活躍する卒業生:学校紹介

映像音楽の旗手 友人の死を境に「人のために音楽を」と決意

大阪音楽大学 ミュージック クリエーション専攻 特任准教授   渡邊 崇   さん

渡邊 崇 さん:大阪音楽大学 ミュージック クリエーション専攻 特任准教授

PROFILE
1999年摂南大学機械工学科卒。2006年大阪音楽大学短期大学部卒。「舟を編む」(日本アカデミー賞優秀音楽賞受賞)、「バンクーバーの朝日」など多くの映画やCM(P&G洗濯洗剤「アリエール」、OKI「コピー機」、シチズン腕時計「ATTESA」、パナソニックの食洗機など)の音楽を手掛けたほか、室内楽コンサート用の楽曲書き下ろしや演劇の音楽プロデュース、アーティスト活動など幅広く活動。2016年大阪音楽大学に新設されたミュージッククリエーション専攻の特任准教授に。広島県出身。

映画「舟を編む」(2013年)で日本アカデミー賞優秀音楽賞を受賞した作曲家、渡邊崇さん。今年音楽を手掛けた映画の全国公開(予定を含む)は計6本にのぼり、テレビでは年中作曲したCM音楽が流れています。映像音楽の世界で今や引っ張りだこの渡邊さんは摂南大機械工学科の卒業生。本格的にクラシック音楽や作曲の勉強を始めたのは同大学卒業後に28歳で入り直した大阪音楽大学短期大学部でといいますから驚きです。才能が短期間で一気に花開いた渡邊さんの音楽には、異色の経歴やさまざまな体験も反映しているようです。

父が小学校教諭で母は保育園の保育士だった広島の実家には、昔からピアノの他にケーナなどの変わった民族楽器がたくさんありました。そんな楽器に触れるのと雨の音を聴くのが大好きだった渡邊少年でしたが、特別な音楽教育を受けたわけではありませんでした。中学3年になってやっと父のギターを手にしたことが、まともな音楽との出会いだったといいます。高校からはハードロックのバンドを組み、摂南大入学後も大阪市内のライブハウスでロックバンドの演奏活動を続けました。「大学4年の時にバンドを評価してくれたオーストラリアの会社からCDが出ることになり、何となく音楽のプロになれるのではと思うようになりました」

ところが卒業してみると、考えの甘さにすぐに気が付きました。アルバイトをしないと食べていけませんでした。そんな中で一緒に演奏ツアーをしたカナダの前衛ジャズバンドのメンバーからもらったCDに衝撃を受けました。20世紀を代表する作曲家バルトークの弦楽四重奏曲(全6曲)でした。クラシック音楽の世界でも傑作とされながら、その難解さで有名な曲です。「クラシック音楽をまともに聴いたこともなく、弦楽四重奏の中のビオラがどんな楽器かも知らなかったですが、バルトークの曲の響きの虜になり、こんな音楽を作りたいと思ったのです」。本格的に作曲家への道に進む第1の出会いでした。

すぐに作曲の本を買いに走り、楽譜の書き方から勉強を始めました。「本を参考にキーボードで曲を作ってみると『俺にもできる』と感じましたが、独学では更に上のレベルは無理だとも分かりました」。木材に設計図通りの目印を付ける墨付け大工のアルバイトをしながら1年間、和声など楽典の受験勉強をして音大への入学を果たしました。28歳になっていました。「音大に入って作曲の勉強を始めると期待通りの面白さでした。それまで『気持ちいい』『気持ち悪い』の感覚だけで音楽をやっていましたが、勉強することでなぜ気持ちいいのかが分かり、霧が晴れていくような思いでした」。こうして作曲技法をあっという間に吸収していった渡邊さんに、第2の出会いが待っていました。

「当時芸術大にいた友人の短い映像作品に曲を付けるように頼まれたのです。シンセサイザーで作曲しましたが、めちゃくちゃ楽しくて。それがNHKの番組で放映されたこともあって『これだ!』と映像音楽にはまっていきました」。映像音楽との出会いでした。

その後、音大卒業間際に友人と作った短編映画がドイツの映画祭に招待され、そこで知り合った日本のCMディレクターやプロデューサー、映画監督の平林勇さんらが音楽を高く評価してくれました。そのお陰で卒業後すぐに大企業のCM音楽の依頼が入り、とんとん拍子に仕事が増えていきました。音大時代にたくさんの自主映画の音楽の依頼を引き受けたことで、その監督たちがプロになって渡邊さんの名前を広めてもくれました。

渡邊さんの作曲の信条は「人のために音楽を作る」です。バンドをやっていた時に亡くなった友人の通夜で悲しみに暮れる遺族を見た時でした。「自分のやっている音楽ではこの人たちの心を慰められない、と思ったのです。その時から自己顕示欲だけの音楽をやめました」。そう振り返る渡邊さんは、映画に音楽を付ける時も徹底的に監督の意図を理解し寄り添うように努めます。それが作曲家の誠実さだと思うからです。

今春から若い学生に、食べていけるプロの音楽家になるのに必要な実践的技術や哲学を伝える教育現場で奮闘する渡邊さん。摂南大の後輩たちには「みんな夢があると思いますが、あきらめずに時間をかければ、まあまあ叶いますよ」と実感のこもったエールを送ってくれました。

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