02February, 2020 | No.87 | FLOW社是「考えよ」の各国語のボードを背に 入社3年ほどのスキルもない新人には、大銀行の当時最先端のシステムを扱うチームは荷が重かったです。保守などの仕事は目立たたず日の当たらない仕事とも言えますが、一から懸命に勉強しました。やがて、時間を惜しまず真面目に仕事をして、銀行の方々とも誠実に話をする姿が評価されたようで、「システムエンジニア(SE)になってみたら」と上司に誘われて次のステップへの道が開けました。 社長就任後に、当時一緒に仕事をして仲良くなった銀行の人たちの多くが集まって祝いの宴を開いてくれました。「あの山口っちゃんが社長になるなんて、これっぽっちも思わなかった」と言われたと笑いますが、いかに若いころからクライアントに好かれて人望があったかが分かるエピソードです。日本社会のデジタル変革を その後は、入社13年で社長室にできた経営企画のスタッフに抜てきされると、社内での評価の上昇とともに経営の中枢を歩むように。 2年半ほどして現場に戻り、初めて部下が50人ほどの部長を任されました。金融機関のITインフラ担当部署です。その後、ソフトウエア製品販売をサポートするシステムエンジニア部隊を束ねる部長になり、一気に部下が450人になりました。 2005年に米国IBMの役員補佐を経て、2007年以降は日本IBMでグローバル・ビジネス・サービス事業を担当。コンサルティングやシステム構築などでクライアントの企業変革をサポートする事業です。この10年余りで理事、執行役員、常務、専務を経て2017年に取締役専務執行役員と会社経営の中枢を駆け上がるとともに、米国IBM本社の経営執行委員の1人になりました。 米国の役員補佐になった時は、TOEICでは730点くらいはありましたが、まともに英語は話せませんでした。英語が普通に話せるようになったのは数年前からですよ。取締役会は英語ですし、今では1日の会話の半分は英語です。ビジネスがボーダーレスの時代に、英語はどうしても必要です。最初はコミュニケーションの効率が落ちますが、そこから逃げてはいけないと思います。外国人に限らずさまざまな人たちのいる環境やダイバーシティー(多様性)の中に身を置くことは、いろんな価値に気付かされて自分を成長させます。 社長就任後に「あらゆる枠を超える」を新たなビジョンに掲げ、① 日本社会のデジタル変革の推進② 量子コンピューターや砂粒のような極小のコンピューターなどを使った新しいビジネスの開発③ 不足するIT・AI人材の育成や若い人へのAI教育などの社会貢献、などの重点的な取り組みを進めようとしています。また、社内的には社員が前向きに働ける環境を実現することに積極的で、社員の両親や祖父母を職場に招待する「Appreciation Day(感謝の日)」も新設し1000人が訪れました。社内保育所や夏休み中の社員の子供を預かりプログラミング教育などをする学童クラブなども進めています。 1人称で考えることの大切さ 人材育成に熱心な山口社長には、学生に求めたい資質や大学に求めたい教育があります。 学生は学んで、考えて、経験することが大事です。最近の新入社員にはいわゆる「優等生」が多く、「会社の期待値は何でしょうか」と聞いてきます。子供の時は親の期待に応えて、社会人になれば会社の期待に応えるだけでは自分がないですね。考えて考え抜いて初めて自分の立ち位置が出てくる。自分の意見や意思を明確にできたら、お客様にしっかり対応することもできます。AIのアウトプットが本当に正しいかどうかも自分が成長しないと判断できないこともあります。また、大学には今のマーケティングと同じようなきめ細かな教育を求めたいです。学生のレベルや得意分野はさまざまです。これからは同じことを多くの学生に講義する「マス」の教育ではなく、学生一人一人に違う教育を提供する環境やカリキュラムが必要だと思います。日本IBMでは全社員一人一人に1週間ごとに「今のあなたのスキル、仕事内容、世の中の変化から、受けた方がいい研修は…」といったアドバイスが来ます。 最後に後輩たちへのエールをお願いしました。 『私はこう思う』という1人称で考える癖をつけてください。誰かが言っていた、教科書やネットに書いてあったではなくて、自分がどう思うかが大事です。間違っていてもいいのです。素直に話を聞いて間違っていると思ったら直せばいい。それで成長できます。 日本IBM(2020年1月1日時点)=設立1937年。本社は東京都中央区日本橋箱崎町19番21号。資本金1053億円。売上高9053億円。事業内容は情報システムにかかわる製品、サービスの提供。社是は「THINK(考えよ)」。