堤防からの越水や堤防決壊が起こることで発生します。河川堤防は過去の最大降雨や確率的に求めた降雨強度などから設計することが一般的です。分かりやすく言うと、「100年に1度の大雨による洪水に耐える」などの基準で作られます。現在、淀川では「1000年に1度の大雨」に対して洪水氾濫の想定がなされています。当然、地球温暖化で降雨量が変われば、設計基準の見直し、堤防補強や河川改修が必要になります。この他にハード面の対策では、治水ダムの検討や流域家屋のかさ上げなどもあります。 堤防を高く、強くしたり、河川を浚渫したりすることで許容設計流量を増やす土木技術自体に問題はありません。技術以上に問題なのは、すべての河川の改修を実施することが時間的にも予算的にも不可能な中で、いつ、どこで次の氾濫が起きるかを予測することが難しいことです。更に地域住民の合意形成という壁もあります。「いつ起きるか分からない河川氾濫のための堤防改修より市民ホールを作って」といった声が出ることは珍しくありません。どこまで守るか 国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が5、6年ごとに出す報告書で、海面上昇の適応策を、①防護、②順応、③撤退に3分類していますが、河川氾濫の適応策にも当てはまります。①の防護とは、堤防改修や河川の浚渫などで被害を防ぎ、何があっても人命と資産を守ることです。インド洋のモリディブのマレ島が日本のODAによりコンクリートの防波堤で島を囲み、20万人以上もの犠牲者を出した2004年のインド洋大津波でも死者が1人も出なかった例が挙げられます。②の順応とは、ある程度の被害は許容するが人命は守ること。具体的には建物を高くし、避難タワーを作ることなどです。東南アジアの高床式住居などもこれに当たります。③の撤退は、その土地をあきらめて移住することです。私が研究する南太平洋上のツバルでも一部の住民が既にニュージーランドに移住しました。東日本大震災後の復興でも他地域や高台へ移住する選択をした地域があります。 これらの適応策のどれを選択するかも大きな難問です。基本的にどこに住むかは人の自由ですし、将来予測の不確実性もあって悩ましい選択なのです。氾濫に備えるために 国や自治体の対策とは別に、河川氾濫に備えて一般市民が心掛けることで大事なことは、正しい情報を得られる手段を確保し、信頼できるメディアやウェブサイトなどを知っておくことです。ツイッターやラインで広まる情報をそのまま鵜呑みにしないで、自分でその情報の裏を取ることが必要です。避難の判断材料を間違えたら重大な結果につながります。更に自戒を込めてですが、避難判断のハードルを下げる必要もあります。ほんの短い時間の躊躇が後悔に変わる可能性があることを肝に銘じましょう。2020年7月4日、球磨川が氾濫し水に浸かった熊本県人吉市=毎日新聞社提供08November, 2020 | No.90 | FLOW■ 「沈む危機」ツバルのリアル ■海面上昇より深刻な環境汚染 温暖化による海面上昇で「沈みゆく島国」と注目を集める南太平洋のツバルは私の主要な研究フィールドで、フィールドワークで毎年のように訪れてきました。1万人弱の国民が環礁やサンゴ礁の9つの島に暮らします。確かに地球の海面が50年で80㎝以上上昇すると予想されていますが、現地の人で危機感を口にする人はあまりいません。外交戦略として危機をアピールして国際的援助を取り込もうという側面も少なからず見え隠れします。現実には人口密集による環境汚染と持続的な淡水資源の確保といったローカルな問題も危機的なのです。2007年に初めて訪れツバルで海面上昇の測量をする佐藤准教授(手前)た時には豊かなサンゴ礁で海の中を歩くのにも苦労したのに、最近では汚染の影響かサンゴが消えています。ごみ処理施設や下水処理施設がなく、海の汚染が進んでいるのです。生活用水は比重の差によって地下にたまる淡水層「ウォーターレンズ」を使っていましたが、海面上昇の影響で塩水が混ざり使えなくなっています。今はタンクに雨水を貯めるしかないのです。 実はサンゴでできた島ですから、海面上昇してもそれに呼応してサンゴが成長していけばそれほど大きな影響がでないことも考えられます。ただし環境汚染でサンゴの成長が海面上昇のスピードに追い付けなければ危機的状況に陥ります。今、島がどのような状態であるのか情報を蓄積する必要がありますが、私は現在、ドローンによる航空写真と機械学習を用いた海岸の効率的なモニタリング手法の開発にも取り組んでいます。