東西の“大学見本市”で注目存在感増す大阪工業大学の研究力連携でイノベーションを起こし、地域貢献の核に◆大阪工大の地域産業支援プラットフォーム(OIT-P)は2017年度の国の私立大学研究ブランディング事業にも選定され、モノづくり大阪の発展に寄与しています。今年度で国の支援は終了になりますが、これまでの手応えと今後の展開を教えてください。杉浦 大学がコアになって地域の産業を盛り立てる初のプロジェクトで、この3年間で研究発表や講演会などの活動をしてきました。一昨年コニカミノルタと共同開発して大ヒットした世界初の体臭チェッカー「クンクンボディ」に続く成果はこれからですが、これまでは助走期間、地ならしの期間で、今後は国の支援の手から自立してIoT機器の開発という視点でオープンイノベーションによる地域貢献を目指します。このプラットフォームの大きな特長は、本学が得意な知財戦略も含めている点です。中小や中堅企業の多くが、下請けを脱却して技術開発型の自立を目指していますが、そこでは知財の力がものを言います。本学と連携協定を結ぶりそな銀行や関西みらい銀行、大阪信用金庫を通じても、知財戦略や製品のデザイン指導で企業支援の取り組みが進んでいます。企業との絶好の出会いの場◆今年のイノベーション・ジャパンでは「大学等シーズ展示」で過去最多の22件が採択されました。全学的な取り組みの成果ですね。杉浦 採択数は出展大学で昨年は1位(13件)、今年は2位で、本学の存在感をアピールする場になっています。国の科学技術振興機構(JST)による厳しい選考を経たもので、本学の研究力の高さや多彩さを示す出展数です。毎年1万4000人以上もの来場者があり、新しいシーズを探す企業との絶好の出会いの場で、「クンクンボディ」もイノベーション・ジャパンでの出会いで生まれたものです。そのため学内向けには「無料で出展でき、企業と連携できるチャンスが高いイベント」としてPRしてきました。出展経験のある先生方に周りの研究者への声掛けもお願いし、研究支援・社会連携センターの5人のコーディネーターが展示ポスターをチェックし、より分かりやすくアピールできるように改善するアドバイスもしました。そんな努力もあって、情報科学部は昨年の1件から今年は4件と採択数が増えました。実は関西の複数の有力私大から「そんなに多く採択される秘訣を教えてほしい」と問い合わせがあるほどの反響です。◆今年で2回目となった「イノベーションデイズ2019“智と技術の見本市”」では、全学部・学科から200件を超える研究・技術シーズを一挙に公開しました。反響や今後の展開を教えてください。杉浦 ポスター展示だけでなく、小セミナ―、介護福祉機器の体験コーナー、ゲストスピーカーによるセミナー、本学教員らによるパネルディスカッション、女性研究者・技術者による特別セッション、知財・産学連携相談、八幡工学実験場見学ツアーなど、多彩なイベントになりました。2日間行った昨年と違い今年は1日だけの開催でしたが、ほぼ同数の来場者(516人)で、特に企業関係者が405人と産業界からの注目の高さがうかがえます。更に今年は事前に記者懇談会を開催し、選抜した先生方による研究のプレゼンテーションも実施しました。在阪メディア関係者が約30人も集まりました。大学発ベンチャーをサポート◆このほど大阪工大に大学発ベンチャー企業設立支援制度ができました。その狙いは何ですか?杉浦 現在、全国に大学発ベンチャーが約2300社ありますが、ベンチャー企業はイノベーションを起こす有力な手段になっています。学生発ベンチャーや企業とのジョイント・ベンチャーも含めて大阪工大ならではのベンチャーをサポートしようという狙いです。2030年度末に10社以上、総売り上げ10億円が目標です。事業プラン作成、市場・技術調査、知財戦略構築、ファイナンスなど多面的に大学がサポートします。本学の技術シーズや保有特許に加え、デザインや知財の知見の強みを生かしていきたいです。◆今後、イノベーションを生む研究をどう育て、どう生かしていきますか?杉浦 これからの研究は大学に閉じこもっているだけではなく、学外の企業などとの連携が世界の流れになっています。「イノベーションは連携から」です。そのためにジョイント・ベンチャーは有力な手段で、特許の活用も不可欠です。特許は取るだけでなく、それをいかに使うかの時代になっています。また、梅田キャンパスの都心型オープン 今年開学70周年を迎えた大阪工大。「現場で活躍できる専門職業人育成」の建学の精神にのっとり、多くの技術者を輩出してきた教育力に定評がありますが、近年その研究力も存在感を増し、研究を軸にした産学連携や地域貢献も進んでいます。教育力と研究力は大学の車の両輪です。2つの力が合わされば更なる大学のブランド力アップにつながります。今年8月に東京ビッグサイトで開催された大学の“知の見本市”である「イノベーション・ジャパン2019」には、大学では全国2位の22件の研究シーズが採択されました。また9月には大学独自の「イノベーションデイズ2019“智と技術の見本市”」を昨年に続いて開催し、多くの来場者でにぎわいました。同大の研究ブランディング推進や地域貢献活動などについて、研究支援・社会連携センター長の杉浦淳知的財産学科教授=写真=に聞きました。特集05FLOW | No.86 | November, 201917FLOW | No.86 | November, 2019研究内容が詰まった1台大盛況の模擬店
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