常翔学園 FLOW No.83
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02March, 2019 | No.83 | FLOW  第86回選抜高等学校野球大会(2014年)で広島新庄高野球部主将として甲子園初出場を果たした中林さんは、その開会式で選手宣誓という大役を務めました。試合でもリードオフマンとして活躍しましたが、同じ年に遭遇した土砂災害での体験から「建築の道に進みたい」と摂南大で住環境デザインを学びました。春からは大手ゼネコンで施工管理の仕事に就きます。  甲子園という大舞台での選手宣誓は「実は希望したわけではなく抽選で決まりました。大観衆を前に緊張しましたが、とても貴重な体験でした」と振り返ります。大会では延長15回引き分け再試合を含む計3試合で4安打を放つなど、すべての試合で「1番・遊撃」で攻守の要として活躍。周囲から野球選手として将来の期待が掛かりましたが、同じ年の8月20日に故郷広島を襲った未曾有の土砂災害が転機になりました。広島市内の自宅は被害を免れましたが、復旧ボランティアに参加したり、そのボランティア仲間の友人が犠牲になったことを知った体験は強烈で、「家を流された悲しみを軽くできたり、癒せる仕事がしたい」と考えるように。やがて小学1年から12年間打ち込んできた野球に別れを告げ、建築の道に進むことを決意しました。 もともとDIY家具を作るのが好きな大阪工大卒業生で土木施工の仕事をする父の影響もあり、ものづくりに関心を持っていたと話す中林さん。野球では指導的立場でしたが、大学の勉強では同級生や下級生でも知っている人に教えを請うという姿勢を貫きました。卒業研究でも研究室の仲間から吸収できる知識を生かして取り組みました。広島での土砂災害の経験から、一人でも多くの人を救うことができればとの思いで和歌山県由良町の災害時の仮設住宅デザインを研究した中林さんは、無機質なものではなく、「失った場所の記憶が残る」人間味のある仮設住宅をと工夫を凝らしました。「建築の基本的理論を押さえた上で自分の色やオリジナリティを出すことにもこだわりました」と話します。 研究室では「陰でメンバーを支える」役割を心掛けた中林さん。「野球をやっているときは小・中・高とキャプテンだったので、時には100人のメンバーをまとめる役割でしたが、研究室ではみんなに助けてもらっています」と謙虚に話します。昨年金沢で開催されたデザインコンペでは研究室の7人で制作した作品が7位入賞を果たし、「野球とは違う世界でもチームで賞を取ることができて自信につながりました」と声を弾ませました。 春からは大手ゼネコンの大林組で施工管理のプロを目指します。施工管理は建設現場の工程管理や安全管理を担当し、作業を進める細かな図面も引きます。「現場を引っ張る仕事で、野球部でチームを引っ張ってきた自分に向いている」と志望しました。「長く形に残る物を作ることができるのが建築の良さです」と話す中林さんは、元球児だけに「将来は野球場の建設にもかかわっていけたら」と春からの仕事に胸を膨らませます。後輩たちへは「入学した後に自分がどう動くかが重要です。学生の間にできることを見つけて、無駄な時間を作らず、やりたいこと、やるべきことをしっかりやれば結果につながります」というエールを送ります。高校時代、甲子園で選手宣誓を務めた中林さん(毎日新聞社提供)元甲子園球児が土砂災害を体験「悲しみを癒せる仕事を」と建築の世界へ中林 航輝さん■ 大林組 内定摂南大学 住環境デザイン学科4年なかばやし・こうき

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