常翔学園FLOW88号
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ニューウェーブ教育・研究青年期に育児の協働の意義を学ぶ機会を 小泉進次郎環境大臣の「育休宣言」が話題を呼びました。しかし、日本の男性の育児休業取得率は2018年でも6%に過ぎず、女性の82%とは大きな隔たりがあります。 育休を取得した男性の約2割が職場での嫌がらせなど「パタニティ・ハラスメント」を受けている実態も連合の調査(2019年)で明らかになったように、男性の育児・家事への日本社会の理解は進んでいません。家族看護や小児看護を研究する広島国際大医療福祉学科の梅田弘子講師は、「未来の育メン育成プログラムの構築と拠点形成に関する研究」(2012~14年度科研費)などで、大学生主体の育メン育成プログラムの構築・運営に取り組みました。育メンを増やし男性の育児への社会の理解を進めるための課題を、梅田講師に聞きました。「育women」という言葉はない まず「育メン」という言葉ですが、私は個人的には好きではありません。そもそも「育women」という言葉は存在しません。それだけ女性が育児をするのは当たり前という価値観が社会に染みついているのです。ただ、人々の価値観を転換し行動変容を促すために、当面はこの言葉も必要だと認識しています。 私は看護職でかつて岡山の病院で小児病棟に勤務していましたが、子どもの入院に付き添うのは決まって母親でした。母親の負担は想像を絶するものがありました。小児看護師としてその母親の負担や夫婦の協力体制の低さが、それを目の当たりにする子どもの成長発達にも影響するのではないかと漠然と気になっていました。私自身も娘が生後9カ月の時に仕事を再開し、子育てをしながら共働き生活を送り現在に至っています。夫は理想的な育メンですが、それでも子どもの病気や入院、自身の体調不良で子育てと仕事の両立に何度も挫折しそうになった経験があります。そこで2011年に広島国際大に着任後、育メン育成に関する研究をスタートさせました。分担を夫婦で話し合うことこそ重要 「育メン」について、厚生労働省は「子育てを楽しみ、自分自身も成長する男性のこと」と定義しています。何をどこまでやったら育メンなのか、を決めるのは難しいです。私は、万が一夫婦のどちらかが急に育児ができない状況になったとしても、もう一方が子育てを、責任をもってやっていけるくらい、子どもの衣・食・住・発達の支援ができることが大切だと考えます。これらは、発育・発達の変化がめまぐるしい子どもの特性を考慮すると、簡単なことではありません。もちろん、一人でという意味ではなく、社会資源等のさまざまな助けを得ながら子どもの成長発達を親として支えるという責任を果たしていく覚悟と行動力が育メンには必要なのです。 かつて週刊誌AERA(2016年5月30日号)が特集で、「共働きの家事育児100タスク表」というのを掲載したことがありますが、家事・育児を“見える化”すると、たくさんのタスクがあります。そのことを正しく認識し、夫婦で話し合ってどのようにタスクを分担するかなど協働の方法を共に考えているかが非常に重要です。単純に「おむつ交換ができる」とか「夜泣きの対応ができる」とかで育メン度合いを測ることは適切ではありません。 米国生まれの「コ・ペアレンティング」(共同育児)という概念があります。もともとは離婚した夫婦の子どもの養育の仕方を考えることから生まれたものです。「父親・母親・子どもの三者の関係性において、子育てについて夫婦が情報共有・相談・調整・分担を行い、それに了解をして、相互補完的に互いに思いやりをもって物事を行い全体を共有していくこと」を指します。 私の行った乳幼児を育てる共働き夫婦ペア対象の研究結果からでも、生活の実態として、育児行動が圧倒的に妻に偏っており、育児と仕事の両立で妻が身体的にも精神的にも過酷な状況にあることが明らかとなりました。夫は、妻の負担について認識はしているものの、長時間労働で子どもや家族と過ごす時間が少ないことに困っているとの訴えが多く、妻に比べて育児行動が圧倒的に少ないためか、子どもの世話に関する困りごとの報告は少なく=表、夫婦の育児の協働に関する評価は、妻よりも「協働できている」と認識していました。夫婦がフルタイムの共働きで、同じ家庭で子育てに当たっていても、夫と妻では子育てへの関与や育児の協働について認識・行動共にかなり違いがあるということです。特に育児の初期段階における夫の関与がその後の育児参画の質や量に影05FLOW | No.88 | June, 2020育メン育成に根強い壁男性だけでなく女性も含めた社会全体に育児協働の価値観を広島国際大学 健康科学部医療福祉学科梅田 弘子 講師うめだ・ひろこ ■ 2000年愛媛大学医学部看護学科卒。2002年茨城大学大学院教育学研究科養護教育専攻修士課程修了。2020年広島国際大学大学院看護学研究科博士後期課程修了。