患者さんに寄り添い「診てもらえてよかった」と喜ばれる医療を目指して

松下記念病院 血液内科 看護師   吉村 悠   さん

吉村 悠 さん:松下記念病院 血液内科 看護師

PROFILE
0 9 年3 月常翔学園高卒。松下看護専門学校で看護学を学び、12年4月から松下記念病院に入職。大阪府出身。

松下記念病院の看護師を務める吉村悠さんは今年で2年目。日々患者さんたちのケアに心血を注いでいます。重篤な病態の患者さんもいる血液内科で常に笑顔を心掛け、「患者さんと一緒に戦いながら今の自分にできることを」と、仕事にかける思いを明かします。

解剖生理など人間の体に興味があり、高校は薬学・医療系進学コースを選んだという吉村さん。卒業後は松下看護専門学校に進学し、2012年から看護師として入職しました。看護学校で学ぶうちに、細胞の中で見えない敵と戦う血液疾患の領域に関心が高まり、血液内科を希望したそうです。「でも、全然知識が足りなくて、配属された最初のころは2時間睡眠で勉強していました。著名な先生の講演も聴きに行きましたし、今しか吸収できないことを吸収しようと必死でした」

患者さんの病態や家族背景なども含めた全体像でとらえなくては、いい看護はできないので、情報収集と言葉かけの仕方1つにも心を砕いています。とはいえ、そこは白血病をはじめとした重篤な疾患の人たちもいます。残り少ない余生、そして永遠の別れというシビアな現実も十分に考慮しています。看護師に感情的な態度をとってしまう患者さんも少なくありませんが、そこには薬が効いていなかったり、ご家族との関係で悩んでいたりと必ず原因があります。きちんと話を聞いていけば原因が分かってくるので、ご家族と和解できるように手助けすることも役目です。週1回の夜勤は吉村さんにとって心安らぐ時間帯。日中はつらそうにしている患者さんが穏やかな表情で眠っているからです。

毎日病院の天井を見ながら過ごしている患者さんに対して、自分に何ができるのか。それを考えながらかかわっていくことが大事と話します。ある時は、寝たきり状態で「しんどいなあ」と繰り返す患者さんを気分転換させてあげようと、酸素ボンベをつけて敷地内のお花見に連れ出しました。「楽しかったと喜んでくださり私もうれしかったです。余命宣告されている方でも、この病院でよかったと思えるような時間を過ごさせてあげたいですね」

「やりたいことは何でもやってしまうタイプ」という吉村さんの原点が築かれたのは、高校時代の3年間です。2年生の時に生徒会会長となり、合唱部との掛け持ちで頑張りました。他のコースよりも授業の終わる時間が遅く、生徒会の仕事を全うするために昼休みにやってほしい作業のリストをまとめて他のメンバーに進めてもらえるように工夫。文化祭などの行事をみんなで創り上げる楽しさを味わったと言います。前年度の会長や生徒会OBからの協力も得ることができ、きちんと自分の意見を伝えたら、いろいろアドバイスをもらえることも実感。今も仕事の相談をする時は正直な思いを話すようにしています。チーム医療の中で同僚との信頼関係を築くため、あいさつはもちろん、日ごろからすれ違う時に相手の名札を見て名前を覚えるように心掛けているそうです。

「高校時代はかけがえのない時間でした。音楽好きだった私に、医療を学んで音楽療法士になる道もあると看護学校進学のきっかけを与えてくださったのも、合唱部顧問の禅定先生です」。一人ひとりの将来を思って親身になってもらえるのは、先生方の転勤がない私学の良さ。今その時期にいる人たちは大切に過ごしてほしいと強調します。

これからは死を受け入れる家族に対する心のケアや、亡くなった方への化粧を行うエンゼルケアなどを学ぶことが目標。より良い終末期医療の在り方を追求し、看護師として、人としての成長を図ります。

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