1964年の東京オリンピックではリアルタイム・オンライン競技速報システムを構築しその後の日本のオンライン化の契機に。ニューウェーブ教育・研究日米開戦 痛恨の教訓正確な情報から不合理な選択エリートの失敗に迫る梶井 里恵 客員講師広島国際大学 医療栄養学部医療栄養学科学生時代のノートを見ながら当時の勉強の仕方について話す伊藤さん手描き教育の良さを語る寺地教授変わらぬ風景姿を消していった計算尺と受け継がれる手描き設計演習 学園創立100周年に向けた連載企画の第3回は、学生の学びの風景の変遷に焦点を当てます。1922(大正11)年に設立された学園の起源の関西工学専修学校は、大阪の都市づくりを担う技術者養成が第一の目的だったこともあり、建築科と土木科の2科でスタートしました。学園の原点でもある建築教育ですが、その建築を学ぶ学生の学び方や学びの道具に当時と今では、当然大きな違いがあります。ただ一方で、100年近くたっても変わらない風景も残っています。 常翔歴史館の入り口近くに、卒業生から寄贈された計算尺と製図道具が展示されています。今回はこの2つのモノから建築科の学生らの学びの風景の今昔を大阪工大建築学科を1962年に卒業した伊藤孝さんと建築学科学科長の寺地洋之教授に貴重なお話を聞かせていただきながら眺めていきます。26February, 2020 | No.87 | FLOW 学園は、広報誌FLOWを年4回発行しています。卒業生の皆様に学園や設置各学校の動きをお伝えするため、年2回(8月号・今号)の発行号をお届けしています。右のQRコードからアクセスまたは【学校法人常翔学園】FLOW公式チャンネルで検索ください。「チャンネル登録」していただくと最新の動画情報をお届けします。※通信料が掛かります。機種などによっては正常に再生しない場合があります。常翔学園HPにも動画を掲載しています。常翔学園のキャンパスでキラリと輝く学生たちを紹介。常翔学園の設置学校で学ぶ留学生を紹介。 1941(昭和16)年12月から3年9カ月に及び膨大な犠牲者を出した太平洋戦争には、「不合理な軍が始めた無謀な戦争」というイメージが定着しています。しかし、戦前に他ならぬその陸軍が一流の経済学者を集めて組織した研究班「秋丸機関」は、日米間の経済力の隔絶を指摘した冷静な報告書を出していました。 摂南大経済学部の牧野邦昭准教授は、長らく軍が焼却処分したと信じられてきたその「幻の報告書」など新資料を次々に“発見”。更に「正しい情報がありながら、なぜ不合理な開戦を決定したのか」を新たな視点で鮮やかに分析した『経済学者たちの日米開戦 秋丸機関「幻の報告書」の謎を解く』(新潮選書)で、高い評価を受けました。昨年の読売・吉野作造賞も受賞したその著書と研究について聞きました。牧野 邦昭 准教授摂南大学 経済学部経済学科YouTubeで動画配信中!キラリ*Josho note page30 YouTubeで動画配信中!合唱部常翔学園中学・高校調和のとれたハーモニーで、メロディーだけでなく歌詞と想いも届けたいVIVID CLUB 9月の文化祭では、生き生きとした歌声で会場を魅了した常翔学園中高合唱部。ハーモニーだけでなく歌詞を届けてこそ観客を魅了できるという考えのもと、練習に励んでいます。ナビラ・アデリン・ビンティ・ズルキフリ さんNabilah Adlin Binti ZULKIFLI広島国際大学 リハビリテーション支援学科2年日本の義肢装具の技術をマレーシアに持ち帰り障がい者の役に立ちたい YouTube【学校法人常翔学園】FLOW公式チャンネルでFLOWの記事を動画で楽しめます。大阪工業大学 コンピュータ科学科2年繁戸 芙紀子 さん地震体験を防災アプリ開発にしげと・ふきこ広島国際大学 大学院医療工学専攻博士前期課程1年核医学検査の質向上目指すはしもと・れい橋本 澪 さんマレーシア「常翔年“モノ”語り」学園センテニアル企画centennial3学びの風景の今昔TOKYO OLYMPIC オリンピック代表選手らトップアスリートが何を食べるかは、栄養学という科学の目で見られるようになっています。栄養管理も選手らのパフォーマンスに大きく影響するからです。 管理栄養士・栄養士の役割が大いに注目され、2008年からは日本栄養士会と日本スポーツ協会の共同認定による「公認スポーツ栄養士」の資格制度がスタート。スポーツ栄養士としてさまざまなアスリートの栄養サポートに従事し、9月から広島国際大医療栄養学科でスポーツ栄養学を教える梶井里恵客員講師に、スポーツ栄養士の仕事の面白さや難しさについて聞きました。アスリートを食で支え結果を求められるスポーツ栄養士の仕事
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