常翔学園広報誌 FLOW 78号
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03FLOW | No.78 | March, 2018  父親がパティシエで母親が栄養士という宮崎県西都市の家庭に育った渡邉さんが、「食」への道に進もうとしたのは自然なことでした。更に、広島国際大医療栄養学科での学びを通して、栄養士の中でも最も専門知識が求められる病院の管理栄養士を目指すようになりました。難関の採用試験を突破して今春からはその夢の第一歩を歩み始めます。  渡邉さんが内定した広島市立病院機構は、広島市民病院など4病院、1施設を運営しています。昨秋の職員募集は「管理栄養士1人」で、新卒予定者だけでなく経験者も含めて60人が応募しました。60倍の超難関の試験を突破したのです。 近年、病院での栄養管理が重要視され、特に管理栄養士が医師、看護師、薬剤師らと連携するNST(Nutrition Support Team=栄養サポートチーム)というチーム医療が注目されています。栄養が不十分ならどんな治療も十分な効果が得られないという考えに基づいています。NSTに関心を持った渡邉さんは、民間病院でありながら中四国有数の急性期病院である高知市の近森病院が国内でもトップクラスのNSTの取り組みをしていることを知り、インターンシップを自ら申し込み、2週間の実習を体験しました。「管理栄養士が直接CT画像を見るなどして個々の患者さんの症状を把握し、食事を考えていることに驚きました」と話します。同院では約30人の管理栄養士が各病棟に配置されていて、渡邉さんは整形外科病棟でのインターンシップでした。実際に患者さんのケガの状態を見て、食事に必要な細かな栄養まで考えました。「すごく刺激的な経験になりました」と振り返ります。大学入学当初は食品開発会社なども就職先として漠然と考えていましたが、その2週間が渡邉さんの進む道を決めたと言えます。 家庭環境もあって中学生のころには魚をさばけたというほどの料理の腕前の持ち主ですが、大学の授業では調理実習の大量調理が好きだったと言います。チームごとに一度に100食もの調理をして、有料で一般のお客さんに食べてもらう実践的な授業です。「チームで栄養計算して献立を考え、材料の発注までするのが楽しかったです」。人に食べてもらうことが好きな渡邉さんは、大学の寮でも友達に料理を振る舞い、同級生の女子学生に頼まれて、バレンタインデー用のクッキー300枚を作ったこともあるほど頼られる存在でした。 卒業前には管理栄養士資格の国家試験が待っています。勉強ノートはオリジナリティーあふれるもので、ノートに直接書き込むのではなく、細かい書き込みのある色分けされた付せんをびっしりと貼り付けたものです。「整理しやすく、勉強の進み具合などによって付せんを自由に移動させられます」と付せんでずしりと重くなったノートを見せてくれました。その重みが渡邉さんの自信の裏付けのようです。 「栄養士は献立を作る人というイメージがまだ強いですが、病気の治療には栄養管理が重要だということをもっと社会に広めていきたい」という大きな夢のある渡邉さんは、後輩たちにも「病棟で病気を診られるほど専門知識を持った管理栄養士を目指してほしい」とエールを送ってくれました。色とりどりの付せんがびっしりの渡邉さんのノート食事の栄養価を瞬時に計算する機器を説明する渡邉さん最先端の栄養サポート医療を学び思いが深まった病院の管理栄養士の道渡邉 一貴さん■ 地方独立行政法人・広島市立病院機構 内定広島国際大学 医療栄養学科4年かず   き

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