常翔学園FLOW91号
7/16

実習の学習効果が低下した分を教員は学内実習などでの教材や授業の工夫で補っています。井上■大阪工大では前期に全学で37%だった対面授業が、11月15日には89%になっています。感染対策としては、一般教室での対面授業は、最低限、試験座りの収容人数に制限しています。キャンパス内各所に非接触体温計の設置を進め、グループワークを想定した教室などに飛沫防止パーテーションを設置するなど、細心の注意を払っています。教育実習でも延期要請がありました。本学では教育実習の中止こそなかったものの期間短縮により、不足する時間数を大学が教育実習に替わる授業の代替措置を行うこととなりました。また、今後もこのような状況が続くことを想定し、受け入れ先との調整が必要です。――コロナという新たな社会の危機に直面して、ものづくりを標榜  する大阪工大ができることはありますか?井上■人口減少とWithコロナの時代に、AIやICTなどを使ったものづくり、生産性向上が求められ、人を使わずにものを作る技術が要求されていきます。そうしたことを意識して学生や教員も教育や研究を推進していかなければいけません。――薬学部や看護学部を設置する摂南大が、コロナ時代の社会に  貢献できることはありますか?伊藤■薬学部、看護学部の出身者の多くは最前線の医療現場で日々、このウイルスと戦っています。私たちはそれを誇りに思うとともに、今後もそのような人材を輩出していくことに強い使命感を持っています。――医療・福祉の専門職を目指す広島国際大の多くの学生にこの  状況だからこそ活動してほしいことは何ですか?笛吹■世界的な感染症のまん延という現実に直面し、自ら感染症対策を実践していることは、健康・医療・福祉分野の各専門職を目指す学生にとっては貴重な経験で、本学のタグライン「いのちのそばに。ひととともに。」を実感できたはずです。今一度、人を思いやる心をもった行動や情報発信を社会、特に医療弱者や若者に向けて行ってほしいです。入学早々キャンパスが閉鎖され、プロジェクト活動への参加など、思い描いていた大学生活を送れなかった山本さん。履修登録や奨学金申請などの連絡はポータルサイトからのみと、いまひとつ大学のルールが分からない状況の中で大学生活が始まりましたが、「オンライン授業は意外とスムーズで分かりやすく、授業の動画は何度も見直すことができて勉強しやすかった」と明るく語ります。本来であれば往復約2時間かかる通学時間を有効活用し、オンライン授業で出される課題に取り組む時間に充てました。前期にはゼミで2回登学する機会があり、「同学年のゼミ生と知り合ったり、先生と初めて対面したりと大学生になったことを強く実感できてうれしかったです」と振り返ります。後期からは対面授業が再開され、「授業の理解度が深まり、充実した大学生活を過ごしています」と目を輝かせました。思い描いていた大学生活にやっと近づく一流選手らをサポートできる義肢装具士になりたいと、沖縄から広島国際大に進学した石原さんは、学生寮に入居し、人生初の一人暮らしを始めました。入学当初はすべての授業がオンラインとなり、多くの人と触れ合いたいと思い描いていた大学生活とはなりませんでした。前期は課題も多くレポートの作成に追われました。オンラインでは質問もしにくく、「正直、目的も分からないまま、ただこなしているだけでした」と振り返ります。実技の対面授業が始まり、ようやく大学で学ぶ実感を持った石原さんは、「今は、先生方から濃いアドバイスを受け、学生同士で目標を共有しながら楽しんで学んでいます」と笑顔を見せます。コロナ禍で人とのかかわりの重要性を強く実感した石原さん。「遠い沖縄から進学させてくれた両親に感謝しながら夢を実現したい」と力強く話しました。人生初の一人暮らし 人との触れ合いを大切に夢の実現を目指す高校時代は外国人観光客にガイドを行う部活動に所属し、大学では海外留学を夢見て外国語学部に進学したという塚原さん。入学後は留学資格を得るためにTOEICや授業にも熱心に取り組みました。