07FLOW | No.92 | March, 2021 特許庁で長年商標出願の審査に携わった尾茂准教授は、身近なニュースを知財の知識で読み解く授業をしています。「鬼滅の刃」のヒットで、集英社が登場人物の着る羽織の柄(市松模様など)を商標出願したニュースもすぐに取り上げました。昔から知られた市松模様のような柄の商標登録が認められるのか、学生らに考えさせたのです。商標権は商品やサービスについてのブランドの信用を守るものであり、その味方にすれば頼もしい商標権世の中の動きに常にアンテナを大阪工業大学 専門職大学院 知的財産研究科尾茂 康雄 准教授■おも・やすお 2000年慶応義塾大学環境情報学部環境情報学科卒。同年国家公務員試験に合格し特許庁入庁。審査業務部審査官、商標審査基準室、審判部審判官、同部審判課審判企画室課長補佐などを経て、2019年から現職。東京都出身。 奈良時代から存在した陰陽師は占いで怨霊や鬼を退治したと伝わります。「鬼滅の刃」の世界観には陰陽道の影響が少なからず見られます。「大和言葉でオンと呼ばれていたものに、漢字が入ってきて鬼の字が当てられました。オンは隠に通じ、もともとは隠れて見えない恐ろしいものを指しました。今ならさしずめ新型コロナウイルスですね」と赤澤准教授。角の生えた鬼の姿は後世にできたと言います。疫病のような恐ろしく、正体の分からないものを占いで吉か凶かを判断し、凶ならば封じ込め、遮断するための結界を張るという“ロックダウン”も陰陽師が担いました。「陰陽道で鬼の気とは病気のことで、それを封じる儀式もありました」と話します。 祈祷師的、オカルト的なイメージが強い陰陽師ですが、「陰陽師は時を司る暦や天変地異を予測する天文の最新知識で朝廷に仕えました。暦と天文は重要な農業にも必須の知識で、律令制の国家組織に属した科学技術官僚とも呼べる存在でした」と新鮮な陰陽師像を赤澤准教授は強調します。陰陽師ブームの中心となった安倍晴明は平安時代に活躍しましたが、赤澤准教授の主な研究テーマはその後の鎌倉時代以後の中世の陰陽師の歴史です。「私の学生時代には分かっていないことが多すぎて、逆に研究のやる気が出ました」と振り返ります。鎌倉幕府にも多くの陰陽師が召し抱えられて、国家運営にかかわっていたことが分かっていきました。「陰陽道を担ったのは主に賀茂家と安倍家の2家でしたが、朝廷の陰陽寮でのポストは限られていたので、分家の陰陽師たちが地方に活路を求めたのです」。研究を進める中で15年前に大きな発見がありました。宇佐神宮(大分県)の史料を調べていて、神官の一員に陰陽師がいたことが分かったのです。陰陽師が神事やお祓いの大事な役割を担っていたことが記録されていました。「京都の陰陽師とは直接つながりのない民間の陰陽師が地方に根付いていたのです」。この研究成果を含めた最新の陰陽師研究の学術書『新陰陽道叢書第二巻中世』(名著出版)を代表編者として1月に出版。10年以上かけて1万件の史料のデータベース化もするなど、最近の陰陽道研究の盛り上がりの一翼を担っています。「陰陽道が人々の考え方や生活に与えた影響を解き明かしたいですね」と新たな発見を求める日々が続きます。摂南大学外国語学部 外国語学科赤澤 春彦 准教授■あかざわ・はるひこ 1998年中央大学文学部国史学科卒。2009年同大学院文学研究科日本史学専攻博士後期課程修了。新宿歴史博物館埋蔵文化財調査員、東京都江東区教育委員会文化財専門員、日本学術振興会特別研究員などを経て、2013年摂南大学外国語学部外国語学科講師。2017年から現職。学芸員。博士(史学)。長野県出身。“技術系の国家官僚”だった陰陽師その知られざる歴史を掘り起こす陰陽師の歴史研究の編・著書【陰陽道】中国古代の思想「陰陽五行説」から派生した日本固有の呪術・学問の体系JOSHOFRONTIER研究最前線JOSHOFRONTIERそうしよ常翔啓光学園高 須崎さんのダブルダッチ・チームが快挙会心パフォーマンスで国際大会優勝!特集向かい合ったターナーと呼ばれる2人の回し手が2本のロープを回し、その中でジャンパーが技を交えながら跳ぶ「ダブルダッチ」。