石森 幸菜さん

中国ジェイアールバス バスガイド

広島のバスガイドとして成長する日々 独自取材で被爆者の声も観光客に伝える

Graduate Voice 活躍する卒業生

FLOW No.80

Profile
いしもり・ゆきな 2016年広島国際大学心理科学部臨床心理学科卒。同年中国ジェイアールバスに初の正社員バスガイドとして入社。趣味は野球で、高校時代は野球部マネジャー、大学時代はテレビ局でプロ野球の試合のスコアラーのバイトも経験。広島県出身。

「バスガイドは乗車している時間より勉強している時間の方が長いんです」と話す石森幸菜さんは、2年前に広島国際大臨床心理学科(現:心理学科)を卒業し、中国ジェイアールバス初の正社員バスガイドとして採用されました。広島市内の定期観光バスや修学旅行の貸し切りバスなどに乗車しながら、自分なりの理想のバスガイドを目指して知識や経験を積む日々です。

広島平和記念公園で原爆ドームを背に

就職活動を始めたころは、「バスガイドは思ってもみなかった」と言う石森さんですが、ある日就活サイトから「あなたにお勧めの企業が見つかりました」と中国ジェイアールバスのバスガイド求人を知らされたのです。「ちょっと興味を持って説明会に行ってみると、人とかかわることが好きな自分に向いているのではと気付いたのです」と話します。入社後の研修期間を経て7月に独り立ち。そのころはバスが渋滞するのが怖かったと言います。「風景が変わらないうえに、話すネタもなくなって頭の中が真っ白になりました」と振り返ります。今では "広島弁ネタ"など自分なりのネタや知識も増え、渋滞時にも対応できる自信が付いてきました。休日には、インターネットや古書店で探した資料でガイド用手書きノートを作るなど勉強に励みます。

"ヒロシマ" は単なる観光地を超えた特別な祈りの地でもあります。石森さんは8月6日の広島原爆の日が近付くと、平和記念公園でボランティアガイドを務める被爆者らから体験談を直接取材。毎年更新される原爆死没者名簿の人数も新聞でチェックし、観光客に正確に伝えることを心掛けます。「広島のバスガイドとして8月6日をどう伝えたらいいかを真剣に考えます」。小学校の時から受けてきた平和学習を、勉強し直しています。

広島国際大で専攻した心理学が乗客との会話にも役立っていると言う石森さんは、睡眠学研究の田中秀樹教授のゼミで学びました。「卒論は睡眠に悩みを持つ人への睡眠相談についてでしたが、実は完成間近の論文やデータが入ったUSBメモリを誤ってトイレに流して大騒ぎになったのが大学での一番の思い出なんです」と笑いながら打ち明けてくれました。「『前代未聞だ』と言いながら先生や仲間が助けてくれたことに本当に感謝しています」。田中ゼミでは語り草の"USB事件" です。就職でも「好きなことと仕事は別」と田中教授がアドバイスしてくれたことがバスガイドへの道にもつながりました。今も悩み相談に乗ってもらうほど尊敬する恩師に出会えたことが「大学生活で最も幸運だったこと」と話します。

「観光バスの降車時に高齢のお客さんが心から『楽しかった。ありがとう』と涙を流してくれたり、修学旅行生から『一緒に写真をお願いします』と頼まれたりすると、バスガイドになって良かったと思います」と話す石森さん。後輩たちへのアドバイスは「就職活動では目先のことよりもっと将来のことを考えて、選択幅を広げてください」。選択幅を広げて天職を見つけた石森さんの実感がこもっています。

活躍する卒業生