北村莉咲さん、中辻まなみさん

常翔学園高校3年 放送部

玉巻 映美さん、古川圭子さん

毎日放送(MBS)アナウンサー

多くの人に見てもらえるアナウンサー
喜びは大きいが、批判を受ける覚悟も

FLOW No.85

常翔学園の設置学校に在籍する学生、生徒、教職員が各界の “一流人” と語り合う「クロストーク」。第3回は常翔学園高3年で放送部部長の中辻まなみさんと部員の北村莉咲さんの2人が、大阪の毎日放送(MBS)のアナウンサー、古川圭子さんと玉巻映美さんにアナウンスについての疑問やその面白さなどを聞きました。同高放送部は先月、NHK杯全国高校放送コンテスト(創作テレビドラマ部門)に大阪府代表として初出場したばかりです。毎日放送本社を訪れた2人は、日ごろのドラマ制作やアナウンス活動で気になっていたことについて、プロならではのアドバイスをもらいました。

北村:はじめまして。今日はよろしくお願いします。私たちは平日の昼休みに約15分間の「常翔アフタヌーン スマイルステーション」というタイトルの校内放送をしています。音楽を流す以外に何人かでトークをするのですが、笑い声が特に大きくなってしまうのが気になります。どうしたらいいですか?

古川:私は「笑い声がうるさい」と苦情のメールをいただくことがあります。だから素で笑う時よりは控えめに笑ったり、瞬間的にマイクから少し離れるようなこともします。でも笑わないのはつまらないし、効果音的な役割もあります。

玉巻:笑うことはそんなに悪いことではないですよね。でもそうした笑い声に対する自覚があること自体は素晴らしいですね。

中辻:私たちは合唱祭やオープンスクール、体育祭など学校行事の司会進行(MC)も担当しますが、シナリオ通りにいかないことも多く、アドリブでつなげることもあります。そんな時の間の持たせ方を教えてください。

玉巻:イベントならばあらかじめお知らせしたいことの載ったチラシを何枚か持っておいて、困ったらこれを言おうと準備します。

古川:前の出し物を振り返って、「どうでした?」などと客席とコミュニケーションを取りながら間を持たせるという方法もいいですよ。

関西弁から標準語への切り替えスイッチを

中辻:ドラマを撮影している時などに関西弁がどうしてもポロっと出てしまい、撮り直しすることがあります。大阪ご出身のお二人ですが、関西弁と標準語で苦労することはありますか?

古川:関西弁から標準語への切り替えは気合ですね。ニュースなどの原稿を読む時は、自分の中でパッと標準語のスイッチを入れます。私は親が関西出身ではなかったので、子供のころは母親とは標準語、友達とは関西弁という使い分けをしてきたからスイッチのオン・オフには慣れているのかもしれません。自分でコントロールできることが大事で、今日は標準語だけで話そうというような訓練を放送部のなかでやってみたらどうですか。

玉巻:関西弁と標準語を上手に使い分けているアナウンサーは多いと感じます。私も相手が緊張しているなと思った時は、あえて関西弁で話し掛けたりします。

癖なく素直な話し方 マイクに頼らない意識

北村:私たちはドラマ制作の活動が多く、アナウンスの訓練は不十分だなと思っています。どうやったらアナウンサーの皆さんのような話し方ができるようになりますか?

古川:私はアナウンスのコンクールの審査員をやることもありますが、アナウンサーぽくやろうとしてわざとらしい話し方になる人がいます。実はアナウンサーは癖なく原稿を読んでいます。素直な話し方が一番大事ですね。

玉巻:入社して研修の時はテレビニュースをよく聴くことからやりました。好きな話し方のアナウンサーを真似して練習しました。

古川:現代はインターネットでもニュースの動画と字幕が出るので、昔のように録画してテープ起こしするような手間もかけずに簡単に練習できます。

北村:私たちはラジオドラマを年間5~6本、テレビドラマを2本制作していて、その中で女子の声がマイクに入りやすいのに、男子の声は入りにくく苦労します。プロは声の調子をどうやって調整しているのですか?

玉巻:私は「マイクに頼らないで」と教えられました。マイクに届く声量、ではなくスタジオの一番後ろにいる人にも届く声量を意識しています。声が出にくいなと思った日は、その場でも体をほぐすようにしています。

古川:下読みの時点で本番の声で読むようにします。それだけでなくハミングでのどを温める方法も習いました。本番中に自分の出番まで声が出せない時もありますが、周囲に気付かれないようにハミングで準備することもあります。

家族の意外な感想が参考に

古川:お二人は将来どんな道に進みたいのですか?

中辻:声を出す仕事にも興味はありますが、番組やドラマを制作するようなことをしたいです。いずれにしてもメディアの分野に進みたいです。

北村:私は話す方ではなく、ドラマの編集などに興味があります。編集では放送部員のなかで意見がぶつかることもよくあります。お二人は番組編集の人と意見交換するようなことはありますか?

玉巻:直接のやりとりはあまりないですが、「『ここでしゃべったら編集しにくい』と思われるかもしれない」などと、できるだけ編集を意識しながらロケをします。実際に編集された放送を見ると、自分では良いと思ったところが使われていないこともあるので、放送を見て勉強します。

古川:私は毎日放送に入社する前の2年ほどフリーで仕事をしていて、自分で企画して原稿も書き、カメラマンを連れて行ってディレクターのような指示もし、ナレーションもしていました。その経験のお陰でディレクターの思いを何となく想像できるので、実際のインタビューなどでその経験がプラスになっています。

玉巻:私は「こんな話が欲しかった」と後から言われないように現場ではできるだけ取材漏れや撮影漏れのないように意識します。

古川:番組への客観的な意見としては家族の素直な感想が結構参考になります。母は素人ですが、素人だからこそ意外なことを言われ、気付かされることがあります。

刺激に満ち、同じ1日がない仕事

中辻:アナウンサーをやっていて良かったなと思うことと難しいなと思うことは何ですか?

古川:本当に多くの人に自分のやっていることを見てもらえるのが大きな喜びであると同時に、恐ろしいところです。読み間違いがあっという間にインターネットで広まることもある時代です。恥ずかしさも何百倍になることや批判を受ける覚悟は必要です。でも自分の子供たちに自分の姿を見せられるというのはうれしいですね。

玉巻:毎日が刺激に満ちて楽しいです。同じ1日がありません。この仕事をしていなかったら出会えなかった人に出会えたり、行けなかった所に行けます。

中辻・北村:本当にいろいろと教えていただきありがとうございました。

<インタビューを終えて>
中辻さん:私たちの足りない点をどうすれば乗り越えられるか、「プロの目線」を感じられてとても有意義な時間になりました。
北村さん:家族などの目線が必要というのは私たちにない発想でした。放送部がすぐ実践できることをたくさん教わったので早速部員みんなに伝えます。

Profile
古川圭子(ふるかわ・けいこ):1993年毎日放送入社。担当番組は「医のココロ」(土)、「ちちんぷい ぷい」(木)、「子守康範朝からてんコモリ!」(月・火)など。趣味は宝塚歌劇鑑賞。元今宮戎ミス福娘。JALのグランドスタッフとして伊丹空港で勤務の経験も。神戸女学院大学卒。大阪府出身。
玉巻映美(たままき・えいみ):2015年毎日放送入社。担当番組は「プレバト!」(木)、「NEWS ミ ント!」(木・金)。転勤族の家庭で、大阪、 奈良、東京、香港、ニューヨーク、ボストンに住んだ経験あり。趣味はミュージカル鑑賞、ゴルフ、サックス。早稲田大学卒。大阪府出身。

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