常翔学園広報誌 FLOW 79号
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んとなくうまくいったな」と感じるプレーがあります。以前は根拠がはっきりしないまま終わることが多かったのですが、この分析方法を使うとそれがどうしてうまくいったのかを後からデータとして検証できます。チームの状態を客観的に“診断”できるのです。ボールの動きが縦方向と横方向のどちらが多いか、どのエリアに行くとボールの動きが速くなるか、右サイドと左サイドとではどちらでチャンスが生まれやすいかなど、チームの“癖”、長所、短所を示してくれます。その結果、戦術の変更や修正につながります。チームの密集度合や広がり度合も一目でまた、以前は見えていなかった指標が分かってくるということもあります。例えば、チーム全体の動きとして11人の作る多角形の面積を出すと密集や広がりの度合が分かってきます。その“重心”を計ることでフィールドのどのエリアに選手が偏っているかなど、ゲームの戦術を考えるために役立つ客観的な数値が得られるようになりました。監督が独自の視点で分析するための新たな指標が欲しければいつでも出すこともできます。逆に言うとこれからは膨大なデータを使いこなし、「何が大事な指標か」を判断する監督や指導者の力量や観点が問われてくることにもなると言えます。どんな指標が大事かは、今後だんだん固まってくると思います。選手のスピード、移動距離、フォワードの選手と敵のディフェンスの選手の距離、他のサポートする選手との距離などの指標を、試合中にいかに早くチームに還元できるかが今後の課題です。前半が終わってハーフタイムにそれを示して後半に生かせるようにしたいですね。また将来、蓄積された試合のデータを人工知能(AI)に学習させて、ボールを受けた選手に多くの選択肢から最適な動きを指示させることも可能になるかもしれません。トレーニングに変化も私はサッカー部監督や国体の広島県選抜の監督などサッカー指導の長年の経験があります。このゲーム分析を取り入れるようになって指導者としてのサッカーの見方が変わり、ゲーム全体をイメージしやすくなりました。個々の選手のテクニックに頼りすぎないで、ディフェンス、中盤、フォワードの3つのラインをどう連携させればいいかなどを重視するようになりました。また、個のトレーニングだけでなく、3つのラインの連携トレーニングが増え、選手には戦術のトレーニングにもなっています。DLT法を使ったゲーム分析の流れビデオカメラの配置とキャリブレーション点キャリブレーション風景とビデオカメラの配置位置・アングル1 2 カメラ1カメラ2 カメラ1カメラアングルメインカメラ設置位置カメラ2黄色の線は両チームの重心間距離で、両チームのフィールドの縦方向(図の左右)への対応度合いを示す。●はボールの位置。ボールを保持する●チームの攻撃に対して、■チームの守備の右サイド(図の下側)への対応が遅れていることが分かる。10May, 2018 | No.79 | FLOWDLT3、
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