常翔学園FLOW92号
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使っているのかにはあまり興味はありません。良きユーザーエクスペリエンス(ユーザー経験)が大切なのです。システム開発では、スモールスタートでまず形を作るのが理想で、私は2回作るつもりでやります。1回目はとにかく早く形にし、可視化します。「それは違う」と言われたら直していきます。最初からしっかり作るより、まずスピード重視で骨格部分を作るのが大事です。竹花 目からうろこのお話で感動しました。次のヒラソンでは参考にさせてもらいます。子供たちのプログラミング教育では「文法」よりものづくりの考え方を福本 私は小学生にプログラミングを教える活動に参加しています。小島さんは『SoftKids』などのプログラミング教育で、子供たちに何を学んでほしいですか?小島 多くの人がプログラミングを学ぶ時にソースコードの書き方という「文法」から入ります。これまでの英語教育に似ています。文法を学んでもなかなか話せるようにはならないように、プログラミングの書き方を学ぶより、そのプログラミングでどんなアプリを作りたいのかを明確にする方がプログラミングを学ぶ近道です。私たちは「ITのものづくり」の楽しさを子供たちに教えているつもりです。最初に「今日はこんなアプリを作ろう」と具体的なゴールを示します。まず自分たちが何をしたいか理解し、そのために何が必要か分解し、それぞれが作るものを分担しそれらを合わせて構築する、という考え方を子供たちに学んでもらいます。これはエンジニアリング思考です。福本 次のワークショップではぜひ試してみたいです。まだまだ課題が山積の5G エネルギー分野のブレイクスルー期待竹花 5Gが注目されています。私にはそれをどう生かすのか社会全体のビジョンが見えないのですが、小島さんは5Gをどう見ていますか?小島 大容量・低遅延・多接続という3つの売りがある5Gですが、まだまだ完全ではありません。リアルタイムの高速処理など課題は山積しています。完全な5Gが実現すれば、当たり前にバーチャルオフィスに接続する時代も来ると私は思っています。遮へい物が多いところに電波が届きにくいという弱点も指摘されていますが、アンテナ数を大幅に増やすことが計画され、車を基地局に利用するなどの研究も進んでいます。熊本地震の際にソフトバンクがバルーン状の気球を携帯端末用の基地局にした例もあります。やるべきことは多いのにIT人材はとても不足しています。福本 自動運転の見通しはどうですか? 小島 日本の場合、道路の問題やタクシー業界の雇用問題などがあり、簡単ではないですが、スマートシティー(IoTなどを活用した新都市)や高速道路など限定的なエリアでの自動運転は現実的です。コロナ禍で学校のICT化が進んだように、何かがきっかけで劇的な技術革新が起きることがあります。私は次の技術的ブレイクスルーはエネルギー分野で起きるのではと思っています。バッテリーの長寿命化、無線による電力伝送、自然エネルギーの活用、などのアプローチが有望です。福本 太陽光発電など自然エネルギー活用にはデメリットも議論されています。小島 発電量の問題が大きいです。そのため太陽光パネルの発電量を高める研究や、透明化により住宅の窓ガラスとして利用できる太陽光パネルも開発されていますし、データセンターでは交流より効率の良い直流で電力を利用する試みも進んでいます。技術的なリスクもありますが、あるタイミングでブレイクスルーが起きて一気に伸びるのではと考えます。リーダーに求められる「楽をしない」福本 小島さんのような研究開発のリーダーに求められる資質を教えてください。小島 多くの企業に管理職というマネジャーがいますが、リーダーとは別です。最先端の技術系の会社ではマネジャーが求められなくなっています。人に仕事をやらせるマネジャーに対し、リーダーは自分から仕事をして人を引っ張ります。私がリーダーに絶対必要と思う資質は「楽をしない」です。一番苦労するのがリーダーで、私は自分のチームのメンバーに「私がさぼっていると思ったら言ってくれ」と言っています。その時は自分から退く覚悟です。竹花 最後に学生時代にやっておくべきことのアドバイスをいただけますか。小島 一番勧めたいのは「友だちとよく遊べ」ということですね。自分の短所を改善することよりも、長所を伸ばすことを考えましょう。私も何回も失敗を繰り返してきましたが、失敗を恐れないでください。周囲の仲間も助けてくれます。さまざまな機会を使って何でも挑戦してください。大阪工大はヒラソンなどそうした機会を作ってくれる素晴らしい大学だと思います。竹花・福本 今日は貴重なお話をありがとうございました。大阪工大枚方キャンパスのラーニング・コモンズと東京・竹芝のソフトバンク新社屋をつないだリモート・トーク竹花さん:ヒラソンの経験を踏まえてから小島さんの話を聞いたことで、アジャイル開発が注目されている理由にとても納得でき大きな収穫になりました。 福本さん:リーダーとして大事なものは私も見習っていきたいです。気球を飛ばして携帯端末用の基地局にしたり、無線での電力伝送などとても面白いお話を聞けたことに感謝します。インタビューを終えて12March, 2021 | No.92 | FLOW使っているのかにはあまり興味はありません。