5つ星ホテルを“仕込む”仕事で培ったキャリア

IHG・ANA・ホテルズグループジャパン開発スペシャリスト   田中 順子   さん

田中 順子 さん:IHG・ANA・ホテルズグループジャパン開発スペシャリスト

PROFILE
1990年大阪工業大学高校(現常翔学園高校)卒。1994年大阪工業大学建築学科卒。1996年~2000年ニューヨーク・スクール・オブ・インテリアデザイン留学。ニューヨーク・マンハッタンのデザイン事務所に勤務し、2001年帰国。「ザ・ペニンシュラ東京」、「シャングリラ ホテル 東京」の2つの5つ星ホテルの立ち上げに携わり、2010年IHG・ANA・ホテルズグループジャパン入社。大阪府出身。

国内有数のホテルグループで新規のホテル開発を任される田中順子さんは、大阪工大高(現常翔学園高)、大阪工大建築学科の卒業生です。ニューヨーク・マンハッタンのデザイン事務所や、外資系5つ星ホテルの東京での立ち上げの仕事などでキャリアを積んだ国際人で、建築やインテリアデザインの技術・知識を生かせるホテル開発の仕事に情熱を注いでいます。

田中さんがインテリアデザインに目覚めたのは中学生の時でした。「自宅の模型を作る家庭科の授業が面白くて」と振り返ります。ものづくりをしたい思いが膨らみ、大阪工大高から大阪工大建築学科に進みました。橋梁技術者として海外でも仕事をする父と英語が得意な母のいる家庭環境も影響し、大学在学中から海外に出ることを目指しました。卒業後1年で、アメリカ・ニューヨークのインテリアデザイン専門の大学に留学を果たしました。

既に建築を学んでいたことと日本人ならではのデザインの繊細さが評価され、入学半年ほどでニューヨーク・マンハッタンにデザイン事務所を持つ教員から仕事のアシスタントにならないかと誘われました。「主にブロードウェーの劇場の歴史的建造物を改修・増築する仕事でした。1920年代のインテリアや装飾を、資料を手掛かりに忠実に復元しました」。その5年半は本格的なデザインを学ぶ貴重な経験になりました。その後、新たな仕事を探していた2001年、9・11アメリカ同時多発テロが起きたことも影響し帰国しました。

ところが6年ぶりの大阪は、ニューヨークの経験や英語を生かす機会も少なく「逆カルチャーショック状態」でした。そこで次のステップを考えた時、デザインの広い分野にかかわりたいという希望を満たすのはホテルだと気付きました。「インテリア、レストラン、住宅、オフィス、すべての種類のデザインがホテルには必要です」。ちょうど香港を拠点とする外資系ホテルグループが東京でホテルを立ち上げるプロジェクトのチームメンバーを募っていて採用されました。プロジェクトは、コンサルタント選びから入札・契約、設計図面の管理、香港の本社との連絡調整や通訳など多岐にわたり、特に英語の建築用語にも精通した田中さんにうってつけの仕事でした。5年間の仕事で生まれた「ザ・ペニンシュラ東京」(東京都千代田区)は今や東京を代表する5つ星ホテルです。「毎日がドラマで、私のその後のホテル人生を切り開いてくれた貴重な仕事でした」と話します。

IHG・ANA・ホテルズグループジャパンの東京オフィスで   IHG・ANA・ホテルズグループジャパンの東京オフィスで

その後「シャングリラ ホテル 東京」の立ち上げプロジェクトも手掛けた後、IHG・ANA・ホテルズグループジャパンに入社。世界で5000以上のホテルを運営するグループの日本拠点で、田中さんは新規のホテル開発を任されています。海外からの旅行客が急増し2020年の東京五輪も控え、ホテルの開業ブーム。「毎日2、3件の『開業したい』という問い合わせがあります」というほどの忙しさです。

そんな田中さんが最近勧めるのは「ライフスタイル・ホテル」。宿泊客の多様な好みや個性に対応できるホテルです。画一的な部屋ではなく、さまざまな体験ができるホテルが増えています。「とても面白い業界です。私は最初はインテリアの興味から入りましたが、今は“仕込み”の仕事にやりがいを感じています。理想のホテルを目指して一生ホテルにかかわる仕事をしていきたいです」と話します。

その旺盛な好奇心と行動力で国際的なキャリアを積んできた田中さん。後輩たちには「日本の常識は決して世界の基準ではありません。できるだけ学生の間に海外への視野を広げてください」とアドバイスしてくれました。

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