page34キラリ*Josho note 北広島町の由緒ある浄土真宗の寺に生まれ、命の大切さや尊さを説く僧侶の父の姿を身近に見て育った浅香さん。そのため助けを必要としている人に手を差し伸べることに迷いがありません。幼いころは注射を怖がらず興味を示す珍しい子供で、気が付けば七夕の短冊に「看護師になりたい」と書き、医療現場の仕事にあこがれるようになっていました。 大学の進路選択では看護系の学部を考えていましたが、思うように結果が出なくて悩んでいた時に、中学校の先輩が広島国際大医療福祉学科で、社会福祉の立場から医療機関で患者やその家族を援助し、社会復帰の促進を図る「医療ソーシャルワーカー」を目指していることを知り、先輩の後を追うように同学科へ進学を決めました。 入学して間もなく、医療ソーシャルワーカーについて少しでも知識を得たいという一心で、それが専門の田川雄一助教のもとへ。「目まぐるしく変化する医療現場の中で厳しい仕事であると同時にやりがいのある仕事だよ」と教えられ、更に興味が湧きました。 3年生の夏になって初めて行った病院実習では患者へのがん告知の場面に立ち会いましたが、「患者さんのつらい思いに感情移入しすぎて、冷静にその患者さんが最後に何を望んでいるかを聞く余裕がありませんでした」と話します。その悔しさも浅香さんの人助けの活動の原動力になっています。 高いモチベーションで学生生活を送る浅香さんは、学業のみならず、休日を有効活用し、手話の資格取得を目指し講座を受講するとともに、生活困窮や発達障害の子供を支援するボランティアやアルバイトにも参加しています。「鉛筆1本1本を本当に短くなるまで使い切る子供たちの姿を見て、大切なことを学んでいると感じます」。社会福祉士と精神保健福祉士のダブルライセンス取得を目指し国家試験の勉強や実習と並行して、難病患者やその家族を支援する学生団体のリーダーとして、新たなプロジェクトに挑戦している浅香さんは、残りの学生生活も全力疾走で駆け抜ける覚悟です。 「将来は、医療ソーシャルワーカーとして、さまざまな患者さんを支え、妊産婦さんの力にもなりたい」という浅香さん。「誰かのために」をモットーに今後の人生で出会う多くの患者にとって必要とされる存在になるため、果敢なチャレンジを続ける姿がキラリと光ります。難病支援プロジェクトの活動について打ち合せを行う浅香さん(中央)世界共通手話 “I love you” 挨拶にも使われる広島国際大学 医療福祉学科3年「誰かのために」の姿勢を貫く浅香 弥音 さんあさか・みお妊産婦の力にもなれる医療ソーシャルワーカーに13FLOW | No.92 | March, 2021 ロシアの組織的なドーピング問題でスポーツ仲裁裁判所(CAS)が昨年12月、ロシア代表チームを2年間、主要国際大会から除外する裁定を発表しました。検査データ改ざんや隠蔽などを受けたもので、この結果、ロシアは東京オリンピック・パラリンピックに国家として参加できなくなりました(個人参加は可)。ドーピングが世界のスポーツを深くむしばんでいる実態が改めて明らかとなった形です。日本アンチ・ドーピング機構(JADA)公認「スポーツファーマシスト」の資格を持つ中原和秀講師は、アスリートやスポーツ愛好家に薬の正しい使い方の指導などを行う専門家として意図的で悪質なドーピングだけでなく、意図せずに禁止物質を摂取してしまう「うっかりドーピング」にも警鐘を鳴らします。最近のドーピングの傾向や禁止薬物の怖さ、うっかりドーピングの落とし穴、などについて聞きました。― 公認スポーツファーマシストの資格を取ろうとした理由とその役割を教えてください。中原 私は地域の学校薬剤師として、薬物乱用防止、薬の適正使用などの教育啓発活動を行ってきました。