昔から大事な試合の前の「カツ丼」など食事でゲンを担ぐことはあらゆるスポーツでありました。しかし、近年選手らが何を食べるかは、栄養学という科学の目で見られるようになっています。オリンピック代表選手らトップアスリートが普段何を食べているのかということにも関心が高まっています。「アスリート飯」「勝ち飯」という言葉も定着し、インスタグラムでメニューが紹介されたりします。トレーニングとともに栄養管理も選手らのパフォーマンスに大きな影響を与えるからです。それとともに管理栄養士・栄養士の役割が大いに注目され、2008年からは日本栄養士会と日本スポーツ協会の共同認定による「公認スポーツ栄養士」の資格制度がスタートしました。スポーツ栄養士としてさまざまなアスリートの栄養サポートに従事し、9月からは広島国際大医療栄養学科でスポーツ栄養学の授業を担当している梶井里恵客員講師に、スポーツ栄養士の仕事の面白さや難しさについて聞きました。国立スポーツ科学センターの効果─なぜ「アスリート飯」が近年注目されるようになったのですか?梶井 2001年に発足した国立スポーツ科学センター(JISS)の影響が大きいです。日本のスポーツの国際競技力向上を目指してできた機関で、オリンピック選手の栄養サポートも担います。そのサポートで結果を出せた多くのトップ選手らが、ブログやインスタグラムなどさまざまなところでその効果を発信するようになって、それをメディアも取り上げ一気に注目されるようになりました。そのおかげでスポーツ栄養士の存在も一般に知られるようになりました。子供がスポーツをしている多くのお母さんたちは、どうやったら子供たちが大きく、強くなれるか情報源を求めています。サッカーや野球のトップ選手のアスリート飯を参考にするようになっています。─管理栄養士とスポーツ栄養士の仕事の大きな違いを教えてくだ さい。梶井 スポーツ栄養士は管理栄養士の資格がないとなれませんから、プラスアルファの資格です。もちろん仕事の中身は重なる部分も多いですが、大まかに言うと、管理栄養士の仕事は病気の予防や病気からの回復に重点がありますが、スポーツ栄養士の仕事は、スポーツ選手だけでなく人々をより健康に、元気にする仕事だと言えます。栄養のバランスの良さが大事─スポーツのパフォーマンスと栄養の関係の具体例を教えてくだ さい。梶井 どんなスポーツ競技でも共通して大切なことは、栄養のバランスが良い食事をすることです=図1。主食(エネルギー源)、主菜(体をつくる)、副菜(体の調子を整える)など、それぞれ体の中に入ってからの働きが違います。一般の人と違い、アスリートなら果物や乳製品も毎食摂った方がいいです。体を動かすエネルギー源は糖質で主食から得られますが、糖質をエネルギーに変えるのに他のビタミンなどの栄養素がかかわっています。つまり栄養素もチームプレイなのでバランスが大事なのです。 そのうえで競技ごとや選手ごとに重視される栄養素が異なるのは梶井 里恵 客員講師広島国際大学 医療栄養学部医療栄養学科アスリートを食で支え結果を求められるスポーツ栄養士の仕事かじい・りえ ■2007年川崎医療福祉大学医療技術学部臨床栄養学科卒。2009年同大学院医療技術学研究科臨床栄養学専攻修士課程修了。2009年~2014年同大助教。2015年「ごはんと運動ラボ」を立ち上げてスポーツ栄養学の啓発活動に従事。2019年8月から現職。川崎医療短期大学非常勤講師。川崎医療福祉大学非常勤講師。岡山県倉敷市のジュニア指定選手スポーツ医・科学支援事業の栄養部門担当スタッフ。公認スポーツ栄養士。岡山県出身。このコーナーは、2020東京オリンピック開催にちなんだ『Team常翔』による連続インタビュー企画です。07FLOW | No.86 | November, 2019図1=食事の役割page30キラリ*Josho note 今年4月、日本放射線技術学会主催の学術大会で、橋本さんは横浜みなとみらいホールに集まった数百人の聴衆を前に、同学会から勧められ英語による発表を行いました。もちろん、準備したパワーポイントの原稿もすべて英語です。研究が評価されての初めての学会発表でしたが、テーマは「ディープラーニングによるSPECT(スペクト)画像の超解像処理」。核医学検査の中の1つであるSPECT画像とは、放射線医薬品から放出される微量の放射線を体外の種々の方向から計測し、それを画像再構成して得られる放射線医薬品の分布の断層画像のことです。核医学検査は生体の機能や代謝を見るのに有効ですが、画像を鮮明にしようとすると放射線を増やさなければならず、患者の被ばく量が増えてしまうというジレンマがあります。被ばく量を抑えたうえで画質を落とさないようにするにはどうしたらよいか考え着目したのが、粗い画像を細かくきれいな画像にする超解像技術でした。「小さな星など天体観測の画像処理に使われるこの技術を、核医学検査に応用したことがこれまでになかったことで評価されたのだと思います」と話します。 超解像技術にはAIのディープラーニングが不可欠ですが、橋本さんは「コンピューターの知識はほとんど素人同然でした」と打ち明けます。プログラミングも一からの勉強でしたが、診療放射線学科大倉保彦教授による段階を踏んでの指導のおかげで、順調に習得。今は新たなプログラミングをしては動きを確認する試行錯誤の繰り返しです。「プログラムがやっと動いた時は、本当にすっきりします」。画像鮮明化を模索する日々が続きます。 橋本さんはもともと卒業すれば診療放射線技師として就職しようと考えていました。しかし、4年生の病院実習で、「就職するとなかなか研究の時間を取れそうにない」と感じたと言います。「それなら就職するまでに一度、じっくり研究に取り組んでみよう」と大学院進学を決めました。将来は核医学検査の技術や知識を生かせる大規模病院への就職を目指します。 「この研究が実を結べば、核医学検査の重要性がもっと高まり、多くの患者さんの助けになるはず」と確信する橋本さん。忍耐強く研究を続ける覚悟がキラリ輝いています。広島国際大学 大学院医療工学専攻博士前期課程1年核医学検査の質向上目指し橋本 澪 さんはしもと・れい天体観測技術を応用英語で学会デビュー15FLOW | No.86 | November, 2019
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