03FLOW | No.87 | February, 2020巻頭特集今春、学園全体で約5500人が卒業・修了し、それぞれが選んだ道を歩み始めます。新たな世界に羽ばたいていく先輩から後輩たちへ心からの「エール」を送ってもらいました。 「化学で何か形のあるものを作り出したい」と大阪工大応用化学科に入学した井上さんは、次世代燃料電池の電解質の研究でオリジナルな新材料を作り出す大きな成果を得ました。就活で業種への先入観を捨てて内定を得たグンゼでは、「どんな職種にもチャレンジしたい」と持ち前の探求心を生かそうと前向きです。 子供のころからそろばんを習っていたこともあり計算が得意で、奈良の高校では理数科に進学した井上さん。理系科目の中でも特に化学に対して苦手意識がなく、「化学が自分に向いているのかなと思うようになりました」と振り返ります。大学の進路を考えた時には、理論的なことより化学を使って形のあるものを作る工学的な勉強をしたいと大阪工大の応用化学科を選びました。 無機化学の研究室で取り組んだのが、燃料の化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する燃料電池の研究です。その中でも、燃料極と空気極を隔て電池の運転温度や特徴の決め手となる電解質の新素材の開発に打ち込みました。炭酸カリウムなどから合成した「トンネル型の結晶構造を持つ素材」を改善し、それを解析したところ、室温から摂氏500度までの幅広い温度域で安定した熱に強い構造であることが判明。低コストで合成も簡単という可能性の大きな素材で「世界的にも独自性がある」と注目されています。「昔の文献に同じような素材の記述はあるのですが、どんな特徴があるのか詳しい研究はなくて、自分で元素の種類を変えたりしてはX線などで解析するという根気のいる作業の繰り返しでした」と話します。 研究とともに井上さんが打ち込んできたのが高校時代から同級生と続けてきたバンド活動です。幼少のころにピアノを習っていたことがきっかけでキーボードを担当。作曲や編曲もこなします。ポップス系で最初はコピーバンドでしたが、高校卒業後はオリジナル楽曲も演奏しています。「忙しくても毎週1回は集まり、気が付けばこの生活を6年以上続けています。仲間と議論しながら進める曲作りには正解がなく、研究とは違った魅力です。社会人になってもバンド活動はできるだけ続けたいですね」と話します。 就活では当初苦戦が続きました。自分の専門への思い込みもあり、製薬業界に絞っていましたがなかなかうまくいかず、「気が付くと多くの企業がエントリーの受付を終了する時期も近付き、焦りが出てきました」と振り返ります。そこで井上さんは、一度思い込みを捨てて業界を広げることに。繊維業界も視野に入れてグンゼにもエントリーしたところ、最終面接から2週間で内定が出ました。「内定が出て周囲の人たちの反応からグンゼという会社の大きさに改めて気が付きました」。研究職などにこだわらず、営業や開発などさまざまな職種にチャレンジしたいとアピールしたのが良い結果につながったのではと言います。 春からは工場の生産効率アップなどを担当する生産技術部門に配属予定の井上さん。「会社ではいろんな仕事を経験し知識も増やし力を付けたい」と抱負を語ります。先入観を捨てて大きなチャンスをつかんだ井上さんだけに、後輩たちには「私と同じように漠然とした思いのまま就活を続ける学生は多いはずです。でも分からないことがチャンスと考え、広い視野で未知の分野にもチャレンジしてください」とエールを送ります。応用化学科の実験室で燃料電池の新素材の構造を解析する井上さん燃料電池の新素材を探求先入観を捨て就活に道井上 雄太さんグンゼ 内定大阪工業大学 応用化学科4年 いのうえ・ゆうた2020新卒生からの「エール」23FLOW | No.87 | February, 2020三好 章弘 みよし・あきひろ嘱託職員(事務職員)■事務系職員所属:施設部施設課GAKUEN NEWS●87年4月摂南大学講師。助教授を経て99年4月教授。学生部長、副学長を務める。19年11月学事顧問。工学博士 京都大学。八木 俊策(やぎ・しゅんさく)●プロフィルは顧問に紹介。八木 紀一郎(やぎ・きいちろう)■ 名誉教授 学園は11月1日付で摂南大の2教授に名誉教授の称号を授与しました。