良きユーザーエクスペリエンス(ユーザー経験)が大切なのです。システム開発では、スモールスタートでまず形を作るのが理想で、私は2回作るつもりでやります。1回目はとにかく早く形にし、可視化します。「それは違う」と言われたら直していきます。最初からしっかり作るより、まずスピード重視で骨格部分を作るのが大事です。竹花 目からうろこのお話で感動しました。次のヒラソンでは参考にさせてもらいます。子供たちのプログラミング教育では「文法」よりものづくりの考え方を福本 私は小学生にプログラミングを教える活動に参加しています。小島さんは『SoftKids』などのプログラミング教育で、子供たちに何を学んでほしいですか?小島 多くの人がプログラミングを学ぶ時にソースコードの書き方という「文法」から入ります。これまでの英語教育に似ています。文法を学んでもなかなか話せるようにはならないように、プログラミングの書き方を学ぶより、そのプログラミングでどんなアプリを作りたいのかを明確にする方がプログラミングを学ぶ近道です。私たちは「ITのものづくり」の楽しさを子供たちに教えているつもりです。最初に「今日はこんなアプリを作ろう」と具体的なゴールを示します。まず自分たちが何をしたいか理解し、そのために何が必要か分解し、それぞれが作るものを分担しそれらを合わせて構築する、という考え方を子供たちに学んでもらいます。これはエンジニアリング思考です。福本 次のワークショップではぜひ試してみたいです。まだまだ課題が山積の5G エネルギー分野のブレイクスルー期待竹花 5Gが注目されています。私にはそれをどう生かすのか社会全体のビジョンが見えないのですが、小島さんは5Gをどう見ていますか?小島 大容量・低遅延・多接続という3つの売りがある5Gですが、まだまだ完全ではありません。リアルタイムの高速処理など課題は山積しています。完全な5Gが実現すれば、当たり前にバーチャルオフィスに接続する時代も来ると私は思っています。遮へい物が多いところに電波が届きにくいという弱点も指摘されていますが、アンテナ数を大幅に増やすことが計画され、車を基地局に利用するなどの研究も進んでいます。熊本地震の際にソフトバンクがバルーン状の気球を携帯端末用の基地局にした例もあります。やるべきことは多いのにIT人材はとても不足しています。福本 自動運転の見通しはどうですか? 小島 日本の場合、道路の問題やタクシー業界の雇用問題などがあり、簡単ではないですが、スマートシティー(IoTなどを活用した新都市)や高速道路など限定的なエリアでの自動運転は現実的です。コロナ禍で学校のICT化が進んだように、何かがきっかけで劇的な技術革新が起きることがあります。私は次の技術的ブレイクスルーはエネルギー分野で起きるのではと思っています。バッテリーの長寿命化、無線による電力伝送、自然エネルギーの活用、などのアプローチが有望です。福本 太陽光発電など自然エネルギー活用にはデメリットも議論されています。小島 発電量の問題が大きいです。そのため太陽光パネルの発電量を高める研究や、透明化により住宅の窓ガラスとして利用できる太陽光パネルも開発されていますし、データセンターでは交流より効率の良い直流で電力を利用する試みも進んでいます。技術的なリスクもありますが、あるタイミングでブレイクスルーが起きて一気に伸びるのではと考えます。リーダーに求められる「楽をしない」福本 小島さんのような研究開発のリーダーに求められる資質を教えてください。小島 多くの企業に管理職というマネジャーがいますが、リーダーとは別です。最先端の技術系の会社ではマネジャーが求められなくなっています。人に仕事をやらせるマネジャーに対し、リーダーは自分から仕事をして人を引っ張ります。私がリーダーに絶対必要と思う資質は「楽をしない」です。一番苦労するのがリーダーで、私は自分のチームのメンバーに「私がさぼっていると思ったら言ってくれ」と言っています。その時は自分から退く覚悟です。竹花 最後に学生時代にやっておくべきことのアドバイスをいただけますか。小島 一番勧めたいのは「友だちとよく遊べ」ということですね。自分の短所を改善することよりも、長所を伸ばすことを考えましょう。私も何回も失敗を繰り返してきましたが、失敗を恐れないでください。周囲の仲間も助けてくれます。さまざまな機会を使って何でも挑戦してください。大阪工大はヒラソンなどそうした機会を作ってくれる素晴らしい大学だと思います。竹花・福本 今日は貴重なお話をありがとうございました。大阪工大枚方キャンパスのラーニング・コモンズと東京・竹芝のソフトバンク新社屋をつないだリモート・トーク竹花さん:ヒラソンの経験を踏まえてから小島さんの話を聞いたことで、アジャイル開発が注目されている理由にとても納得でき大きな収穫になりました。 福本さん:リーダーとして大事なものは私も見習っていきたいです。気球を飛ばして携帯端末用の基地局にしたり、無線での電力伝送などとても面白いお話を聞けたことに感謝します。インタビューを終えて12March, 2021 | No.92 | FLOW

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