留学先は、アマゾンやマイクロソフトなどの名だたるグローバル企業が本社を構える米国ワシントン州のワシントン大学を希望。見事留学条件をクリアし、4月からの留学が決定していました。手続きもすべて済ませ、渡航を待つだけという段階で新型コロナウイルスのパンデミックが起こり、2月下旬には留学中止の連絡を受けました。当時は悔しさのあまり涙したという塚原さんですが、今は気持ちを切り替え大学のあらゆる語学プログラムに積極的に参加しています。「語学の上達方法は留学だけじゃない。英語を話すチャンスを見つけてどんどんチャレンジしたい」と意欲的に活動しています。夢見た海外留学が中止に今あるチャンスを最大限に生かすICT教育の推進が奏功 常翔学園中高では、4月から一部オンライン授業を開始し、ウェブ会議ツール「Zoom」や学習支援クラウドサービス「Classi(クラッシー)」などを使い授業を進めました。同時に、教育イノベーションセンターの若手教員が講師役となりシステムの使い方を指導するなど教員全体のスキルアップを図りました。その結果、5月中旬には全授業のオンライン化を実現。生徒は、通常の授業と同じように自宅で学習を行うことができました。 同校では、2017年度から1人1台のタブレット端末を配付しており、早くからタブレット端末を活用したICT教育に取り組んできました。全生徒がiPadを所持し、コロナ禍以前から多様な学習ツールを活用する環境が整っていたため、休校期間中の授業も迅速に対応することができました。 また、高校2・3年生のクラス保護者会もオンラインで開催。これまで保護者には学校まで出向いてもらっていましたが、自宅や出先からでも参加が可能となり、「出席しやすかった」「気兼ねなく質問できた」と好評でした。 田代浩和高校教頭は、今後は教室でもICT化が加速していくだろうと予測。ただ、「学校は人とのかかわり合いの中で学びや気付きを得る場でもあります。オンライン・対面それぞれのメリットを生かした教育を展開したい」と話します。生徒ファーストで学習面以外もサポート 常翔啓光学園中高では、4月に課題やレジュメなどを郵送して自宅学習を促し、5月からMicrosoft Teamsを活用したオンライン授業をスタートしました。前例のない授業形態でしたが、アンケートでは「動画は繰り返し確認でき復習しやすい」と多くの生徒から好評でした。登校再開後のテスト結果も例年とほぼ変わりなく、オンライン授業について一定の教育効果を上げることができました。 また同校は、生徒のメンタルヘルスにも留意し、さまざまな配慮を実施。実技を伴う科目を含め、全科目でオンライン授業を実施し、始業時刻の8時20分にはシステム上で点呼を行うなど、生活リズムが崩れないよう工夫しました。また、担任はこまめに生徒へ電話連絡し状況の把握に努め、更にスクールカウンセラーによるお知らせも発行回数を増やしました。この他、例年保護者が来校して実施していた高校3年生対象の進路ガイダンスをオンラインで実施。おおむね好評であったことから、今後は来校型とオンライン型での実施を検討しています。 コロナ禍における授業対応の指揮を執った山田長正高校教頭は、混乱した4・5月を振り返り、「いつも以上に『生徒のために』という思いで教員全員が一枚岩となり、例年通りのカリキュラム進度を維持できたことは大きな収穫でした」と振り返りました。06January, 2021 | No.91 | FLOW大阪工業大学 機械工学科1年山本 尚 さんWithコロナの大学生活やまもと・たつと常翔学園中学校・高等学校常翔啓光学園中学校・高等学校広島国際大学 リハビリテーション学科 1年石原 光太郎 さんWithコロナの大学生活いしはら・こうたろう摂南大学 外国語学科3年塚原 彩紗 さんWithコロナの大学生活コロナ禍における中学・高校の取り組みつかはら・あやさ

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る