川崎医科大学附属病院等で小児科・小児外科病棟看護師、青森中央短期大学看護学科助教、青森県立保健大学健康科学部看護学科講師などを経て、2011年広島国際大学看護学部看護学科講師。2018年同医療福祉学部医療福祉学科講師。2020年から現職。保健師。博士(看護学)。広島県出身。育メン育成に高い壁男性だけでなく女性も含めた社会全体に育児協働の価値観を学園は今春教育系147人、事務系23人、合わせて170人の職員を大阪、広島の両地区に迎えました。皆さんのプロフィルを紹介します(掲載欄に日付の表記がない場合、いずれも4月1日付採用)。専攻分野:マス・コミュニケーション論主な職歴:毎日放送客員教授学長付岩井 正也いわい・まさや専攻分野:建築設計特任准教授建築学科藤井 伸介ふじい・しんすけ専攻分野:宇宙技術、ロボット技術主な職歴:川崎重工業宇宙開発部長客員教授機械工学科荻本 健二おぎもと・けんじ専攻分野:再生可能エネルギー、スマートグリッド特任講師電気電子システム工学科又吉 秀仁またよし・ひでひと専攻分野:超高速光学現象、光物性特任講師一般教育科長谷川 尊之はせがわ・たかゆき専攻分野:生化学、光生物学主な職歴:産業技術総合研究所首席研究員客員教授生命工学科近江谷 克裕おおみや・よしひろ専攻分野:英文学、ユートピアニズム特任講師総合人間学系教室清川 祥恵きよかわ・さちえ専攻分野:プロダクトデザイン特任技師ロボティクス&デザイン工学部倉田 晃希くらた・こうき専攻分野:制御工学、ロボット工学特任准教授ロボット工学科姜 長安じゃん・ちゃんあん専攻分野:機械学習、画像処理特任准教授システムデザイン工学科瀬尾 昌孝せお・まさたか専攻分野:バイリンガル教育、日系移民史特任講師ロボット工学科横山 香奈よこやま・かな専攻分野:経済学、施工管理主な職歴:大工職客員准教授空間デザイン学科オト ザイラー専攻分野:建築・インテリア・都市デザイン論、デザイン・マネージメント論主な職歴:デザイン設計事務所(ニューヨーク)プリンシパル客員准教授空間デザイン学科瀧浦 浩たきうら・ゆたか専攻分野:UXデザイン、インタフェースデザイン特任教授空間デザイン学科益岡 了ますおか・りょう専攻分野:情報学フロンティア、データサイエンス主な職歴:情報通信研究機構イノベーションプロデューサー客員准教授情報科学部今井 弘二いまい・こうじ専攻分野:教育工学、学習環境デザイン主な職歴:同志社女子大学教授客員教授情報科学部上田 信行うえだ・のぶゆき専攻分野:数理物理学、素粒子理論物理学特任教授情報知能学科藤 博之ふじ・ひろゆき専攻分野:離散数学特任講師情報システム学科地嵜 頌子ちさき・しょうこ専攻分野:画像処理、複合現実感特任准教授情報メディア学科河合 紀彦かわい・のりひこ専攻分野:知的財産法、特許・意匠実務特任教授知的財産学科土谷 和之つちや・かずゆき専攻分野:情報ネットワーク、社会システム工学特任准教授ネットワークデザイン学科樫原 茂かしはら・しげる専攻分野:英語教育、スポーツ健康科学特任助教ランゲージラーニングセンター橘 未都たちばな・みさと専攻分野:機械工学特任技師ものづくりセンター上山 健司うえやま・けんじ専攻分野:電子工学特任技師ロボティクス&デザインセンター武本 正たけもと・まさし専攻分野:ポピュラー音楽、アメリカ文化史講師外国語学科永冨 真梨ながとみ・まり専攻分野:文化人類学、インドネシア地域研究特任准教授外国語学科金子 正徳かねこ・まさのり専攻分野:人文地理学特任講師外国語学科小林 基こばやし・はじめ専攻分野:会計学講師経営学科伊瀨 堂人いせ・たかと専攻分野:薬物動態学、生物薬剤学准教授薬学科高木 敏英たかぎ・としひで専攻分野:分子生物学、ケミカルバイオロジー特任助教薬学科喜多 絢海きた・あやみ専攻分野:臨床薬学准教授薬学科田中 雅幸たなか・まさゆき専攻分野:園芸学特任技師薬学科上野 真生うえの・まお専攻分野:民事法、和解・調停・ADR特任教授法律学科田中 敦たなか・あつし専攻分野:行政法、憲法特任講師法律学科笛木 淳ふえき・じゅん専攻分野:母性看護学、助産学教授看護学科井田 歩美いだ・あゆみ専攻分野:国際金融講師経済学科羅 鵬飛ら・ほうひ専攻分野:医学(脳神経外科)、病態生理(基礎、臨床)特任教授看護学科柳本 広二やなもと・ひろじ特任技師農学部付後藤 和則ごとう・かずのり専攻分野:農学(作物分野)特任技師農学部付下田 武蔵しもだ・むさし専攻分野:生体高分子学特任助教生命科学科川端 隆かわばた・たかし専攻分野:住環境マネジメント講師住環境デザイン学科山根 聡子やまね・さとこ専攻分野:情報工学、マルチエージェントシステム准教授電気電子工学科金澤 尚史かなざわ・たかふみ専攻分野:機能言語学准教授外国語学科船本 弘史ふなもと・ひろし教育系職員教育系職員新採用者紹介GAKUEN NEWS《6月1日付》13FLOW | No.88 | June, 2020大阪工業大学摂南大学

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