11FLOW | No.87 | February, 2020 田熊准教授らの研究チームは、体の中心である体幹を関節のある柔軟な構造にすることで、2足歩行や4足歩行を自由に切り替えられるロボットの開発を目指しています。従来のロボットの体幹は大半が柔軟性のない剛体です。しかし、動物の体幹である背骨には椎骨と椎骨の間に関節があり、人間の頭を支える時はS字状に曲がり、四足動物なら内臓を支えるために直線状もしくは凸状に湾曲しています。これまでの 社会の高齢化がどんどん進む日本では高齢者が要介護状態になることを防ぐ介護予防が、医療費の抑制の面からも促進が急務の国家的な課題です。老年看護学が専門の小川講師は、地域健康教室などの活動を通した研究で、外出時間の違いで手指の器用さの改善の程度が異なる結果に気が付きました。しかし、健康維持に必要な高齢者の外出行動や外出時間を客観的に評価する基準がないことで、それ以上の研究を進められず、壁に突き当たりました。そこで「それなら自分たちで作ればいい」とスタートさせたのが、「高齢者の健康を維持するために必要な外出行動基準の新規開発」です。大阪工大工学部総合人間学系教室健康体育研究室の中村友浩教授と西脇雅人講師と協力して進めています。「高齢者の外出行動を集団で調査してデータ収集をするとともに個人の記録を追跡し、高齢者の健康にどのような影響が出るかまで明らかにし、新基準開発につなげたい」と話します。 高齢者600人を対象に実施する調査は、腰の高さで固定して使用する身体活動量計などを使います。日中活動時間における1日の歩数や移動距離を測りながら、設問形式で買い物、通院、移動手段など行動の内容を1週間チェックします。さらに、ペグボードテスト(四角いボードに碁盤の目のように穴があり、そこに棒状のペグを差し込む)で認知機能などを計測。これらの調査結果を集積して複合的に評価・分析を行います。「外出時間が短くても、家で多くの人と会って会話をしていると認知機能が高いこともあります。思いがけないことが重要な要素であることも想定しておかないといけません」とあくまで科学的エビデンスを重視します。 調査では協力者を対象に健康教室などのセミナーを開催するなど、地域の高齢者の健康意識の高揚にも貢献します。「住み慣れた町で、その人らしく、より長く生活することを大切にしたい」と話す小川講師。地域包括ケアシステムが国の施策として推進される中、老年看護学の重要性が高まっています。高齢者とともに地域を見つめ、健康増進につながる研究を今後も継続していきます。摂南大学 看護学部 看護学科小川 宣子 講師動物を模した柔軟体幹で新次元のロボットを開発大阪工業大学工学部 電気電子システム工学科田熊 隆史 准教授■おがわ・のりこ 1992年大阪府立公衆衛生専門学校看護科卒。同年星ヶ丘厚生年金病院(現:星ヶ丘医療センター)看護師。2006年星ヶ丘厚生年金保健看護専門学校専任教員。この間2001年社会保険看護研修センター専門学校教員養成科管理専攻卒。2014年人間総合科学大学大学院人間総合科学研究科心身健康科学専攻修士課程修了。同年摂南大学看護学部看護学科特任助教。2016年から現職。大阪府出身。ペグボード身体活動量計外出行動のバロメーターを高齢者の健康維持と向き合う■たくま・たかし 2001年京都大学大学院情報学研究科システム科学専攻修士課程修了。2006年大阪大学大学院工学研究科知能・機能創成工学専攻博士後期課程単位取得退学。同大特任研究員を経て、2008年大阪工業大学工学部電気電子システム工学科講師。2013年から現職。博士(工学)大阪大学。滋賀県出身。風船への水の給排水で駆動するソフトロボットJOSHOFRONTIER研究最前線あおき・みのり 2007年生まれの長女、12年生まれの長男、19年生まれの次女の3児の母で、長男誕生後に趣味でおひるねアートを撮り始め、13年10月に日本おひるねアート協会を設立。「おひるねアートで世界中のママと赤ちゃんに笑顔を届けること」を目指す。子連れ出勤を実践し、「赤ちゃんと一緒に働ける」環境を提案。写真集「赤ちゃんのおひるねアート」(主婦の友社)、「おひるねアート」(宝島社)のほか、協会の公式本「おひるねアート撮影術」(小学館)が出版されている。日本テレビ「24時間テレビ」「ヒルナンデス」などメディアにも多数出演。思い出写真は赤ちゃんとの共同作業育児に悩むママに元気を届ける 「おひるねアート」を知っていますか。「赤ちゃんに背景や小物をつけて撮影する、赤ちゃんと一緒に作るアート写真」のことです。常翔学園の設置学校に在籍する学生、生徒、教職員が各界の“一流人”と語り合う「クロストーク」の第4回は、「日本おひるねアート協会」代表理事の青木水理さんがお相手。広島国際大看護学科2年で、親子の交流イベントなどを企画・運営するLCFプロジェクト=※=に携わる千々和未悠さんと松崎光紗さんが、「子供が泣かずにいい写真を撮るためのコツは?」「親にイベントを楽んでもらうには?」などと活動へのアドバイスを求めましたが、青木さんの答えは少し意外なものでした。左から千々和さん、青木さん、松崎さん。中央は青木さんの次女の明里ちゃん。(撮影協力:フォトスタジオ ツインリーフ帝塚山)15FLOW | No.87 | February, 202004日本おひるねアート協会代表理事青木 水理さんあおき・みのり広島国際大学 看護学科2年広島国際大学 看護学科2年千々和 未悠さんちぢわ・みゆ松崎 光紗さんまつさき・みさ
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