~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・22016914522515614023018611015710318825119029515611225613115894177331275244206173182356193238194254169209275282237237207257251269050100150200250300350400197619811986199119962001200620112016(回/年)約1.4倍1976~1985平均174回2009~2018平均239回=国土交通省「水害レポート2019」より■1時間降水量50mm以上の年間発生回数 (アメダス1,000地点あたり)ちゅうちょうしゅんせつJOSHO TOPICSラグビー部は11月1日、東大阪市花園ラグビー場で開かれた「第100回全国高校ラグビーフットボール大会」大阪府予選第3地区の決勝に出場。同志社香里高に47-7で圧勝し、6年連続39回目の全国大会出場を決めました。序盤に先制点を許すも辛抱強く前に出続け、徐々に試合を支配。前半2本、後半5本のトライを決め、点差を広げました。木戸大士郎主将(3年)は、「前半は競ると思っていました。速い相手にどう戦うかを考え、話し合ってきたので、落ち着いて対処することができました」と振り返り、「自分たちのラグビーを全うし、全国制覇を果たしたい」と力強く語りました。今年度はコロナ禍の影響で公式戦や練習試合が少なく、恒例の長野県菅平高原での夏合宿も中止になるなど、十分な練習が出来ない状況でしたが、心掛けてきた「考えて行動すること」が勝利に結びつきました。全国大会は、12月5日に組み合わせ抽選会が行われ、12月27日~2021年1月9日に開催されます。100回の節目の大会に、伝統校として6度目の全国優勝と花園100勝に挑みます。常翔学園高ラグビー部が大阪府予選を突破 全国大会出場へ100回という記念すべき大会に闘志を燃やす選手ら摂南大は5年後の創立50周年に向け更なる発展と成長を目指すための将来構想をまとめました。「既設学部改組」「新学部設置」「収容定員増」「キャンパス整備」を2025年までの最重点事業とし、規模の拡大による競争力強化と経営基盤の安定化、ブランド力の向上を図ります。2022年4月に外国語学部および経営学部を社会的二ーズに沿った人材を育成する学部として改組・再編し、収容定員増も行うとともに、2023年4月には、第9学部として「現代社会学部(仮称)」を設置する計画です。■ 国際学部の設置(構想中) グローバル人材育成の社会的ニーズに応えるため、外国語学部を「国際学部」として、ボーダーレス化が進む世界におけるさまざまな課題について解決策を見出し、果敢に行動できる人材を育成する学部へと改組します。収容定員は890人から1010人とし120人増員します。■ 経営学部の改組(構想中)IoT、A I(人工知能)の登場によって、ビックデータを分析・活用できるビジネスパーソンのニーズは年々高まっています。こうしたICT時代の二―ズに即応した学部へと改組するため、現行の2学科構成から1学科に統合・再編し、経営学と情報学の知識・スキルをバランスよく身につけた人材を育成します。収容定員は現行の2学科1096人から1学科1132人と36人増員します。■ 現代社会学部 (仮称)の設置(構想中)社会学を中心に「情報」「メディア」「心理」「スポーツ」などの分野を複合的に学べる構成とし、寝屋川キャンパスに設置。入学定員は250人(収容定員1000人)程度で、学びのスタイルがすべてアクティブ・ラーニングとなることを教育の特色としています。摂南大 創立50周年に向けての将来構想がまとまる 2023年、現代社会学部(仮称)の設置構想も■将来構想計画(スケジュール)広島国際大は、男子プロバスケットボールB.LEAGUE B1所属の広島ドラゴンフライズの選手を健康面でサポートする連携事業を開始しました。1回目の取り組みは9月15日に行われ、午前は管理栄養士の資格を持つ教員がチームの練習会場を訪問し、選手らの食事内容を聞き取り、メニューに含まれる栄養素を解説するとともに、アスリートの栄養補給に効果的な食事について助言。また、田中秀樹健康科学部長が睡眠学の見地から、身体に負担が掛かるため平日と休日の起床時間の差は2時間以内が望ましいと指導するなど、睡眠とパフォーマンスの相関性について説明しました。午後は同大呉キャンパスのスポーツラボで、選手らの部位別筋肉量や骨密度、ヘモグロビン推定値などを測定。得られたデータは日々のトレーニングや食事改善に役立てます。当日は、スポーツ栄養学に関心のある医療栄養学科の学生2人が測定などを補助。「実践的な学びの機会となり有意義な1日でした」と振り返りました。同学科ではこの取り組みを通じて「スポーツ栄養学」を新たな柱に学生参加型の学びを展開します。プロバスケットボール選手を健康面から支える連携事業がスタート体成分分析装置で、選手の部位別筋肉量などを測定する学生(左)16November, 2020 | No.90 | FLOW
元のページ ../index.html#10