大阪商工会議所と大阪工大が共同開設した都心型オープンイノベーション拠点「Xport(クロスポート)」の仕組みや今後の展開について、実務を担当するXportの児玉達樹会長と小寺正敏副会長の2人に話を聞きました。大企業の提示する課題に寄ってたかって取り組む─Xportの名前の由来や狙いを教えてください。児玉 人と人が出会い無数の可能性が交わり(クロス)、革新的なアイデアと解決策、創造的な人材を生み出す場(ポート=港)になって欲しいとの願いを込めました。多様な参加者がオープンイノベーションを通じて課題解決、新規事業創出を行う産学連携や産産連携のきっかけを作る場所です。また学生には実際のビジネスに生かすアイデアが求められるので、生の教材に触れられる場です。良い教材を出してもらえるよう、さまざまな企業に参加の輪を広げようとしています。Xportの特色は、大企業が抱える課題に対して、中小企業、ベンチャー企業、社会人、学生らが寄ってたかって解決の方策を提案する、という点です。大企業もすべてを秘密にする時代ではなく、5年後、10年後の大きな課題やテーマを投げ掛け、アイデアを募るという段階はオープンにしてもいいと思い始めています。その中で本当にビジネスにつながる芽やネタが見えてくれば、関心のある人たちだけで秘密保持契約を結んで開発に進んでいけばいいのです。小寺 駅の乗降客が1日250万人にもなるという梅田の地で、この人々のつながりを生かして大学として大きく羽ばたきたいと考えています。世界でも理工系のイノベーション人材が活躍していますが、少子化の我が国が技術立国として今後も発展するためには理工系イノベーション人材育成が大きな課題です。そのためにXportは、学生が生の産業界の人々の考えに触れられて、今何が必要な技術なのかを学べる貴重な場になります。ここで実際の事業化の過程を体験できれば、きっと良い人材に育ってくれるはずです。─Xportの具体的な活動を教えてください。児玉 一番の目玉事業は、大企業である幹事企業がテーマを提示し、共通課題を持つ会員との交流でチームを編成し新規事業につなげる「フューチャー・ラボ」です。インターネットでの書籍販売から通販で世界的な巨大企業に成長した米国のアマゾンが小売業に及ぼした破壊的な影響を見れば分かるように、突然異業種からライバルが出現する時代です。企業は同業種だけを見るのではなく、広くアンテナを張り、イノベーションを仕掛けていかなければなりません。イノベーションには異業種のさまざまな情報も必要なのです。Xportは異業種企業だけでなく大阪工大を始めさまざまな大学の教員、学生など産業界を越えた知も集めて新しいビジネスの発火点になる可能性があります。梅田の地の利を生かして京都、神戸の知も集められます。現在、幹事企業の大和ハウス工業から、住宅・建設分野を中心とした4つのテーマを出し、協業企業・団体を募っている段階ですが、いろいろなセクターの人たちを更に集めるためにもフューチャー・ラボで早く成功事例を作りたいと考えています。それが呼び水となりXportがイノベーションの中心になっていくはずです。小寺 現在、Xport内だけでなく梅田キャンパスの学生約1000人に対してXportの課題を用いたイノベーション人材教育をさまざまな形で行っています。これだけの規模での学生参加によるオープンイノベーション拠点は今までになかった取り組みであり、新しい教育の仕組みとしてその効果を期待しています。フューチャー・ラボには教員と共に本学大学院生も積極的に参加して、若者らしいアイデアをどんどん発言して活発に議論してほしいですね。学部生でも参加できる活動として「産学連携PBL『RDクラブ』」があります。会員企業が課題を出し、学生が教員の指導の下でデザイン思考を活用して課題解決のアイデアを発表します。ユーザー視点に立って最終製品を意識したデザイン思考は、イノベーションには有力な手立てです。また、知財関連アドバイスの05FLOW | No.80 | August, 2018こだま・たつき 1977年関西大学文学部哲学科卒。同年大阪商工会議所入所。経済部課長、産業部ベンチャー振興室課長、経済産業部長、理事・総務広報部長など経て、2014年から現職。とは?クロスポートXportXport 会長大阪商工会議所 常務理事·事務局長 児玉 達樹異分野の出会い特別対談《 》
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