米国生まれの遊びとして親しまれてきましたが、実は技術力や表現力を競う国際大会も開催される世界的な競技です。常翔啓光学園高1年須崎日菜美さんの所属するダブルダッチスクール「MIYAKO JUMP ROPE CLUB」の高校生4人で結成されたチーム「BRASH×BRUSH」が昨年12月に国際大会の頂点に立ちました。日本の高校生が同大会を制すのは初の快挙です。ダブルダッチを始めたころの須崎さん=本人提供クラウドファンディングで得た渡航費で出場した大会で優勝(右から2人目が須崎さん)=MIYAKO JUMP ROPE CLUB提供15FLOW | No.92 | March, 2021■大会初 日本の高校生チームが チャンピオンに 「BRASH×BRUSH」が制したのは、世界各国でえりすぐられたチームが出場する「National Double Dutch League Holiday Classic」(NDDL)の中学2年生以上が出場するADVANCED部門です。毎年、米国ニューヨークのアポロシアターで開催されますが、今回は新型コロナウイルスの流行拡大のため映像審査となり、結果は昨年の12月14日午前8時ごろ(日本時間)YouTubeの大会公式チャンネルを通じて発表されました。 当日の朝は終始そわそわしたという須崎さん。送付したパフォーマンスの映像は会心の出来でしたが優勝できるという確信はありませんでした。なぜなら、日本大会の時から意識していた大学生チームも同大会に出場していたからです。「日本の大学生チームは世界的にもレベルが高く、日本大会でも圧巻でした」と語るだけに、優勝が決まった時は喜びよりも驚きのほうが大きかったと振り返ります。メンバーとすぐにSNSで連絡を取り合い、徐々に実感が沸いてきました。■はじまりは1枚のチラシ そんな須崎さんがダブルダッチに出会ったのは小学3年の時です。ダブルダッチの講師が教えてくれるというイベントの案内チラシを見て、友達と一緒に軽い気持ちで参加しました。実は、須崎さんは他にもスポーツに取り組んでいましたが長続きしなかったため、最初は「お遊び感覚」でした。しかし、表現する面白さやチームで1つの目標に向かって頑張る楽しさに気付き、どんどんのめり込むようになりました。「一生懸命になれるものとの出会いって、いつどこにあるか分かりませんね」と笑顔を浮かべます。 やがて須崎さんは、スーパーキッズとして頭角を現していきました。小学6年で技術を競う国際大会「American Double Dutch League」で優勝。中学3年の時には「BNB」というチームで「WORLD JUMP ROPE」の出場権を獲得し、2度目の国際大会へ意欲を燃やしていました。しかし、渡航費という現実が重くのしかかります。そこでチームのみんなで話し合いクラウドファンディングに挑戦し支援を募ったところ予想を超える額が集まりました。U-18PERFORMANCE部門で優勝、その他の種目でも好成績を収めた須崎さんは「多くの人の応援や支えがあっての結果です」と当時を振り返ります。■今年こそアポロシアターの舞台に 現在、週に1度のレッスンに加え、表現力を磨くためにダンススクールにも通っている須崎さん。「技と技を組み合わせたり、ダンスのリズムを取り入れてオリジナリティを追求しています」とパフォーマンス力の向上に余念がありません。次の大きな目標はNDDLの連覇で、ダンスの“聖地”であるアポロシアターの舞台で生のパフォーマンスを見せたいと今から意欲を燃やしています。 卒業後の進路は検討中ですが、今まで応援してくれた人たちに恩返しする意味でもダブルダッチは続けると言い「強豪チームがある大学へ進学できたらいいなと思っています」と夢を広げます。情熱を絶やさない須崎さんの今後の活躍に期待が高まります。日本代表に選出された全国大会でのパフォーマンス動画はこちらから https://youtu.be/jMWRRWqM4l0の人表紙
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