原点は路上演奏 サックスを手に全国へ

プロサックス奏者   坪山 健一   さん

坪山 健一 さん:プロサックス奏者

PROFILE
1986年啓光学園高校(現常翔啓光学園高校)卒。1990年相愛大学音楽学部卒。同年兵庫県西宮市新人演奏会で最優秀賞を受賞し、関西フィルハーモニー管弦楽団と協演。卒業後は音楽活動をしながら2000年まで啓光学園中高非常勤講師(音楽)。神奈川県生まれの大阪府育ち。

「つぼけん」の愛称で親しまれるプロサックス奏者、坪山健一さんが音楽に出会ったのは啓光学園中(現常翔啓光学園中)の入学式でした。音楽部(当時)のビッグバンド「スイングジャグラーズ」の歓迎演奏に魅了されたのです。以来サックス一筋。今も人とのつながりを生む路上演奏を大切にしながら、サックスを手に全国を飛び回っています。

2月12日、京阪本線枚方市駅そばの喫茶店「エリート」でのライブは地元ファンら30人ほどで満員。坪山さんとピアニストの飯田一樹さんの熱い演奏に観客は酔いしれました。「枚方大橋からの夕日をイメージした」というオリジナル曲「夕空」など地元感もたっぷりで、坪山さんの軽快なトークを交えた2時間があっという間に過ぎました。

坪山さんを音楽の世界に導いてくれたのは中高での音楽部の活動です。「最初はトランペットをやりたかった。でも顧問の先生に『君は歯並びが悪いから』と言われてサックスを始め、すっかりはまりました」。音楽部ではサックスだけでなくピアノやギター、ベースなどさまざまな楽器も経験し、作曲も始めました。「その時の経験が今の活動を支えています」。「スイングジャグラーズ」の仲間とは卒業後も活動し、今でも毎年、母校同窓会などが主催する「成人の集い」などでOBバンドとして演奏を披露しています。

ジャズを中心に演奏していた坪山さんが大学では音楽学部に進んだのは「きちんとしたクラシック音楽を学びたかったから」。大学では新進の作曲家でサックス奏者の野田燎氏に師事し、難解な現代曲なども学びました。卒業時には優秀学生に選ばれ、関西フィルハーモニー管弦楽団と協奏曲を協演するほどの実力の持ち主になりました。

大学卒業後は、演奏活動と啓光学園中高(当時)での音楽の非常勤講師という二足のわらじを続けていましたが、1999年、演奏活動に専念することを決意しました。「わずかなお金だけ持って東京へ行き、10日間の路上演奏で日銭を稼いで生活できるか試してみたのです。その結果、音楽で食べていける手応えをつかみました」。路上演奏はこれまで43都道府県に及び、アメリカのニューヨークやハワイでも経験しました。「駅前や商店街のアーケードなどで道行く人々に聴いてもらいます。時にはお巡りさんに注意されることもありますが、これが私の演奏の原点です」

路上演奏で声を掛けてくれた人たちとのつながりで、九州や東北などの各地に呼ばれ演奏会を開くようにもなりました。福祉施設などで行っているボランティア演奏も路上演奏がきっかけでした。また無名時代の書道家、武田双雲さんに声を掛けられたのも横浜市での路上演奏。意気投合した2人はその後パフォーマンスショーもしました。さまざまなバンド活動やソロ演奏、サックス教室での講師などに忙しい坪山さんですが、今でも毎月何回かはどこかで路上演奏をするよう心掛けています。

坪山さんの基本ジャンルはジャズですが、「既成のジャズの概念にとらわれず、分かりやすい『ポップスジャズ』を目指しています」。ライブではオリジナル曲のほかにポピュラー音楽も取り上げますし、お客さんのリクエスト曲を即興演奏することも。路上演奏の豊かな経験が生きています。

非常勤講師時代には、「通常の音楽の授業以外にもクリスマス行事での合唱指導をしたり、中学3年生に書かせた歌詞を集めて一つの歌を作曲したり、朝の校内放送で自作の歌を披露したり」と熱い音楽教師だったそうです。「勉強の方はあまり熱心ではなかったですが、没頭できる音楽に出会えて幸せでした」と話す坪山さん。後輩には「興味を持って打ち込めることを早く見つけることが大事。そのために映画を見たり、いつもと違う場所へ出掛けたり刺激を受けることは何でもやってみてください」とアドバイスしてくれました。

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