常翔学園FLOW94号
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 姫路市消防局で救急救命士として働く有福祐奈さんは、広島国際大医療技術学科救急救命学専攻(現:救急救命学科)の1期生です。一度決めたことは最後までやり抜く粘り強さの持ち主で、大学や消防局での厳しい訓練を乗り越えてきました。現在は、自ら救急車両を運転し現場へ急行します。そんな有福さんの救急救命士としての原点は、大学時代にあります。 2月に機関員の試験に合格し、サイレンを鳴らして自ら救急車両を運転し現場へ急行する有福さん。将来は通信指令員として119番通報に対応できる人になりたいと語ります。しかし、最初から救急救命士を目指していたわけではありません。3歳から水泳をしていたこともあり、「小さい頃はイルカの調教師になりたかったのですよ」と苦笑します。そんな有福さんが救急救命士に関心を持ったのは、高校生の時。医療従事者を目指して進路を検討していくうちに、自分が入学する2013年度に広島国際大で救急救命学専攻が開設されることを知ったのです。 大学では、ライフセービング部で活動する傍ら東広島市消防団に所属し、全国女性消防操法大会で優秀な成績を収めました。学業面での成績も申し分なく、卒業式では総代として答辞を述べるほど優秀だった有福さんですが、実は人工呼吸処置などの実技では苦戦。うまくできない自分が悔しくて涙を流しながら試験を受けたこともあり、当時のエピソードは「卒業するまで先生に笑い草にされました」と話します。 姫路市消防局に入局した直後の半年間は、三木市にある消防学校で訓練を重ねました。特に印象に残っているのは、明石市まで往復30キロ超を夜通し歩き続ける夜間歩行訓練と、山道を登る強歩訓練です。強歩訓練は、ハイペースで進んでいく教官についていかなくてはなりませんでした。しかも、持ち歩ける水分量はあらかじめ決められているため、ゴールまでの距離と給水量を自分で調整しなければなりません。実際の災害現場では、必ずしも水が自由に飲めるとは限らないため、その訓練が必要なのです。大学の授業で受けた訓練とは比べ物にならない厳しさを今でもよく覚えている有福さんですが、「やめたいと思ったことは一度もありません」と断言します。持ち前の粘り強さに加え、家族の応援や仲間の支え、真っ先に傷病者のもとへ駆けつけ救急医療を行うという使命感が、有福さんの原動力となっているのです。 救急救命士は、病院搬送までできるだけ傷病者の容体を悪化させないことが最大の責務であり職務です。常に冷静で迅速かつ的確な処置が求められますが、そのためには、処置の手順・手技を反復練習して体に覚え込ませることが重要です。有福さんは、その基礎を大学の授業で身につけたと言います。「救急医療行為に関する手技の手順を一つ一つ細かく丁寧に繰り返す授業がありました。地道で根気のいる授業でしたが、今振り返ると、なくてはならない授業でした」。 それだけに後輩たちには「大学での授業は救急救命士の仕事に密接に結びついているので、決しておろそかにしないでください」とアドバイスを送ります。また、災害現場は訓練以上に厳しい状況であるため「だからこそ、大学での訓練に対して能動的に取り組むことが大事です」と力を込めます。命の現場へ急行し日々人命救助に貢献する有福さんからのメッセージです。有福 祐奈 さん姫路市消防局 救急救命士命の現場に向かう日々 大学での学びと経験が人命救助につながるありふく・ゆうな 2017年広島国際大学保健医療学部医療技術学科救急救命学専攻(現:救急救命学科)卒。同年、姫路市消防局入局。大学時代は東広島市消防団に入団し、女子学生団員として活動。第22回全国女性消防操法大会では優良賞の成績を収めた。同大卒業式で総代を務める。山口県出身。巻頭特集活躍する卒業生09FLOW | No.94 | August, 2021page36キラリ*Josho note  4歳の頃から水泳を習い始め、小学5年で本格的に力を入れた中村さん。「高校時代は、大会に出場したり合宿に参加したことが思い出です」と振り返ります。もともと医療分野やスポーツトレーナーの仕事を志していましたが、モノづくりにも興味を持っていました。理学療法士や臨床工学技士も視野に入れて進路選択を考え、最終的には医療・スポーツ・モノづくりの3つの分野に関わることができる義肢装具士の道へ。広島国際大に進学してからは得意の水泳スキルを生かし、ライフセービング部員として海水浴場の監視などを行ってきました。 義肢装具学専攻では、1年から機器や義肢装具の基礎を学ぶ工作演習で実践的な技術を学びます。製作する装具のベルトは工業用ミシンで縫製しますが、家庭用ミシンとは桁違いの速さとパワーがあり、手先の器用さが求められます。「実は手先が不器用で、みんなより作業時間が多くかかっていました」と苦笑いする中村さんですが、3年間の製作実習や義肢装具製作会社での学外実習で工業用ミシンを長時間使い、今までよりも手先をうまく使えるようになったと言います。 卒業研究では、パラアスリートの用具開発にも携わっている谷口公友准教授の指導を受け、パラ水泳選手のトレーニング用具「パドル」の開発に取り組んでいます。担当する選手は、手の麻痺や握力の低下、胸から下の自由が効かない障害を抱えているため泳力の強化が必要です。そこで中村さんが開発している「パドル」を前腕に装着し、水をかく際に水の抵抗を受けることで筋力の強化を図り、泳力の向上を目指しました。「製作で一番苦労したのは形状です。アイデア豊富な先生からのアドバイスには目から鱗でした」と話します。最初の試作品はパドルの先端が指先に当たって痛むため、2作目、3作目と試行錯誤を繰り返しました。完成までの道のりは長いですが「開発したパドルを実際に選手が装着してトレーニングする実験を行い、効果検証を踏まえて卒業論文を仕上げることが目標です」と意欲を燃やします。 今後の目標は、まず義肢装具士として基礎的な技術を身につけて、さまざまな疾患に応じたモノづくりで、患者さんの生活をサポートすること。そのうえで、「スポーツに携わりたいという気持ちは忘れず、いつか五輪などで世界を舞台に戦うアスリートをサポートできるように頑張りたい」と決意を込めます。真面目にコツコツと積み重ねた努力がキラリ光ります。開発しているパドルの1作目 夢はトップアスリートを支える義肢装具士パラ水泳選手のトレーニング用具開発に挑戦広島国際大学リハビリテーション支援学科 義肢装具学専攻4年中村 颯希 さんなかむら・さつき21FLOW | No.94 | August, 2021

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