常翔学園 FLOW No.85
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睡眠改善学のパイオニア 働き方改革や子育てでも眠りの大切さを啓発広島国際大学心理学部心理学科田中 秀樹 教授ニューウェーブ教育・研究*注:寝具大手の東京西川のインターネット調査(2018年)。対象は全国の1万人(18歳~79歳)。世界的な不眠判定法「アテネ不眠尺度」で、「寝つき」「途中で目が覚めるか」「日中の眠気」など8つの質問に対する答えを点数化。「不眠症の疑いあり」が49.3%で、「疑いが少しある」も18.2%だった。原点は沖縄に住み込んで行った高齢者調査 慢性的な不眠を訴える日本人は5人に1人と言われ、調査によっては「半数が不眠症の疑い」=*注=というものまであります。幼児の脳の発達から高齢者の認知症予防まで各世代で睡眠の重要性が認識されるようになり、睡眠をサポートするマットレスや枕などの寝具、サプリメント、健康食品、音楽CDなど睡眠関連商品も世の中にあふれています。最近注目されている働き方改革でも「睡眠改善が重要なキーポイント」と指摘する広島国際大心理学部長の田中秀樹教授は、我が国の睡眠改善学のパイオニアの1人です。数多くの睡眠関連商品の開発にかかわってきたほか、国や自治体との「眠育」プロジェクト、小中高生らへの睡眠授業、病院での睡眠マネジメント、市民への講演、各種メディアへの出演など、睡眠改善の啓発にフル回転で活動してきました。寝苦しい季節がしばらく続きますが、睡眠改善の重要性やその方法などを田中教授に聞きました。新しい学問分野を立ち上げ 睡眠の科学的研究は1929年、ヒト脳波が記録されて以降、急速に発展しました。2002年には、睡眠学の創設と研究推進の提言(日本学術会議)がなされ、睡眠の重要性も認識され始めましたが、睡眠改善に特化した学問分野はなく、医学部でも教育されることはありませんでした。白川修一郎先生(当時:国立精神・神経センター精神保健研究所室長)と堀忠雄・広島大学名誉教授の2人の恩師らと睡眠改善学という学問分野を立ち上げるとともに2006年に日本睡眠改善協議会を設立し、2008年には教科書も作りました(「基礎講座 睡眠改善学」日本睡眠改善協議会編)。 私はもともと大学時代に生物学を専攻していましたが、大学4年の時に堀先生の本に出会って睡眠が脳と心に大きく影響することを知り、広島大大学院に進んで堀先生のもとで睡眠の研究を始めました。1998年には白川先生のいた国立精神・神経センター(現:国立精神・神経医療研究センター)に移るとともに、沖縄県に夏季と冬季、住み込みながら、佐敷町(現:南城市)で約4年間、睡眠健康教室などのフィールドワークを行い、「短い昼寝と夕方の軽い運動を習慣づければ、夕方以降の居眠りが減り、良い睡眠と脳、心身の健康を得る」ということが分かりました。快適な睡眠が取れない高齢者は、日中の活動量が減り、夕方に居眠りしてしまうことが夜の快眠を妨げていたのです。これがその後の私の研究の原点です。同町では調査をもとに私が考案した「福寿体操」という運動を取り入れた睡眠改善教室を全町で実施し、町の医療費を4年で2億8000万円下げるという成果も得ました。 三角形を描けない5歳児 日本では1990年代に生活の夜型化が進み、さまざまな問題が出てきました。それを示すデータを紹介します。 図①は5歳児に三角形を描かせたものです。下のグループはまともな三角形になっていません。調べるとちゃんと三角形を描けない子の8割が、親の影響などで生活が夜型化し生活のリズムが乱れていました。1970年代には平均4歳7カ月で三角形が描けていました。睡眠が幼児の脳の発達に影響していることを示しています。たなか・ひでき ■1992年鹿児島大学理学部生物学科卒。1997年広島大学大学院生物圏科学研究科博士後期課程修了。同大学院助手、国立精神・神経センター精神保健研究所特別研究員などを経て、2001年広島国際大学人間環境学部臨床心理学科(現:心理学部心理学科)助教授。2009年同教授。2018年同心理学部長兼大学院心理科学研究科臨床心理学専攻長。2020年健康科学部長就任予定。新幹線「のぞみ」の乗車時の快適性研究やNASDA(現:JAXA)で宇宙飛行士の睡眠やストレス研究も実施。