スポーツファーマシストの資格を取ろうと思ったのは、先輩学校薬剤師の薦めと日本スポーツ協会公認スポーツ指導者(弓道)の資格を持っているので、ドーピングはスポーツにおける薬物乱用と考えたからです。スポーツファーマシストの役割は、主にドーピング禁止物質を含む製品かどうかの問い合わせ対応や競技者の使用薬管理、医薬品の適正使用に関する知識の普及です。スポーツファーマシスト検索サイトに名前が載っているので、メールなどで相談を受けることがあります。また、摂南大ラグビー部員に対してアンチ・ドーピング教室を開きました。― ドーピングには長い歴史がありますが、最近の目立つ傾向を教えてください。 中原 ドーピングとは、最初は競走馬への薬物投与の意味でした。その後、人を対象として競技力向上のための薬物投与へと意味が変わり、現在では、競技スポーツにおける禁止物質による不正な競技力向上と位置づけられています。スポーツ界におけるドーピングの始まりは、1865年アムステルダム運河での水泳競技ですが、その後自転車競技、サッカー、ボクシング、スピードスケートなどさまざまな競技に広がっていきました=年表。近年のドーピングの傾向として、手法が巧妙になり、従来の尿検査による個別のドーピング検査だけでは対応が難しい場合やロシアのような組織的なドーピング問題に直面しています。最も多い蛋白同化男性化ステロイド薬による筋力強化― 競技によってドーピングにどんな違いがあり、どんな危険がありますか?中原 どんな作用が有利になるかによって、使用される薬物が異なります。例えば、筋力や筋肉量が競技に有利に働く場合、持続的な筋なかはら・かずひで ■2003年福岡大学薬学部製薬化学科卒。2007年熊本大学大学院薬学教育部分子機能薬学専攻博士後期課程中退。病院薬剤師、調剤薬局薬剤師を経て2007年崇城大学薬学部助手。2011年高崎健康福祉大学薬学部助教。2018年から現職。認定薬剤師。公認スポーツファーマシスト。統計士。枚方市立招堤小・中学校学校薬剤師。博士(薬学)熊本大学。高校から始めた弓道は4段で日本スポーツ協会公認スポーツ指導者。元群馬県国体強化選手。長崎県出身。中原 和秀 講師摂南大学薬学部 薬学科市販薬、サプリ、栄養ドリンクいたるところにあるドーピングの落とし穴このコーナーは、2020東京オリンピック開催にちなんだ『Team常翔』による連続インタビュー企画です。09FLOW | No.92 | March, 2021いんぺい1865年:1960年:1968年:1986年:1988年:1999年:2000年:2001年:2002年:2004年:2012年:2013年:2016年:2018年:2020年:アムステルダム運河での水泳競技でドーピングローマ五輪でオリンピック初の死亡者グルノーブル(冬季)、メキシコシティ(夏季)五輪でオリンピック初のドーピング検査競技会外検査導入ソウル五輪陸上男子100mで世界記録で優勝したベン・ジョンソン(カナダ)が失格世界アンチ・ドーピング機構(WADA)設立シドニー五輪で血液検査始まる日本アンチ・ドーピング機構(JADA)設立ソルトレークシティ五輪でエリスロポエチン検査アテネ五輪でヒト成長ホルモンの検査自転車ツール・ド・フランス7連覇のランス・アームストロング(米)の1998年以降の全タイトルはく奪米メジャーリーグ・ヤンキースのアレックス・ロドリゲスに211試合出場停止処分WADAがロシアにおける組織的なドーピング問題で報告書女子テニスのマリア・シャラポワ(ロシア)の違反判明遺伝子ドーピングが禁止に 2008年北京五輪陸上男子400mリレー1位だったジャマイカの違反が再検査で判明。日本が繰り上げ2位にロシア代表チームの2年間の国際大会からの除外が決定ドーピングの主な歴史
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