■ 新採用者紹介 学園は1月1日付で事務系職員を迎えました。■ 理事 学園は、西村貞一氏の理事辞任に伴い、寄附行為に基づき理事の欠員補充を実施。1月9日開催の理事会で大阪工大建築学科特任教授の西村泰志氏を選任しました。 任期は1月10日~7月19日。西村 泰志(にしむら・やすし)<新>●大阪工業大学建築学科卒。同大学院工学研究科修士課程修了。76年4月大阪工業大学工学部助手。講師、助教授を経て99年4月教授。学生部長、工学部長兼大学院工学研究科長などを経て15年11月から19年10月学長。博士(工学)京都大学。■ 顧問 学園は寄附行為に基づき、2019年11月19日開催の理事会で摂南大前学長の八木紀一郎氏を顧問に選任しました。 任期は2019年12月1日~2020年11月30日。八木 紀一郎(やぎ・きいちろう)<新>●名古屋大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学。京都大学経済学部長、同大学院経済学研究科長などを経て、10年4月摂南大学経済学部教授、同学部長。副学長を経て、15年11月から19年10月学長。経済学博士 京都大学。12月28日、常翔啓光学園高の軽音楽部が「第40回記念大会We are Sneaker Ages グランプリ大会」に5年ぶり3度目の出場を果たし、松村百花さん(2年)がオープニングで出場校を代表して宣誓を行いました。本大会は軽音楽系クラブのコンテストで、歌唱力や演奏技術だけでなくチームの応援団の創意工夫も審査対象となります。同部が披露したのは、全米を代表するロックバンド「BON JOVI(ボン・ジョヴィ)」の「Born To Be My Baby」。低音の響きが特徴的な曲です。メンバーは原曲の世界観を表現するため、音の重厚感を意識しながら演奏するとともに、ダイナミックなパフォーマンスを行いました。また、応援団はペンライトやポンポンを使い一糸乱れぬ振付でステージを盛り上げました。応援団長としても部を牽引した部長の柴田侑紀穂さん(同)は「大会が終わった後は大きな達成感に包まれました」と笑顔で振り返ります。現在同部は、毎年6月に開催される「全国高校軽音フェスティバル」の本選出場を目標に、演奏曲やメンバーの構想を練りながら日々の練習に励んでいます。常翔啓光学園高 軽音楽部が5年ぶり3度目の大舞台に広島国際大は、骨髄や末梢血幹細胞を提供するため授業を休む学生の公欠制度を2019年10月から導入しました。骨髄等の提供は入院や事前・術後の検査などで複数日を要しますが、これを公欠として認めます。全国で公欠制度がある大学は数校しかなく、広島県内では初となります。同大では学生による骨髄ドナーバンク登録推進団体「しずく」が2011年に発足し、学内外で啓発活動や登録会の開催、説明員のボランティアなどを行っています。2013年には活動内容が評価され、同県から感謝状を受けました。今回の公欠制度導入は、しずくの活動実績と日本骨髄バンクからの提案を受けて決定したものです。同大では若いドナーが骨髄を提供しやすい環境を整え、骨髄移植の普及啓発に貢献します。摂南大外国語学科1年の木村佳乃さんが、第37回全日本中国語スピーチコンテスト全国大会の「朗読部門」大学生・大学院生の部で、優秀賞を受賞しました。同大会は、中国語学習の普及と質の向上を目指し、日中両国民の相互理解を深めることを目的に開催され、各都道府県大会での優勝者が出場できます。木村さんは1月12日に開催された全国大会で朗読を披露。「大きな舞台でたくさんの人を前にとても緊張しましたが、1つの自信となりました。何かに挑戦し努力する経験が自分の財産になるのだと身をもって学びました」と振り返ります。来年は同大会の「スピーチ部門」での入賞を目指してまい進します。広島国際大 県内で初 骨髄ドナーの学生を公欠扱いにJOSHO TOPICSドナー登録の推進に尽力する「しずく」メンバー木村さんが全日本中国語スピーチコンテスト全国大会で優秀賞受賞中国の故事を朗読し優秀賞を受賞した木村さんステージ上で熱いパフォーマンスを繰り広げたメンバーら(写真=産経新聞社提供)
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