博士(学術)。山口県出身。09FLOW | No.85 | August, 2019JOSHO TOPICS大阪工大硬式野球部が近畿学生野球春季Ⅰ部リーグで66年(131季)ぶりに優勝し、第68回全日本大学野球選手権大会に出場しました。全国大会の出場は1950年の創部後初めてです。6月9日、明治神宮会館(東京都渋谷区)で開催された開会式の「主将決意表明」では、同部の田中浩平さん(知的財産学科4年)が「リーグ戦同様、粘り強い野球でひとつでも多く勝てるように頑張ります」と表明しました。翌6月10日、東京ドームで創価大(東京新大学野球連盟1位)と対戦しました。序盤は大阪工大のペースで進みましたが、先制点を奪われてからは終始追いかける展開に。逆転を目指し最後まで健闘しましたが1対6で敗れました。スタンドには、同大應援團やウインドアンサンブルに加え、摂南大から吹奏楽部とチアリーディング部が応援に駆け付けチームを盛り上げるとともに、学生、卒業生、教職員など、総勢約300人が選手らにエールを送りました。2回戦進出は叶いませんでしたが、全国大会への出場は部の歴史に大きく刻まれ、より強いチームを作るうえで貴重な経験となりました。好プレーにタッチを交わす大阪工大ナインナインにエールを送る大阪工大應援團と摂南大チアリーディング部ら大阪工大硬式野球部 東京ドームで躍動6月22日、23日、柔道団体戦で大学日本一を競う全日本学生柔道優勝大会が日本武道館(東京都千代田区)で開催され、広島国際大柔道部が創部以来初めて男女そろって出場しました。男子チームを率いた主将の守屋佳祐さん(心理学科4年)は1年生のときにも同大会に出場。当時は先輩の背中を追いかける側でしたが、今回は後輩を引っ張っていく立場になって、3年越しに全国の舞台へチームを導きました。初戦で龍谷大に敗れはしましたが、「後輩にはこの経験を生かして更に上を目指してほしい」と夢を託します。初出場となった女子チームは、初めて5人制チームを編成し中四国大会を経て全国大会に。男子と同じく1回戦で龍谷大に敗れましたが、女子チーム主将の土岡知紗さん(医療福祉学科4年)は「初戦で前回準優勝チームと戦えたことは、全国大会のレベルを肌で感じる貴重な経験となりました」と試合を振り返りました。日本武道館の前で広島国際大柔道部 男女そろって日本武道館へ 広島国際大は呉キャンパスに、さまざまな学修スタイルや地域交流に対応した複合型教育施設として「3号館(教育会館)」を新築。9月末からの運用開始に向けて準備を進めています。 同施設は延床面積約9307㎡、地上4階建てで、グループ学修、個別学修、国家試験対策など、学びのシーンに応じた多様な学修空間を整備しています。キャンパスを縦貫する市道に面した校舎西側ゾーンは、オープンな活動の場として、1階にオープンテラスを備えた「陽だまりレストラン」(カフェ)と交流広場、2階にチーム医療を学ぶ学修スペースとして「IPEホール」、3階にグループ学修やディスカッションに最適な可動式テーブルやイスを多数配置した「ラーニング・コモンズ『LINK』」、4階に個人学修に特化した「個別学修ブース」などを配置しています。交流広場はカフェと一体利用が可能。また半屋外空間となっているため雨天でも、課外活動団体がパフォーマンスも行えます。呉キャンパスに複合型教育施設「3号館(教育会館)」を新設 同大では2017年度から東広島と呉の両キャンパスでキャンパス整備を進めており、学生、教職員はもちろん、卒業生や保護者、地域の方など、多様な人々が交流と連携を通してともに学び合える環境、「ユニバーサルキャンパス」の実現を目指しています。3号館(教育会館)外観階4階3階2階1階主な室名個別学修ブース、グループワークルーム、教室ラーニング・コモンズ「LINK」、グループワークルーム、呉教育サポートセンター、スタディールーム、教室IPEホール、教室陽だまりレストラン、教室ラーニング・コモンズ「LINK」(3階)陽だまりレストラン(1階)IPEホール(2階)17FLOW | No.85 | August, 2019YouTubeで動画配信中!

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