでなく、年越しや旧正月には、家族で集まって食べる習慣がある「縁起の良い食べ物」とされています。また、内陸部や南部では、油を使わないヘルシーな「蒸し餃子」も代表的な食べ方で、エビやホタテなどの海鮮類との相性が良く、餃子の餡に入れて、いろいろな形の餃子を家庭でも楽しむことができます。さまざまな種類の餃子19FLOW | No.94 | August, 2021中華人民共和国・遼寧省(おう・げいけつ)PAKISTANSRI LANKAIRAN中華人民共和国AFGHANISTANArabian SeaIndian OceanSea of OkhotskUZBEKISTANTURKMENISTAN北京遼寧省

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