患者とのコミュニケーションにも心を砕く放射線治療

広島平和クリニック高精度がん放射線治療センター 診療放射線技師   藤本 幸恵   さん

藤本 幸恵 さん:広島平和クリニック高精度がん放射線治療センター 診療放射線技師

PROFILE
2003年広島国際大学診療放射線学科卒。呉市内の脳神経外科病院、広島大学病院を経て2008年から広島平和クリニックへ。趣味は旅行、スポーツ観戦。熱烈な広島カープファン。山口県出身。

がん治療で放射線治療の役割が年々大きくなり、今や外科手術、抗がん剤治療と並んで根治治療の有力な手段となっています。広島国際大2期生の藤本幸恵さんは診療放射線技師としてがん専門の広島平和クリニックで治療の最前線に立つとともに、積極的に学会発表もこなします。まだまだ女性の技師が少ない治療現場で女性ならではの視線で患者と接する藤本さんは、同僚や医師たちからも頼られる存在です。

小さいころは看護師にあこがれたという藤本さんは、医療系の大学に進んだ姉の助言から診療放射線技師に興味を持つようになり、広島国際大の診療放射線学科に進みました。「高校では文系だったので、物理や化学を一から学ぶという点で本当に大変でした。大学が開学2年目ということもあり、先生方もご苦労が多い中で鍛えられました」と実習やレポートに追われた大学の4年間を振り返ります。

大学卒業後、当初は個人病院で技師1人という環境の中、CTやMRIの業務を任されていましたが、より多くの経験をして技術を磨きたいという思いが強くなり広島大学病院に移りました。診療放射線技師の仕事には大きく診断と治療の2つの業務があります。「人と話をすることが好きでしたから、診断と比較し患者様に寄り添う時間がより長く、更に直接治療にかかわるやりがいと責任ある治療業務に魅力を感じていました。大学病院では希望した治療の業務に携わることができました」。大学病院で患者とコミュニケーションを大事にしながら治療に当たる藤本さんの仕事ぶりに注目していたのが広島平和クリニックの廣川裕院長でした。検診事業専門だった同クリニックに最先端の装置を備えた放射線治療センターを立ち上げるために優秀なスタッフを探しており、藤本さんに声を掛けたのです。「大学病院に移ってまだ2年だったこともあり迷いましたが、治療の立ち上げから携われる貴重なチャンスだと思いました」。廣川院長の熱心な“ラブコール”にも心動かされました。

2009年に開設された同クリニックの高精度がん放射線治療センターは、先進的な放射線治療に特化した最新の設備を備えた専門施設です。そんな恵まれた職場で希望の治療専属となり、藤本さんは診療放射線技師としてのやりがいを感じています。センターには技師が5人いて、1日20人から25人の患者の治療に当たります。藤本さんは2013年には放射線治療専門放射線技師の資格も取得。今やセンターでも中心メンバーとして後輩たちを指導する責任ある立場でもあります。「女性の患者様も多い中、まだまだ技師の多くが男性のため、診断や治療で男性技師に抵抗を感じてもなかなか言えない女性も少なくありません。『女性の技師さんで良かった』と言われることも多く、そんな時は少しでも力になれたと実感します」。どうすれば患者により満足してもらえるか、数少ない治療専門の女性技師の立場から考える日々が続きます。

また「やるからにはとことんやる」という性格から研究への意欲も旺盛で、さまざまな学会に積極的に参加し、年に1回は研究発表をするように心掛けています。「2本目の論文を出すことを目標としています。その勉強や発表の準備で休みの土日は結構つぶれます」。新しい治療機器が次から次へと開発される時代に、技師にとって勉強や研究は不可欠です。約3年前からは広島国際大診療放射線学科の林慎一郎准教授と放射線の照射精度を測定・検証するための「ゲル線量計」の共同研究も続けています。「母校の先生と一緒に研究でき、新しいものが開発できれば光栄です。さまざまな助言や母校の今をお聞きできることも楽しみです」と話します。

診療放射線学科の後輩たちには「放射線技師の仕事は多岐にわたりますが、自分の力を最大限発揮できることを見つけて努力すれば大きな武器になります。大学の4年間は私の宝です。その間に学んだことに無駄なことはなかったと今は思えます」とアドバイスを送ってくれました。

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