お客様の潜在的ニーズを探る開発型企業として歩む

中央自動車工業 代表取締役社長   坂田 信一郎   さん

坂田 信一郎 さん:中央自動車工業 代表取締役社長

PROFILE
87年3月摂南大国際言語文化学部中国語中国文化学科卒。同年4月中央自動車工業に入社。05年取締役、07年常務取締役を経て12年代表取締役社長就任。13年7月に発足した摂南大卒業生の異業種交流会「淀都会」の会長も務める。大阪府出身。

自動車部品・用品を中心に、ニッチなニーズに応える開発型企業として歩みを続ける中央自動車工業。坂田信一郎さんが2012年に代表取締役社長に就任してから2年。誠心誠意を込めた営業という初心を愚直なまでに貫き、お客様の満足を追求しています。

「仕事はお客様に感謝する気持ちが大切。相手の役に立ちたいという気持ちがあれば、やりがいも感じられるようになります」と、中央自動車工業代表取締役社長の坂田信一郎さん。摂南大卒業後、車好きだったことから自動車部品を扱っていた同社へ。広島営業所に勤務した当初は「部品の出荷と配送に明け暮れて大変な毎日でした」。2年目からは山陰地方の営業を担当。朝5時ごろに家を出て広島に帰るのは午後9時過ぎという忙しさに、いつも仕事を辞めることを考えていたと言います。しかしそれでも「石の上にも3年」と持ち前の根気強さを発揮し、じっくりお客様の話を聞く姿勢を貫いて信頼関係を構築。人口の少ない地方で市場を開拓した経験から得たものは大きく、「魚が少ないところで釣り上げるには、きちんと汗をかかなくてはいけない」ことを実感しました。

本社に戻った98年ごろに転機が訪れました。自動車産業界の構造変化に伴って、商社として事業を展開していた同社も国内においてはオリジナル商品を開発する方向へとシフトしていったのです。時を同じくして、新商品の車用ボディコーティング剤の開発と販売を企画する部署に営業兼務で指名された坂田さん。時代の変化や顧客ニーズなどの商品に関するあらゆる情報を収集して開発に尽力したほか、販売促進のための営業マニュアルなども作成。試行錯誤の日々でしたが周囲の協力と理解ある上司に恵まれ、納得できるだけの成果を達成したそうです。「たとえミスがあっても部下がやり抜くまで見守る懐の深さを備えた上司でした。その背中を見ながら働き、私も見習わなくてはと思うようになりましたね」

コーティング剤は現在も同社国内の主力商品。産学協同で開発した無機防汚コーティング剤は特に太陽光パネルへの使用に適し、塗るだけで発電効率が約3%上がるという優れものです。また、オリジナルのアルコール検知器は2010年から警察庁の飲酒検問用に採用されています。「現場の潜在ニーズを掘り起こし、よそにないサービスを提供していくことが開発型企業の役目。真剣にお客様と向き合い、新しい需要を創造していくと、他社に負けない企業になります」と胸を張ります。

坂田さんのもう1つの顔が、摂南大卒業生が中心となって開催する異業種交流会「淀都会」の会長です。13年7月に発足し、第1回は36人が参加。「できるだけたくさんの方にお越しいただきたいので、年会費も無料です。校友会の総会でたくさんの方に声を掛けていただき、反響の大きさに驚いています」と顔をほころばせます。将来的には企業が自社商品をPRできるような時間を設け、ビジネスマッチングの場にすることを目指しているそうです。

在学中の思い出を問われると、「厳しくも温かい恩師に出会えたこと」。中国と日本の同形異義語の解釈についての卒業論文作成にあたり、「勉強というのは自分で考えてやるものだから、自分の言葉で論文を書きなさいと指導されたことが忘れられません。お陰で上司や先輩から教わったことを自分なりにかみ砕いて、肉付けすることが習慣になりました」。60カ国と取引をする企業の長として、こう付け加えます。「海外では日本の歴史や文化について聞かれることが多く、無知なビジネスマンは商談でも相手にされないので、私は息子の歴史の教科書を読むなどして勉強し直しました。後輩の皆さんも一生学ぶ気持ちを持ち続けてください。人間が成長するには、社会に出てからいかに勉強するかが非常に大切だと思います」

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