きっかけは絵本、レオタード牧野 はじめまして。今日はよろしくお願いします。最初に矢倉さんのバレエとの出会いを教えてください。矢倉 はじめまして。私とバレエの出会いはバレエ好きの母が読んでくれた「くるみ割り人形」の絵本でした。その後、連れて行ってもらった「くるみ割り人形」のバレエ公演が楽しくて、5歳から習うことにしたのです。牧野さんはなぜバレエを始めたのですか。牧野 3歳の時、母に近くのバレエ教室の見学に連れて行かれ、みんなが着ているレオタードにあこがれて始めました。中学までその教室に通い、いまはロシア式メソッドの教室で学んでいます。今年3月にイタリアであったコンクールで賞をもらい、9月からウクライナのキエフ国立バレエ学校に1年間留学することが決まりました。矢倉さんも私と同じ16歳でドイツにバレエ留学されたのですね。矢倉 10歳で英国に短期留学して欧州にあこがれるようになりました。その後ローザンヌ国際バレエコンクール(スイス)に出場した時、ミュンヘン国立音楽大(ドイツ)バレエ科の校長が高く評価してくださり入学を勧められたのです。牧野さんは留学が決まって不安などありますか。卒業したのは10人のうち2人だけ牧野 いろいろ心配しても仕方ないと思っています。それより楽しみが大きいです。私は小さいころからみんなより背が高く、それが少しコンプレックスになっていました。だから海外に行く方が、日本にいるより自分の長身をバレエに生かせるのではとも思っています。矢倉 長身は海外ではプラスです。男性ダンサーの背の高さを気にしなくてもよくなりますよ。ところで言葉に不安はありますか。牧野 留学が決まってからバレエ教室ではロシア語でレッスンしてもらっていますし、親戚の知人のベラルーシ出身の方に月2回ロシア語会話を習っています。矢倉 私の場合、ミュンヘン留学時にドイツ語は全く分かりませんでした。ただ各国から学生が集まっていてコミュニケーションのほとんどは英語でした。英国に短期留学した時に英語が全然分からず、その悔しさから英語の勉強に励んだことが役立ちました。バレエの基本用語はフランス語で各国共通ですが、いずれにしても向こうへ行ったら何とかなるくらいに思った方がいいですよ。牧野 矢倉さんが留学で大変だったことは何ですか。矢倉 もちろんレッスンの厳しさですね。ミュンヘンの学校は国立なので入学金や授業料は無料でしたが、そのかわり進学が難しかったです。1年ごとに女性校長が「あなたはバレエに向いていないです」などと学生に“クビ宣告”をするので、みんなびくびくしていました。結局、入学した時のクラスメート10人のうち3年後に卒業できたのは私とドイツ人の学生の2人だけでした。ただ 常翔学園の設置学校に在籍する学生・生徒、教職員が各界の“一流人”と語り合う新企画「クロストーク」が今号から始まります。初回はクラシックバレエの世界の2人です。常翔啓光学園高2年でこの9月からウクライナ・キエフ国立バレエ学校に留学する牧野カレンさんが、海外の舞台経験豊富な元ブカレスト国立オペラ座バレエ団のバレエダンサーで、現在はバレエ公演を企画する一般社団法人も立ち上げた矢倉鈴奈さんに海外生活へのアドバイスやバレエの魅力について聞きました。バレエの楽しさ プロへの道の厳しさ海外留学して初めて気付く日本の良さ15FLOW | No.80 | August, 2018プーニの『エスメラルダ』を踊る牧野さん使い込まれたトゥシューズ(左)。右は、牧野さんが3歳の時に履いていたバレエシューズ常翔啓光学園高校2年牧野カレン さん01
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