常翔学園広報誌 FLOW 78号
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中央教育審議会(中教審)が1999年に中学・高校と大学が接続・連携した全体教育の必要性を訴える答申を出して以来、高大接続や中高大接続の取り組みは全国に急速に広まっています。答申では、中学・高校の教育が多様化する中で、生徒一人一人に育まれた多様な能力を大学・大学院までの一貫した形で、発展・向上させることが肝要だとされています。 常翔学園でも学園内中高大の一貫した連携教育の体制づくりを大きな課題として取り組んでいます。総合学園としてのスケールメリットを生かした連携体制とその取り組みについて、中高大連携教育推進委員会の川田委員長(学園理事・大阪工大教授)と田代委員(常翔学園高教頭)、山田委員(常翔啓光学園高教頭)に聞きました。中高生に将来の選択の情報を提供■ 常翔学園の中高大連携教育の目的とその取り組みを教えて ください。川田 学園設置3大学と2つの中高が連携を深め、ベクトルを合わせた「一貫した連携教育」を実践し、教育力を更に高めようと中高大連携教育を実施しています。当初は大学側の協力を得て大学の教員が設置中高に出向いて行う模擬授業や体験学習が中心でした。これは入試のためではなく、中高生に学園内大学での学びに興味を持ってもらい、更にキャリア教育として将来の職業を選ぶための広い知識や新しい情報を早い時期から獲得してもらうのが狙いで、将来の選択を誤らないように情報を提供することが第一です。2015年からは高校の「保護者対象学園内大学説明会」で学園設置3大学の紹介を行い、親子で将来のキャリアについて考えてもらう機会にしています。また、大学と中高の教員が集まり連携教育について考えるワークショップも実施しています。参加者からは「教員間の情報共有を更に促進し、お互いの実情を知る必要を感じた」などの多くの意見が出ました。今後も、“総合学園”というスケールメリットを生かした取り組みを進め、学園設置各学校の接着剤的役割を果たしていきたいです。田代 中高大が連携して一貫で生徒を教育するスケールメリットは大きいです。各教員が学園全体の教員でもあると意識して学生・生徒の教育に関心を持つことが大事です。常翔学園高の最初の取り組みは大学の研究室訪問で、これが1回きりのイベントだったため、年間を通したものにと「夢発見ゼミ」(文理進学コース2年)を始めました。年に約10回の大学教員によるリレー式授業を受け、課題を提出します。これをきっかけに将来の研究分野や仕事を見つけることができたという生徒も生まれています。大学の先生方にも更に協力をしていただき、次年度から「ガリレオプラン」(スーパーコース、薬学・医療系進学コース2年)という7つのゼミに分かれる科学探究授業をブラッシュアップします。中学では「総合サイエンス」を実施していますが、まだ将来の自分について真っ白な状態の中学生が早くから専門教育に触れる意義は大きいです。この他、さまざまな生徒の発表会でも大学の先生方に審査員になってもらっています。山田 常翔学園の設置校になる前の啓光学園時代から高校3年間で自分の将来のことを考えさせる「ドリカムプラン」という取り組みをしており、その中で大学の模擬授業なども実施していました。各大学へ協力のお願いをして調整するのに苦労していたのですが、設置校になったことで、さまざまな学部・学科のある3大学の協力が得られるようになり、高校1年生の大学体験授業は、学校にとって大きなプラスになっています。総合学園のスケールメリットが生きる一貫した連携教育07FLOW | No.78 | March, 2018特集中高大連携教育インタビュー 聞き手 : 西田太郎 学園本部広報室長川田 裕理事・大阪工業大学教授●出席者(中高大連携教育推進委員会)委員長田代 浩和常翔学園高等学校教頭委員山田 長正常翔啓光学園高等学校教頭委員
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